※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2015/3/7に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い加筆、修正し転載したものです。
難易度:やや難
昨年比:やや難化
1:回転体の求積、数Ⅲの教科書の例題。目標解答時間15分。
テクニックA
記述量AB
発想力A
総合難易度A
見ての通り、何の変哲もない回転体です。交点も文字のまま先に進むパターンかと思いきや、普通に求まってしまいます。積分計算についてですが、三角函数の偶数乗は半角です。因みに奇数乗は1乗分離して置換積分の形(f(g)g')です。
計算ミスはともかく、まさか天下の京大受験生で本問の方針が立たなかった人は居ないでしょう。
2:幾何の解法選択(一般性を失わない、内接円の中心を原点に座標設定、未知角設定)、図形量(面積)のMaxmin(数式化→相加相乗平均)。目標解答時間20分。
テクニックB
記述量AB
発想力B
総合難易度B
それなりにちゃんと勉強した人なら経験則から正方形の時と判るでしょうが、それを論証しろっつってるだけです。円の中心を原点に座標設定し、直角な頂点1つを(1,1)に固定し(そうしても一般性を失いません)、適当な角度を未知数とすれば簡単に出来ます。
まあでもこうして自力で色々と設定しないといけないのは京大らしいっちゃあ京大らしいですし、受験生も苦手そうですね。
3:(1)一意性込の特称命題(接線→接点の言換、解↔交点の言換、文字定数分離、中間値);(2)明示されていない値の極限(数式化→適切な式変形&置き換え(階差をどんどん消す)&粗く評価)。目標解答時間30分。
テクニックBC
記述量AB
発想力BC
総合難易度BC
(1)はものとしては「一意性込の特称命題」即ち「ただ1つ存在する」事の証明で、本来なら技術的にかなり高度な問題です。でも本問の「接線の数を接点の数にすり替え、更に文字定数分離を行い…」の流れは、これ自体が入試数学業界では完全にパターン化されてしまっているので、難易度上昇に寄与する事は無いでしょう。当然、京大受験生なら完答必須です。
(2)が中々に高度です。取り敢えずの定義から、関係式
が得られ、これより
…☆
となります。従ってのでの挙動を把握出来れば解けると判ります。つまり「明示されていない値()の極限」の問題です。方針としては:
1、数式化;
2、図形量の比較等と見る、
の2通りですが、本問は☆と云う関係式が既に得られているので、これを利用すると良いでしょう。つまり方針としては1の方になります。さて、☆は見ての通り階差の式ですが、階差に対する式変形の定石として「辺々足しまくる」が在ります。つまり
…
を全部辺々足しまくると間の項が消えまくって
…★
となります。よりこいつを消して(不等式の取り扱いの1つ「粗く評価」)
★
となり、晴れて極限を把握出来ました。
さて、(2)は恐らく「ニュートン法」と呼ばれる操作を思い出しながら京大の先生が作成されたのだと思います。まあでも受験生は別にこんなマニアックな知識を知っている必要は在りません。階差をどんどん足す操作は高校数学でもちょこちょこ見掛けますし、数学科大学1年の微積では頻出なので、覚えておいた方が良いと思います。(1)では大学入試のお約束が出来ているかを問い、(2)では打って変わって理詰めに考える力を問う、極めて良い問題ですねえ。
4:図形量(cos)のMaxmin(内積と余弦定理により数式化、適切な式変形&置き換え(2乗のまま処理)、微分)、幾何の解法選択(空間図形、ベクトル)、目標解答時間20分。
テクニックAB
記述量B
発想力A
総合難易度AB
「内積勉強しましたか?」ってだけの問題。これもまさか京大受験生で出来ないなんて人は居ないでしょう。一言、余弦定理は2乗のまま進んだ方がすっきりする事が多いです。最後におまけ程度の数Ⅲの微分が在ります。
5:多項式の決定及び離散全称条件の難問、整式の除法、未知数設定(後に消去)、適切な式変形&置き換え(数列での階差の利用)、多変数の取り扱い(一方固定)、離散全称条件(∞の代入)、分数の分母分子の大小感覚、次数による大小感覚、1との大小感覚。目標解答時間90分。
テクニックD
記述量B
発想力C
総合難易度D
