予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2018阪大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2018/2/28に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:やや難

昨年比:やや難化

 

1、不等式の証明(微分)、Maxmin(微分)、極限(挟撃、公式の形を作る)、誘導「結果の利用」目標解答時間20分。

テクニックB

記述量B

発想力AB

総合難易度B

 正しく理系の標準問題です。

 (1)は良いでしょう。微分です。

 (2)も先ず微分なのは良いでしょう。導函数はそこそこごつい形になりますが、(1)の結果の利用を考えれば、符号の判断が出来ます。問題は→+0の極限ですが、勿論(1)を利用して挟撃ですね。上手く作られていて、右の不等式は微分時と極限計算の挟撃で2回利用されます。

 短い中で数Ⅲのポイント多数と誘導の利用が学べる、極めて良い問題です。来年以降、予備校のテキストや参考書に引っ張りだことなるでしょう。易問ではありませんが、阪大理系生ならこれは完答しなければなりません。(2)だけ解答を。

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2、多項式(因数定理、解と係数の関係)、誘導「結果の利用」、明示されていない値の不等式の証明(数式化→特別な不等式「相加相乗平均」の利用)、整数、実解条件、目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力BC

総合難易度BC

 盛り沢山な問題です。テーマは所謂、相反多項式とか呼ばれているやつですが、そんな事を知らなくてもちゃんと解ける様にしてくれています。

 (1)が、その相反多項式の基本性質になります。勿論、因数定理ですね。

 (2)は明示されていない値aの不等式の証明です。大きく、

(イ)数式化して通常の不等式の証明へ。

(ロ)図形量等の比較と見る。

ですが、勿論(1)の結果を用い、また解と係数を利用し(イ)ですね。相加乗には直ぐ気付くと思います。

 (3)は打って変わって整数の求値です。ディオファントス方程式ではないですが、整数を求める問題である以上、大きく、

(イ)バシッと求める(詳しくはディオファントス方程式を扱っている記事で)。

(ロ)範囲を絞ってしらみ潰し。

の孰れかですが、本問は後者です。(2)同様、解と係数からbの値を明示します。s+1/s等の置換は若干、発想力が必要でしょうか。また、置換する場合は必ず範囲のチェックです。これさえ出来れば、出てきた形(解答中のlm,l+m)から実解条件は直ぐに思い出せないといけません。これで範囲を絞り、後はしらみ潰しですね。十分性のチェックをお忘れなく。

 行き当たりばったりになる事無く多項式の論証を主軸に、でも盛り沢山の内容を聞く、極めて良い問題です。でも完答するのは大変ですねえ。

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3、パラメータ曲線、Maxmin(微分)、明示されていない不等式の証明(解↔交点の言換→図形量の比較と見る→文字消去&三角函数&置換&微分)、誘導「結果の利用」、求積(置換積分)、目標解答時間40分。

テクニックC

記述量CD

発想力C

総合難易度C

 パラメータ曲線と三角函数の処理を中心とした、これまた重厚な総合問題です。

 (1)は良いでしょう。どうせ後でグラフを描くのは分かっているので、増減表は5段重ねのものを丁寧に書いておきましょう。

 (2)は再び明示されていない値(t1,t2の事)が絡んだ不等式です。大問2の解説でも書いた、「図形量の比較と見る」が頭に有れば、条件式の解であるt1,t2をグラフの交点と見る事が必然性を帯びます。その後は条件式を利用して文字消去を行い、式処理です。余談ですが、左辺をg(t1)-g(t2)ではなく2乗してあるのは、その後の処理のし易さを考慮した阪大の先生の思い遣りです。自分は初めそれを無視して、g+gで割ってしまいましたが…

 (3)はパラメータ求積ですが、先ずグラフを描く必要がありますが、ここで(2)の結果が重要な意味を持ちます。(2)は、グラフが自己交叉したりしない事を言っているのですね。後は求積だけですが、積分計算が重いです…

 これまたパラメータ求積をメインテーマに、ぶれる事無く盛り沢山の超良問です。解答は付けるべきでしょう。

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※3ページ目、「とかならないって言ってる。」の図のt1,t2が逆です。申し訳有りません。

 

4、立体図形(ベクトル&適宜初等幾何的考察)、図形量のMaxmin((2)数式化→2変数(予選決勝)、(3)数式化→2次函数)、目標解答時間35分。

テクニックB

記述量CD

発想力BC

総合難易度BC

 もの自体は割と平凡な空間ベクトルですが、正八面体と云うワードにびびってしまった人も多いかも知れません。

 (1)は良いでしょう。

 (2)は図形量のMaxminです。大きな方針は大問2,3で書いた明示されていない値の不等式とほぼ同じですが、まあ本問は数式化でしょう。2変数ですが、2次多項式ですし1文字固定(所謂、予選決勝法)は直ぐ浮かぶと思います。一応、各々の平面に含まれる2直線BC//DE,AB//DF(菱形ABDFに注目)から平面ABC//平面DEFが言え、これより最小値はそのまま平面同士の距離になると分かり算数でも出来そうですが、こうしてしまうと(3)で使うs,tの関係式が出ない気がするので微妙です。

 (3)だけ、少し空間把握能力が有る人の方が有利な気がします。断面は6角形ですが、そのままでは扱えないので、台形2つに分けます。「困難の分割」ですね。そうすると各々の高さが必要になりますが、2つの台形の底面が共にxy平面上なのを考え、一工夫してやります。詳しくは略解をご覧下さい。この辺の中学図形的な素朴な見方も、図形問題では常に意識しておいて下さい。

 大問2,3に比べて複合的な感じではなく、(3)の見方辺りを誘導すればセンターでも使えそうな題材ですが、これも記述量が凄くて完答は大変だと思います。

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5、確率(推移確率→(1)漸化式、(2)組合せ)、目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力C

総合難易度BC

 推移を丁寧に考察する事が重要な、確率の総合問題です。

 (1)は漸化式なのは何と無く分かるでしょう。直接の繋がりは無いのですが、ここでちゃんと推移について考察出来ていると(2)が楽な気がします。

 (2)は(1)を利用したり、真似て漸化式にしようとしても全く出来ないので、独立小問だと判断します。「連勝しない」を「Aの勝ちの間に入れる」と捉えられれば、組合せ的な考察に繋がりますが、若干発想寄りです。推移を確率を添えて丁寧に考察していれば、最後Bが勝った場合だけ分けないといけないのに気付く筈です。

 「推移確率では推移の考察を特に慎重に行う事。」、漸化式、組合せ的な考察、等が学べる良質な確率の問題です。これも解答を付けるべきでしょう。

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 さて、今年は全て標準~やや難の良問でした。なので解いていて楽しくなってしまい、(一部省略有ですが)全問、掲載用の綺麗な答案を書いてしまいました。

 どの問題も難しいですが、ちゃんと勉強していれば解けるものが殆どですので、真面目に勉強した人と、「平均点取れれば良いやw」なんて態度だった人との間で大きく差が付いたと思われます。

 絶対取るべきなのは1、2(1)(2)、3(1)、4(1)(2)でしょうか。正確な配点は分からないですが、これだけだと4割ちょいの、ボーダーぎりぎり下な気がします。部分点で半分以上は欲しいですね。

 繰り返しになりますが、難しい、でもちゃんと勉強していれば解ける問題ばかりです。阪大に限らず、「数学が得意だ!」と自称するなら、これ位のセットを試験時間内に全て答を書ける様にするのが目標になってくると思います。