予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2021九大理系。

 後半2題が上手です。誰が作ったんだろう?

難易度:標準~やや難

昨年比:やや難化

 

1:空間図形(平面の手法の真似、点と平面の距離公式)。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力AB

総合難易度B

 タイトルの通りです。(1)の内接球の半径は平面図形の内接円の半径の真似、(2)の切り取られる円の半径は平面座標で円が切り取る線分の長さを求める時の真似です。後者は「点と直線の距離の公式」が「点と平面の距離の公式」になります(今の課程だと教科書に載ってるんだよね?)。

 次元が増えた分計算量も増えるし、絵も描かなきゃなので、記述量はちょいちょいです。試験場では決して雑魚ではないでしょう。

 

2:(1)二次次方程式の解(判別式)、三角函数の式処理;(2)複素平面(素朴な考察)、三角関数の式処理;(3)複素平面(素朴な考察)、三角函数の式処理、変数の範囲に注意。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 二次方程式、三角函数複素平面と盛り沢山です。

 (1)は勿論、(判別式)<0ですが、この後の式処理を如何するかで結構処理量が変わってきます。(下に載せた)解答の通りに\tan\sin,\cosばらすと直ぐですが、俺は初め脳筋になって\tanに統一しようとしたせいでまあまあ時間を持っていかれました。

 (2)は中心が実軸上である事がポイントです。「図形問題は式処理をする前に先ず出来るだけ素朴に見よう」という習慣が有れば見抜けると思います。このタイプ、九大だと割と多い気がするのですが、類題を直ぐに思い付かない💩

 (3)も(2)同様、どの角が直角になり得るかを先ずは素朴に考察です。最終的にtanを含む二次方程式に帰着しますが、答えは0\lt\theta\lt\frac{\pi}{4}というパラメータの条件に注意です。

 これもテクニックも計算量も多く、決して雑魚ではない。

 

3:(1)全称条件(不等式)、領域、微分;(2)求積。目標解答時間25分。

テクニックBC

記述量C

発想力B

総合難易度BC

 理系向けドストレートといった感じの、やや難の総合問題です。

 (1)は「任意のtに対して不等式が成り立つ範囲を求めろ」系の問題です。二次方程式の最後の方にやや難の問題として載っているやつの類題ですね。ただ、2変数な上に式処理が数IIIの微分なので、中々難しいと思います。19の1とか12の3みたいに、難しい年の九大の微積は文字の多さで受験生を心を折りにくるんで、怖いですね(12は俺が折られた年です(笑))。

 (2)は回転体の体積、つまり只の積分計算ですが、今度は計算量が中々にえげつないです。

 前2題に増して試験場で取り組むには大変な問題だと思います。

 

4:独自設定下での複素数の式処理と色々な論証;(1)全称命題の証明;(2)全称条件の同値性(パラメータの存在にすり替え);(3)非存在性の証明、複素数(絶対値、複素数平面での素朴な考察)。目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量C

発想力C

総合難易度C

 「平均値の性質」という、正にそれっぽい定義を与えた独自設定下での、複素数を中心にした論証問題です。(3)が中々上手です。

 (1)は特称命題(つまり「存在する」)の証明です。指示通りに式変形をすれば普通に解ける問題なのですが、聞き方だけで多くの受験生が苦手としていそうな気がします(うちの数学科の学生もまあ苦手ですよね)。

 (2)は複素変数下での文字の条件を求めさせるやつです。19の5に近いですが、流石にあれ程難しくはないですね(雑魚でもないけど)。「線分\alpha\beta上」って条件を、実数のパラメータの存在条件に言い換えます(こことか正に19の5の類題ですね)。実数の話になったので、実部と虚部に分けて実数の議論に帰着する事が出来ます。ですが、答が何とb,cには条件が付きません。この辺の変に受験生を怖がらせにくるのも、正に九大理系数学です(だが良い問題)。

 (3)最後は「平均値の性質を持たない」つまり非存在性の証明ですね(「非存在性の証明」って、何か中高生向けのボカロの曲の歌詞に在りそう!俺もこういうの大好き!笑)。まあ在るとして背理法なのは良いでしょう。f'(\gamma)=7\gamma^6なんで、角度や絶対値について素朴に考察してあげれば良いですが、そこに至る迄に色々と複素数の式処理をしないといけないし、これも中々難しいんじゃないかと思います。てか(3)は諸々の議論やその設定がかなり上手な気がします。誰が作ったんですかね?

