予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2019東大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/2/26に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:やや難(東大だとしても)

昨年比:やや難化

 

1、積分計算(tan置換)、東大名物対脳筋用トラップ、目標解答時間10分。

テクニックA

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 まあtan置換なんですけど、見た目がごつくて試験場だと怖いでしょうし、何より何も考えずに初めからtan置換すると普通に計算出来るx^2がtan^2になってえらい目に遭います(遭いました)。でもこれは取らなきゃ駄目でしょう。

 この手のやつには毎年引っ掛かりますねえ…

 

2、図形量のMaxmin(数式化→微分)、パラメータの範囲注意、目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量BC

発想力AB

総合難易度AB

 まあ数Ⅲの定期試験問題ですが、ちょいちょい計算量が嫌です。文字を置いたら範囲には常に気を配りましょう。これも取らないと。

 

3、チンカスお絵描き大会、ベクトルとパラメータ、目標解答時間50分。

テクニックAB

記述量D

発想力BC

総合難易度C

 タイトルの通りまじ最悪です。こんなのちょろっとベクトルの処理がある以外は殆ど絵を丁寧に描くだけの問題です。しかも、大学以降の数学力と殆ど関係無い空間把握能力が高い人間が俄然有利です。まあそれを言ったら去年の6とかもそうですが、それにしても積分なり領域処理なりもうちょい数学らしい事も聞いて下さいよ。

 ったく、どんな受験生が欲しくてこんな問題を出すのでしょうか?美大化でも目指しているのでしょうか?

※「大学以降の数学力と殆ど関係無い」と言いましたが、これは流石に俺の主観な気がします。工学系で実際に物を扱う人とかなら必要なのかも知れないし、数学系でも低次元トポロジーとか結び目とかするなら多分必要な気がします。でもやっぱ、こう云う見た瞬間に解き方と、それを実行するのに時間が掛かる事が判ってしまう問題は、個人的に嫌いです。てかまともな東大受験生なら時間さえ有ればこれ解けない人いないだろうし、選抜試験としても如何なんすかねえ。

 まあでも解答書いちゃったんで載せてはおきます。

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4、実験→予想→証明、偶奇性、互いに素の証明(互除法)、誘導「方針の利用」「結果の利用」、平方数でない事の証明(剰余類&ディオファントス方程式に帰着)、目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量B

発想力BC

総合難易度BC

 これは整数について色々聞いている良い問題です。

 (1)は前半は京大型の「実験→予想→証明」の流れですが、後半の処理は一捻りされています。京大には見習って欲しいです、具体的には互いに素の証明で、思い付く限りは:

・共通因子を持つとして矛盾を導く;

・互除法を使って求める;

・直接求められちゃう、

辺りでしょうか。本問は互除法です。

 (2)は平方数でない事の証明ですが、先ずは(1)に倣い偶奇で場合分けをして考えます。背理法ですが、平方数であると仮定すると、(1)の考察から因子各々が平方数じゃなきゃいけないと判ります。平方数でない事を言うなら:

・剰余類;

・=p^2と置いてディオファントス方程式に帰着、

くらいしか思いつきませんが、本問は場合分けした事で両方とも使われます。mod nのnの候補は、問題文に現れている整数全て、それで駄目なら2,3,4,…と小さい方からしらみです。今回は問題文にいる5でmod 5でしたね。こっちの類題は14九大2とかでしょうか。一方の後者は、積=1の形になるのですが、これ俺は先にやった剰余類に引っ張られて見付けるのにかなり時間が掛かりました。類題である18九大4(2)と全く同じやらかしです。反省。

 簡単ではないですが(1)は取りたいですねえ。解答載せておきます。

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5、一意性込の連続特称命題(グラフで視覚化、範囲で場合分け、中間値)、明示されていない値の不等式の証明(図形量の比較と見る)、誘導「結果の利用」、極限(挟撃(不等式は図形量の比較と見て作成)、「今、自分が弄っている値は何か」、微分係数の定義)、目標解答時間40分。

テクニックCD

記述量C

発想力CD

総合難易度CD

 東大らしい、重厚な数Ⅲの微分の総合問題です。

 (1)は一意性込の解の特称命題です。色々とテクニックは在りますが、今回これが中間値なのは良いでしょう。問題は一意性の方です。解の範囲をグラフの形から絞って、その外側で解が無い事を別途、論証する必要があります。絵を描けば殆ど当たり前ではありますが、それでは許してはもらえないでしょう。範囲を分ける所は少し発想寄りかもです。

