予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2018北大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2018/3/2に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:難

昨年比:大幅難化

 

1、内積計算、図形量のMaxmin、目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 ベクトル学習直後の定期試験問題です。「今年もこんなのばっかかよ。」と思いきや…

 

2、複素平面の軌跡(順像法)、文字定数は分離せよ、Maxmin(微分)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 (1)の軌跡は順像法的なやつです。実数になるってんだからrと置き、zをそれで表しrを動かします。実部と虚部を分けるやり方は、虚数の場合しか使えないので、ここで場合分けですね。今年の東北大の5の類題です。

 (2)はいかつい形をしていますが、取り敢えず文字定数分離です。実定数を分離したので、「右辺も実数になる事が必要。」みたいな議論をするのかと思ったのですが、(1)の結果を放り込んであげると、右辺も実数になってしまうので、結局、右辺の実函数としての範囲が求めるものになります。去年の3とかもそうですが、北大の問題って弄っている途中経過でシンプルになり過ぎて「ん?これで良いのか?」ってなる事が時々ある気がします。これもまあ順像法的っちゃあそうですね。

 テーマがテーマですので、解ければ有利になると思います。解答を載せておきますね。

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※まじすいません。(2)の解答中、θが整数πの場合の記述が抜けています。これだとk=0の場合が抜けていますね。いや下書きにはちゃんと書いてあったんです信じて下さい。

 

3、確率(全てのものを区別せよ、該当パターン全調査、余事象、条件付き)、誘導「結果の利用」、目標解答時間20分。

テクニックB

記述量AB

発想力B

総合難易度B

 “怖い意味での北大らしさ”が凝縮された、でもとても良い確率の標準問題です。

 (1)は(笑)です(笑

 (2)ですが、先ず確率での絶対原則は、数える際、「全てのものを区別せよ。」です。それに沿って(1)の結果から、和が9の倍数になるパターンを数え上げます。この様に該当するパターンのみを数え上げるタイプを自分は「該当パターン全調査」と勝手に呼んでいます。本問くらいなら未だましですが、数え漏れの危険性が高く、慎重に処理する必要があります。

 (3)は条件付きですが、丁寧に(場合の数)/(場合の数)を計算するだけです。奇数は1だけなので余事象を使うと良いでしょう。

 「全てのものを区別せよ。」や条件付き確率と云った北大らしいテーマで、更に余事象なんかも使える良い問題です。2016の3なんかが類題であると言って良いと思います。これも(2)(3)は解ければ差を付けられるレベルの問題です。

 ところで、何か2だけ特別視しているかの様な思わせ振りな問題文は一体何だったのでしょうか(笑

 

4、領域図示(不等式)、Maxmin(逆像法的?)、論理の「かつ」と集合の共通部分、目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量B

発想力BC

総合難易度BC

 中々に高難度な問題です。

 (1)は良いでしょう。平凡な領域図示です。

 (2)が中々難しいです。問題文を論理で正確に言い換え、式にするのが先ず第一歩です。解答中の様な論理と集合の言葉は嫌いな人が多そうですが、寧ろ(自分の様に)数学が苦手な人程、この言葉遣いでかっちりと条件を数式化した方が、この分野の難しい問題はずっと見通しが良くなると思うので、こう云う問題を解ける様になりたかったら、是非練習する事をお勧めします。次に、論理を平面での領域の共通部分の有無に言い換え(ここが逆像法的?)、pの範囲を絞りますが、この時、pを含む直線についての定点通過考察も地味に躓き所だと思います。

 2問目に続きまた平面での存在範囲系の考察問題です。難しいテーマですし、(2)は医学科、数物トップ層向けでしょう。標準問題メインの北大の問題の中では、トップクラスの難しさだと思います。

 色々書きましたが、言葉で説明するのは難しいので、(2)だけ(最後若干略解出気味ですが)、解答を付けておきます。

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5、不等式の証明(凸性利用、微分、特別な不等式の利用)、誘導「結果の利用」、求積、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 理系らしい、そして北大らしい数Ⅲの微積の総合問題です。

 (1)は良いでしょう。お絵描きですが、厳密には凸性利用です。

 (2)の不等式の証明は、微分なのには迷わないでしょうが、その後の導函数の処理が問題です。

 0≦x≦π/

⇔0≦x^2≦(π/2)^2

⇔π^2/4≦π^2/2-x^2≦π^2/2

⇒1/√(π^2/2-x^2)≦2/π …☆

と、区間から導函数評価用の特別な不等式を先ず自分で作る必要があります。ここで漸く(1)の結果の不等式が利用出来る形になり、不等式評価2段階(自分で作った☆→(1)のやつ)を経て導函数の評価が完了し、示したい式も出ます。

 (3)は(2)からfとgの上下関係がはっきりしているので、普通に求積ですね。只、三角函数による置換積分が残っていますが。

 これも中々微妙な問題です。(1)と、後(3)も(2)を認めれば解けるので、一先ずこれが目標でしょうか。(2)の不等式の自作と、誘導の不等式の利用の2段構えは、処理量こそ押さえてくれていますが、やっている事は丸っきり東工大微積分みたいな内容なので、中々難しいと思います。理系なら、こう云う問題こそ完答したいのですが…

 

 

 あー今年は難しかったですね。自分が知っている限り(5,6年分位ですが)、過去最高難易度だったと思います。絶対取れるってのが1、3(1)、4(1)、5(1)(3)しか無いですが、これだと半分行かないでしょう。残りは上で「取れれば差を付けられる。」とか言ったやつばかりですが、ここから何とか、半分越える位迄は集めたいです。この難易度なら、5割でボーダー超えるんじゃないですか。

 例年、旧帝大では1番易しい北大ですが、5問セットの難易度が今年は難しい年の九大並です。しかも、北大は試験時間が九大より30分短いので、試験としての難易度は最早九大の比ではないです。

 試験内容の分析としては、綺麗過ぎて逆にびびらされたり(2番)、「全てのものを区別せよ。」をしっかり意識する必要があったり(3番)、例年、難し目の平面の存在系の問題が、しかも2問、しっかり出題され(2番、4番)、北大らしい微積分の総合問題がパワーアップして配置されている(5番)、と云う様に、“怖い意味での北大らしさ”がレベルマックスで襲いかかってきています。「標準問題をしっかり解ければ得点出来る。」と云う“優しい意味での北大らしさ”は今年は完全に無いですね。

 この3年、やや難→激易→難、と難易度がぶれぶれなので、一寸動向が読めないのですが、来年以降も今年の難易度でもやられてしまわない様に対策をする必要はあるでしょう。後、東北大もそうだったのですが、今年は平面の存在範囲系の問題が2題出ていますし、余裕が有ればこれの対策もしておくべきです。お勧めは、ぱら読みしただけなのですが、旺文社の「分野別標準問題精講 領域・軌跡」って本です。図形と方程式後半分野特有の、「一応答えは出たけど、如何も腑に落ちないなあ。」みたいな感じを、論理を使ってかっちり説明してくれている本って印象です。