予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2020東大理系。

難し目の傾向が続きますねえ。

 

難易度:やや難(最早これを「標準」と呼ぶべきか?)

昨年比:同程度~微難化(雑魚がいなくなった)

 

1:二次不等式、集合の共通部分、対称性(崩す)。目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 (1)ですが、そりゃあ

(最高次係数が負の二次式)\gt 0

なる二次不等式の解は\alpha\lt x\lt \beta空集合になってしまうため、当たり前です。背理法ですね。

 (2)もそりゃあ

(最高次係数が正の二次式)\gt 0

なる二次不等式の解はx\lt\alpha, ~\beta\lt xか実数全体になるので、全部これだと共通部分がx\gt pの形になる筈ありません。これも背理法です。

 (3)は対称性からc=0として良く、後はa, bが0か否かで場合分けしながら連立不等式の処理です。

 いや、知識や議論は基礎でしかなく、こう云うのは普通に生きていれば出来る様になる筈なのですが、如何なんでしょうか?一寸正確な判断が出来ませんねえ。案外、東大受験生なら皆余裕なんでしょうか?

 

2:存在領域(ファクシミリの原理(非パターン)、素朴に動かす)、初等幾何(三角形の等積変形と面積比)、パズル。目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力C

総合難易度BC

 不等式中央の値をf(X)と書きましょう。求めるのは

\{\,X ~|~ 2\leq f(X)\leq3 \,\}

ですが、先ずはこれを

\{\,X ~|~ 2\leq{}^\exists k\leq3 \mbox{ s.t. }  f(X)=k\,\}

と見ます。「ファクシミリの原理」ってやつです。そしてここからXを素朴に動かすのですが、ここで三角形ABCの各辺の延長線上との位置関係が重要になる事が判り(ベクトルの終点の存在範囲とかも頭の片隅に置いていると更に連想し易いかも知れない)、後は等積変形や面積比を素朴に考察するだけです。パズルっぽい頭の使い方もしますかね?

 通常、ファクシミリの原理を適用する場合と若干、パラメータの固定の仕方の毛色が異なるのですが、先に「Xを素朴に動かす」ってのを実行していれば、思い付き易い気もします。知識的にも発想的にも中々高度な気がするですが、頭の良さでさらっと解けてしまいそうな感じもします。如何なんでしょうかねえ?

 

3:(1)単調性の証明(式変形だけ);(2)微分計算;(3)パラメータ描図(パラメータ微分)、誘導「結果の利用」、パラメータ求積(パズルも)。目標解答時間30分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 (1)ですが、こんなの微分しちゃ駄目です。\frac{1}{1+t}の単調性に帰着されます。

 (2)は言われた通り微分するだけです。

 (3)は(1),(2)の情報に加え、最大距離を与える点と極値を与える点の位置関係を厳密に述べる為にも、先ずは微分が必要でしょう。「回転」なんて言っていますが、後は絵を描いてパズルを考えるだけです。

 雑魚ではないですが、割と標準的で前2問に比べればまだ解き易いですかねえ?

 

4:(1)等比数列の和、余計な独立小問;(2)多項式の論証(次数に注目、係数比較)、実験→予想(離散全称から連想)、コンビネーションと二項展開的な見方;(3)多項式の係数比較、誘導「結果の利用」。目標解答時間40分。

テクニックBC

記述量BC

発想力CD

総合難易度CD

 (1)ですが、計算が怠いだけです。しかも独立小問です。糞。

 (2)は多項式に関する問題なので次数に注目するのは良いでしょう。すると

\frac{f_{n+1}(x)}{f_n(x)}

多項式だとしたら、これは一次の筈です:

f_{n+1}(x)=(p_n+q_nx)f_n(x).

これを繰り返し用いれば

f_n(x)=(p_{n-1}+q_{n-1}x)\cdots(p_1+q_1x)f_1(x)

であり、結局、f_n(x)は一次の積に分解する筈だと予想出来ます。じゃあそうだとして、各係数p_n, ~q_nの決定ですが、p_n帰納的に1と判り、一方でq_nn=1,2,3あたりで実験すればp_n=2^{n-1}と予想出来ますが(実験をする事自体は示したい事が離散全称である事から連想)、ここでミソになるのがa_{n,k}の定義で、二項展開的な見方により以上の予想が正しい事がほぼ直ちに判ります。最後の発想は難しくないと思います。f_n(2x)の方は前半からほぼ直ちに判ります。