 (2)は明示されていない値(a_n)に関する不等式です。大きく:

・数式で表す;

・図形量の比較等と見て押し切る、

の2通りの処理がありますが、本問はまあ後者でしょう。解法選択、実際にそれを実行する事、両方とも難しくはないです。

 (3)がかなりの大物です。aの値はまあ片方は(2)を利用して挟撃だろうって事で、再び明示されていない不等式(の自作)の問題となりますが、これが中々立たない!自分は初め、ニュートン法(接線とx軸の交点に絡むやつ)的にするのかと思って立てようとしたのですが、如何工夫してもa_n-ゴミ<a_nみたいな、文字通りごみみたいな不等式しか立たない!これでかなり時間を潰して、頭を冷やして考え直して解答中の面積比較に辿り着きました。ここでも一応、(2)の結果を使っています。bは今自分が弄っている値(a_n)が何かを考えれば自然に出来る筈ですが、これも易しくはないでしょう。cは更に厳しく、ある程度自然に変形した後(√cos a_nを足し引きした後、分子の有理化)、最後は微分係数の定義に帰着です。

 (1)(2)は取りたいですが、これで半分は貰えるのでしょうか?

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6、複素式処理総合(共役解、共役虚数の処理、real/imaginaryパートの比較、順虚数等のパラメータ表示)、解と係数(4次)、誘導「方針の利用」、同値性への気配り、複素平面の軌跡(実平面に帰着)、目標解答時間60分。

テクニックCD

記述量D

発想力CD

総合難易度CD

 これまた東大らしい極めて重厚な複素数の総合問題です。

 (1)は条件3から情報をどこ迄読み取れるかが鍵で、もう兎に角複素数の基本的な取り扱いを全部頭の中から引っ張り出してくる必要があります。キーになりそうな解と係数を(1)では結果的に一切使わない事や、問題文の聞き方と合わせ、この時点で既に易問ではない。

 (2)で漸く解と係数の出番ですが、そのまま使おうとしたらアウトで、条件3から更に情報を引き出す必要があります。因みに解答中でδでなくγを消したのは、rとややこしくて個人的にγが嫌いだからです(笑。これもお世辞にも易しくはない。

 (3)が一番苦しく、先ずは(2)で生じた場合分けを引き続き利用します(方針の利用)。(2)の連立4本のままではとても扱えませんが、丁寧に同値性を確認すると条件式がかなり減らせる事が分かります。答案中の下2式が消えた理由は、a, bは実数でありさえすればα, β, γ, δに合わせて適当に選べば良い事に由ります。但し、単に減るだけでなくここで条件3からデリケートな要求が生じたりと、扱いには細心の注意が必要です(解答では「式を弄ると」と一言で済ませていますが、かなり色々とチェックしました)。複素平面の軌跡は複素特有の処理か実平面に帰着かで大きく方針が分かれますが、本問は後者でしょう(答は双曲線ですが、それでも本問で前者は厳しい気がする)。場合分けが結果的に統一されるのは、個人的に意外でした。思わせ振りな(2)の結果が誘導になっていないのも、輪を掛けて(3)を難しくしている気がします。

 もの自体は複素数の取り扱いについて沢山勉強出来るとても良い問題なので解答は付けますが、まあ試験場では全滅でも仕方が無いでしょう。

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 いや今年は本当に厳しかったです。去年もちょいちょいやばかったですが、まさかの難化路線踏襲と云う。俺とかもう悲しくなって途中で時間計るの止めましたし、最初にも書きましたが、最後迄解き終わった時には試験時間の倍は経過していました。時間内だと多分5完分も取れていなかったと思います。本当、これじゃ学歴コンプの解消なんて出来ませんわ。解き終ってみれば無茶振りな難問は無いと気付きますが、兎に角セット全体で見た時の処理量と難易度がえげつないです。

 取り敢えず1,2,3(1),5(1)(2)で半分弱は押さえないといけないでしょうか。何とかもう1問分取って6割いけば万々歳じゃないですか?まあでも、無茶振りが無い分、確りと勉強したトップ校の受験戦士ならきっと満点が取れるのでしょうねえ。

 てか今年も確率無いですね。微積線型無の統計必修が本当に嫌なのでしょう。