予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2021年度春学期代数学I.

 今年もしこしこやっていきましょうかねえ。

 取り敢えず、例年通り演習問題の解答を作っていきます(毎週更新):演習略解.pdf

 演習問題は去年と大体同じになるっぽいんで、去年のページも参照しておきます。

 

※オンラインって事で全問題の解答を正式に配布しようって事になったんで、ここでの解答の更新は停止しますね。配布するのはレポート提出後の予定なんで、少々お待ちください。

 

 後は、講義で使われる教科書(堀田先生の代数入門)は、数学的にはとても良い本で、読めるのならこれを読んでおけば良いのですが、恐らく初学者にはまあまあ難しい気がするので、代替本を幾つか紹介しておきます:

・中島匠一先生「数論と代数の基礎」共立出版
 俺が初めて読んだ代数の本です。定義導入の動機付け、定義や定理の使用上の注意、証明の記述、どれを取ってもかなり丁寧です。(数学科の学生なら)ほぼ万人に合う気がしますが、章分けが少し独特で(初等整数論→環論→群論)、講義と併用するには一寸工夫が必要だと思います。学校の先生を目指す人なんかは、前期で環論と群論を読んで、夏休み中に初等整数論の章を代数の言葉に翻訳しながら読んだりすると、とても良いと思います。演習問題の解答は本には載っていないですが、リンク先の共立出版のホムペに在ります。後は、アマゾンで低評価が幾つか在りますが、代数を勉強する資格が無い人(高校数学を理解していないレヴェル?)が付けたものだと思われるので、数学科の学生なら無視して良いでしょう。
 
・川口周先生「代数学入門」日本評論社
 定義定理の使用上の注意も、証明の記述もとても丁寧です。例が凄く豊富且つ丁寧で、理解の助けになると思います。代数II以降の内容にも触れられていて、中島先生の本に比して、専攻決定以降も代数を使うかも知れない人向けだと思います(勿論、自分で目を通してみて記述が気に入った方を優先してください)。暗号とか符号の話にも触れているので「代数やりたい/好きだけど純粋数学オンリーはちょっと怖い」みたいな人にも良いと思います。特に九大だと需要が高そうですよね。因みに、この本は九大図書館のホームページで無料でダウンロード出来ます。
新妻弘先生、木村哲三先生「群・環・体入門」共立出版
 定理の証明が凄く丁寧です。レイアウトが凄く読み易いです(レイアウトを気に入るか如何かは実はモチヴェイション維持の上でかなり重要である事が統計的に実証されている)。中島先生や川口先生の本と違って、動機付けとか使用上の注意みたいな手取り足取りの説明は余り無いですが、寧ろこういう本の方が好きな人もそこそこいるのではないかと思います。例題や演習問題も豊富で、高校の教科書みたいな本です(リンク先のアマゾンのページで中身が結構見られます)。
 
・野﨑昭弘先生「なっとくする群・環・体講談社
 (恐らく)非数学科向けに、兎に角、具体例等の動機付けを丁寧に挙げながら、代数Iで扱う「群・環・体」について解説しています。この本だけでは代数を習ったとは言えませんが、如何しても苦手で「取り敢えず講義を聴ける様にする為に何とかならないか?」みたいな本を探している人には、ひょっとしたら良いのかも知れません。集合とかも最低限の事は初めに纏まっているみたいです。
 
・石井俊全さん「ガロア理論の頂を踏む」ベレ出版。
 「ガロア理論」とありますが、代数Iの内容と、更にそれに必要な集合論線型代数についても丁寧に書かれています。アマチュアの方が書かれた本で、正直、数学的に気に入らない記述が色々と在るのですが、兎に角、説明や例や例題が大量に書かれており、また非数学系の愛好家みたいな人達からの評判がとても良いみたいなので、如何しても苦手って人は、検討してみても良いのかも知れません。まずい表現等は、演習発表やセミナー発表で叱られて直せば良いでしょう。
 とても分厚い本ですが、それは兎に角、説明が沢山書かれているからであり、内容はそんなに多くはありません。本書が扱っている``ガロア理論''についても、代数IIIで習うそれのスペシャルケースに過ぎません(より正確に言えば、考察対象を\mathbb{Q}の有限次拡大に限定している)。