これは難しい。2015年度の全数学入試問題の中の最難問候補筆頭です。因みに目標解答時間の90分は俺が解くのに掛かった時間です(汗
さて、肝心の問題の方ですが、整式が割り切れる事の証明ですから、割り算の形を作って、(余り)=0を示す以外に方針は浮かびません。でもこれ以降、何も出来なかったと云う受験生も多いでしょう。ポイントは「すべての正の整数に対して…」の部分で、題名の1つに在る「離散全称条件」とは、こいつを格好付けて言ってるだけです。任意の正整数と言われたら、出来る事は大体以下の3つです:
①1, 2, 3辺りを突っ込んで様子を伺う;
②任意の整数を突っ込んでいじってみる;
③“十分大きな”自然数を突っ込んでみる(極限のイメージ)。
①,②はまぁ常識として、大切なのは③です。例えば京大受験生なら以下の様な問題を1度は見た事が有る筈です:
の時、を満たす自然数の組は(0,0,0)のみと示せ。
確かこれは千葉大かどっかの問題で、一見余白が狭過ぎて解答を書く事が出来なそうですが、実際にはが自然数解であるとするとも全部自然数解となるけど、がでかくなるとこれは矛盾、って感じで解け、本問の最大のポイントも正にこれと同じ感じです(ちなみに自然数に対してどんどん出てくる条件ををでかくしたら矛盾、みたいな証明法は「フェルマーの無限降下法」とか呼ばれています)。
先ずの商をとでも置き、階差に注目しながら未知数を消去します(どの未知数を消すかの判断基準については「入試数学の掌握」に詳しく書かれているので、それを参照)。その際に新たに現れる自然数の未知数に対しては、片方固定しながらもう一方を無限大に飛ばす等、かなり大学数学チックな式変形を行う必要が在るので、受験生にはかなり厳しかったと思います。更にこの時、「整数列の極限は再び整数である」と云う、直観的には明らかだけど証明には大学数学が必要な事項も必要です。まあ受験生は流石にこれは認めて良いと思いますけど。
って訳で、解答を載せておきます。
6:京大名物数の変域と確率漸化式の融合大型問題、確率(n、漸化式(最後の2手で場合分け)、変域注意、偶奇性)。目標解答時間35分。
テクニックCD
記述量B
発想力CD
総合難易度CD
2012年の大取を彷彿とさせる、数の変域と確率漸化式の融合問題です。問題文から漸化式立式の方針を取る事自体は容易かったでしょうが、肝心の漸化式が中々立ちません。インポです。先ずは漸化式立式の際の注意点として:
①最初の一手(数手)で場合分け、最後の一手(数手)で場合分け;
②必要なら全事象和1を用いて補助数列を置く;
③対称性や偶奇に最大限の注意を払う、
を挙げておきます。それを踏まえて本問でポイントになるのは、実際に立式をしようと試みて初めて判る:
・そもそもの取り得る範囲を把握しないと話にならない(ここが2012の大取との最大の類似点);
・取り得る値の分かれ目が問題文の2/3だけでなく1/3のところにも在る、
の2点です。前者は気付いてしまえば簡単に処理出来ますが、後者を処理する為には先の漸化式立式の際の注意点の内、①の特に「数手」の部分に注目します。と言うのも本問では分かれ目が2/3だけでなく1/3のところにも生じた影響で、一手戻っただけでは立式が出来ないので、二手戻る必要が在るのです。そうして立った3項間漸化式ですが、本問では間の項が消えて1項飛びの1項間漸化式になってしまうので、偶奇で場合分けして処理する必要が生じます(しかし答は綺麗に一纏まりになる)。或いは②を利用し1/3との大小で補助数列を置いても良いでしょう。
流石に2012の6の時の様なインパクトは無いですが、2012の6との違いとして:
・2012の6には無かった二手戻る(或いは補助数列を置く)ステップが在る;
・2012の6には、ルートを含む分数を扱う際に一寸複雑な式変形が必要だったけど、本問ではその様な式処理の煩わしさは消えている、
等の違いが在り、単なる類題とは言い切れない十分な差別化が成されています。
良い問題なので、前者の方針での解答を載せておきます。
難問5、大型問題6の影響で難化したと言って良いと思います。ボーダーは恐らく1,3(1),4に加え2か3(2)のどちらかを取れたか辺りで、従って2と3(2)が合否を分けた問題であったと思われます。数学好きの高校生には是非5,6にチャレンジして欲しいですね。
※5の解答中の注)の証明(受験生は見る必要は無いです)。