予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

「能力が低い」と思われる事が恐かった。

 自分は他人から「能力が低い」と思われる事を極端に恐れる人間でした。その最たる原因は生来のプライドの高さであり、また中学生の頃「野球が下手でチームメイトから虐められる」「勉強が出来なくて塾で人として扱ってもらえない」という2つの経験をした事も、直接の原因であったと推測しています。なので中学生以降の自分は、中途半端に勉強も運動も出来てしまった事も合わさって、この恐怖を「虚栄によって覆い隠す」という悪癖を身に付けてしまいました。勿論、中途半端な才能だけではいつか限界が来る訳で、自分にとってのその限界は、研究者としてのスタートライン付近に位置していた訳です。セミナーで本が読めず、学振に落ち、研究集会に出ては「今この場で1番頭が悪いのはきっと俺だ」というコンプレックスに苛まれ、そういうネガティヴな要素が募った結果、ここ数年、自分は数学とちゃんと向き合う事が出来なくなっていた様に思います。

 「就職して数学界隈から身を置こう」と別の進路を本気で考えてみて、唖然としました。自分には数学以外にしたい事が何も無い。家も車もブランド物も何も要らないし、立身出世も数学によるもの以外には一切興味が無い。職業を探すにしても、先ず第一に考える事は「数学をする時間は有るか」なのです。「数学」という精神的支柱を失った事で、まともな思考も出来なくなりました。これは、声を掛けてきたベンチャー企業に適当に就職しようとして、父ちゃんに「冷静になれ」と叱られて気付きました。冷静になってその会社について調べてみると、(少なくとも現時点では)自分に給料を払えるとはとても思えないのです。「自分の進路について調べる」という当たり前の事すら出来ない状態になっていました。そして極めつけが、「SASUKEに出たい」と思えなくなった事です。5年以上もずーっと努力してきたものへの想いが、綺麗さっぱり無くなってしまいました。怪我以外の理由で、初めてトレーニングを2週間もサボりました。自分の夢は「SASUKEに出る事」ではなく「数学者としてSASUKEに出る事」であった様です。「このまま適当に就職してだらだらと人生を送ったりしたら、いつか「死にたい」と思う日も来てしまうのではないか」という恐怖を、生まれて初めて抱きました。と言う事で「数学以外で就職する」と周りに散々に公言してしまいましたが、この前言を二転させる事にしました。

 「やっぱり数学を続けよう」と思い直した日、久し振りに坂ダッシュをする意欲が湧きました。それ以外の自分の中で崩れていた色々なものも、同じ様に急速に回復していく感じがしました。数学が出来ないという事へのコンプレックスから、自分は最近「俺は数学が好きなんじゃなくて``数学が好き''という設定の自分が好き」みたいな事をよく言っていました。まあ「自分が好き」ってのは間違い無いと思うのですが、それに負けないくらい、数学の事もちゃんと好きだったみたいです。「好き」とは言っても、やっぱり数学は難しくてしんどいです。「毎日10時間以上やるぜ!」とか息巻いていましたが、長時間していると、如何しても途中で集中力が途切れてしまいます。随分と長い間、真面目に数学をしていなかった(最後にしたのは3本目のサーヴェイ論文を書いた去年の春頃だと思われます)ので、慣れの問題も在ると思います。それでも、兎に角今は出来る範囲で、心を込めて数学に取り組もうと思います。

 最後に、この場で多くの数学関係の知り合いの方々にお詫びしておきたいと思います。中には自分の事を「真面目/優秀」と評価してくださっている方もおられると思われますが、先にも告白した通り、自分が最後に真面目に数学をしたのは去年の春頃であり、その評価は(全ての原因が自分の言動による)誤解です。自分は3年次セミナーから始めた代数幾何が、結局、殆ど身に付かないまま終ってしまいました。整数論についても、殆どまともに勉強した事が有りません。ちゃんと身に付いているのは、本当に学部レヴェルの代数学くらいです。でも、これからは本当に心を込めて数学に打ち込むので、若し良かったら今後も自分の事を覚えておいてくださると幸いです。

 

追記:

 迷走していたこの数日間は、自分にとって決して無駄なものではなかったと確信しています。数学以外の進路を本気で考えた事で、作業着やスーツを着て街を歩いている方々を見る目が変わりました。あの方達は、自分には出来ない事を毎日されている。それも20代前半とか、或いは10代の頃からです。本当に心から尊敬します。「偏差値が高い」という只それだけの本当に下らない理由で、自分はこれ迄、あの方達と少なくとも対等以上のつもりでいました。(或いは、心の何処かで「そうではない」と気付いていたその認識から、目を背けていました。)

 自分は本当に時間が掛かる人間です。浪人し、転学部でも1年使い、そして今回、学位を取るのにまた1年余計に使ってしまう。そして28にもなって、漸く上で書いた様な事に気付く辺り、精神的にもかなり未熟であると思います。それでも何とか、自分の好きな数学で他人の役に立てる人間になりたいと思っており、またその為の努力をちゃんとするので、どうか今後ともよろしくお願いいたします。