 (3)は(2)が誘導となっています。a_{n+1,k+1}, ~a_{n,k}多項式の係数と見て

\begin{cases}f_{n+1}(x)=(1+2^nx)f_n(x) \\ f_{n+1}(x)=(1+x)f_n(2x)\end{cases}

からk+1次の係数比較をし、余計なものを連立により消去するだけです。「するだけ」とか言いましたが、パターンではなく誘導の意義を理詰めに考えながら解かないといけないので、俺はまあまあ時間が掛かりました💩

 実は本問、ツイッターで問題を探している時に「一次の積」って言葉を見掛けてしまっていて、それで俺は(2)の発想のハードルが格段に下がっていました。まあでもこれ無しでも俺なら上に書いた様な思考はルーティーンとして絶対にする筈なので、時間はもっと掛かっただろうけど解けたと思います。信じてください。

 

5:三次元求積(複雑な動きを二方向の動きに分解)。目標解答時間40分。

テクニックBC

記述量CD

発想力BC

総合難易度BC

 最早、東大理系数学のお家芸となりつつある、立体を点等の複雑な動きで記述し、その動きを単純な動きに分解して考える事で体積を求める数Ⅲの積分です(17の6,16の6)。z=tでの断面考察ですが、Pをz=s≦tと三角錐の共通部分(i.e., 円)だけで動かし、その後、sを動かします。これもファクシミリっぽいっちゃあファクシミリっぽいです。境界だけ考察すれば良いので、sの固定時、Pは円周だけで動かせば良いですが、その事は一言指摘すべきでしょう。

 易化傾向が続いていた14~17辺りなら最難大取レヴェルでしたが、今年はこれも(易しくはないがパターン問題ではあるので)寧ろ取り易いレヴェルです。

 

6:(1)個数の情報込みの特称命題(中間値の定理、-1≦sin≦1);(2)楕円のパラメータ表示と接線、楕円で囲まれた領域内の点(ファクシミリの原理的な見方 or 極座標表示的な見方)、誘導「結果の利用」、特称命題(具体的に1つ見付ける)、三角函数の方程式。目標解答時間40分。

テクニックCD

記述量C

発想力C

総合難易度CD

 (1)は良いでしょう。只の特称ではなく個数の情報も込みですが、それを踏まえても極自然に解けると思います。

 (2)ですが、まあPの方は楕円上の点のパラメータ表示でしょう。楕円の接線の公式は、恐らく暗記しているものをそのまま使って良いでしょう。一方のQですが、こいつは与えられた楕円盤領域を

\{\,(x,y)~|~ 0\leq{}^\exists s\lt r \mbox{ s.t. } 2x^2+y^2=s^2\,\}

と見て、再び楕円のパラメータ表示で表します。これもファクシミリっぽい見方とも言えます。或いは極座標表示でしょうか。今年、本当に多いですねえ。これで直交の条件を式にすれば(1)に近い式になり、これで誘導として使えます。そして「あー成程、じゃあ(1)のA>1が最小値に対応するんでしょ」と空気を読む訳です。但しその議論には「解を4つ未満しか持たない様なA, \alpha」を具体的に与えねばならず、これは立派な特称命題の証明となります。実際には特別な値、即ちA=1と((1)で極値の議論に関わった)\frac{整数}{4}\piを考えれば良いですが、こう云う議論も高校生は苦手そうです。残りの三角函数から成る方程式の解の個数に関する議論も地味に怠いです。

 いや、これは兎に角、誘導(1)が見事です。重めの議論と見事な誘導により味付けされた特称命題で、正しく東大理系数学、って感じです。

 

 

 

 去年はまだいた「これは易しい」って問題が、今年は竟に1題も在りません。1は基礎問題ですが、まじで基礎なので雑魚ではありません。2も難しくはありませんがそこそこの発想力が要求されます。数Ⅲの標準問題である3,5は、しかし処理量や必要な議論の数が多く、これ等も決して易しくはない。4,6は中々に高度で、どっちも(1)以外は試験場ではかなり厳しいと思います。確実に取れそうなのは3(1)(2),4(1),5(1),6(1)くらいで、残りから果たしてどれくらい集められたか。半分も取れれば十分なレヴェルな気がします。

 因みに俺は当然、時間内には解けていません💩

 

※今年の問題、4以外は全部、解とかパラメータとか点とかの存在系がテーマの問題ですね(格好付けて言うと、数学科学部1年がお勉強する「写像」っぽい議論)。いやまじ東大理系志望者は入試数学の掌握やった方が良いです。2巻の半分迄で良いと思います。