 18の5や19の5に続く、本格的な複素数の式処理と論証の問題です。九大数学で満点を狙いたい人は、この辺の解法整理をきちんとやっておくべきでしょう。トップ層以外にとっては、捨てるか捨てないか、かなり微妙なラインの問題だと思います(出来れば間違い無くかなり差を付けられる)。ところで、独自設定をしてくる問題は15年以上前とかだとよく出ていたのですが、2006の5を最後に息を潜めていました。懐かしいですねえ。

(※)因みにf'なんて思わせ振りな記号が使われていますが、この表記はちゃんと(大学以降の)数学的に適切なもので、「代数的な微分」と呼ばれるものです(まあ今回は\mathbb{C}上だから普通に複素微分でもあるけど)。以上「俺数学知ってるぜ」アピールでした。

 

5:(1)コンビネーションの定義式、不等式の証明(粗く評価);(2)ディオファントス方程式(不等式の利用、素因数考察)、誘導「結果の利用」。目標解答時間20分。

テクニックB

記述量AB

発想力BC

総合難易度B

 これは上手で解ければ気持ちが良い問題です。

 (1)はコンビネーションの定義の理解が必要です。但し、今回は\frac{n!}{k!(n-k)!}の方ではなく、場合の数で普通に計算する時の{}_5\text{C}_3=\frac{5\cdot4\cdot3}{3\cdot2\cdot1}の方です。分数毎に粗く評価するんですが、若干発想力が必要とされていますかねえ。

 (2)は(1)を使うという意識が有れば、2\leq k\leq n-2とそれ以外で場合分けする事は出来るでしょう。2\leq k\leq n-2の場合ですが、ディオファントス方程式の問題なので登場している素因数pに注目するのは定石です。ここで(1)からn\lt pとなるため、コンビネーションの分母の因数を考察する事で、解が存在しない事が判ります(答案は背理法的に書くべきかな)。コンビネーションの因数考察はフェルマーの小定理の証明とかで触れていれば馴染みが有ると思いますが、無かったとしてもそんなに難しくない様な気もします(でも若干、発想量が必要かな?)。コンビネーションの因数考察といえば15年の東大5とかが連想されますが、あっちよりもずっと綺麗に作られていると思います。いや見事です。作ったの数論の先生かな?だとしたら知り合いだと思うのだけど(人脈自慢)。

 重くはないけど発想力がちょいちょい必要で、``横割り''の本とかでちゃんと勉強していない層は、完全にその日の頭の冴えの勝負になってしまいますね。まあでも、個人的には好きです。

 

 

  各問の難易度がB, B, BC, C, Bです。これは一昨年に匹敵する難易度だったんじゃないでしょうか?京大の5完よりは遥かに難しいですね(満点だと向こうに大物がいたんで判らん)。

 1は出来ないといけない。2は計算ミスや条件の見落としとかしそうだし、8割で十分でしょうか。3,4,5はどれも全滅し得る非常に危険な問題ですが、流石に1問弱は取らないと厳しいでしょう。5割ちょいで合格者平均くらいですかねえ?

※おお!確率が無え!東大のパクり?でも統計の先生達が口出さなかったの?

 あ、後、大学から借りているデジタルペーパーが共有がスキャンより遥かに簡単だったんで、俺の答案を貼っておきます。時間計りながら書いたやつです(京大もやるんだった。来年は大学に返して持ってないから多分出来ない💩)。結構、目一杯使いました。模範解答というには色々粗が在ると思いますが、まあ超トップ層*1の試験場での再現答案としては十分でしょう。是非参考にしてください(因みに俺は解き終わった時点で3の\piが抜けていたんで、満点ではないです💩):2021九大理系。.pdf - Google ドライブ


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*1:流石に今受験生やったら九大なら医学含め俺様がほぼ最強だろ(しかし、たまに数学科にいるまじのバケモノには多分高校生でも勝てん💩