予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2024年京大理系。

 さて、やるか。

難易度:標準

昨年比:難化

 

1.確率(全てのものを区別せよ);(1)該当パターンカウント(最初の1手で場合分け);(2)極限(``強さ''の感覚、粗く評価して挟撃);目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力BC

総合難易度BC

 初っ端から良いパンチ打ってきますね。

 (1)確率なので全ての面を区別します。即ち、塗り方は全部で4^6通りです。ですがこの四面体の塗り分け、場合の数で有名なテーマなので(数珠順列の応用)、それに釣られて、つい場合の数で行こうとしてしまいそうになります(なりました)。俺は全事象の方の計算の仕方が判らなくて「京大がこんな変な問題を出す筈が無い」という信頼から数え間違いに気付けました。しかしながら、全ての面を区別しても、矢張り数え上げは大変です。俺は先ず1つの面を塗った後、その対面が同じ色かそうでないかで場合分けしました。確率漸化式の「最初の1手で場合分け」に近い技術だと思います(完全順列とか。或いは2020年の5も近いかな)。小問の前半のくせにポイント2つで、決して雑魚ではない。

 (2)全ての面を区別するのは同様ですが、もう全部数えるのは無理です。っつー事で、聞かれているのは極限だけだから「粗く評価して挟撃」がセオリーですが、ここで「色多かったら隣り合う面が同じ色になるとかほぼ無いんじゃね?」という感覚が必要となります。かなり発想力頼りな気がしますねえ(ちょっと違うけど、極限の初めにやる2^n+3^n\approx3^nってのに近いと思う)。ここまで冷静にも考察できれば、後はそもそも使う色が全部ばらばらの場合の数であるn(n-1)(n-2)(n-3)(n-4)(n-5)で下から評価するのってのは、そんなに難しくないと思います。

 

2.通過領域(素朴に動かす);目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量AB

発想力B

総合難易度AB

 複素平面ですが、複素っぽい考察は無いです。通過領域(と言うか存在領域と言うか)の問題ですが、素朴に動かして絵を描けばOKです。それこそ多少気の利いた複素平面履修直後の学生でも解けると思うのですが、知識として知っていないと発想力頼りになっちゃうかなあ(東大だとよく見るんだけどね。てか京大も去年の5の3次元求積は素朴に動かしてみる系だったか。後は2006の5もベクトルで立式した後は似た様な感じだったかな)。

 これも雑魚ではない気がする。

 

3.ベクトル(係数比較)、論理(同値性と「かつ」「または」);目標解答時間20分。

テクニックB

記述量B

発想力A

総合難易度B

 俺はやってて1番簡単だったんだけど(何も考えなくて良い機械的処理問題)、論理の話だから受験生は苦手なんだろうねえ。

 雑魚がいねえなあ。

 

4.誘導(具体例を計算して様子を伺う、結果の利用(計算中の結果の利用))、\mod4、余計な情報、漸化式(解く)、素因数2の個数の考察(と言う程でもないか);目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量B

発想力C

総合難易度BC

 この手のセッティング、京大多いですよね(2015の6とか2013の2とか)。つっても設定が似てるだけで、問題としてはあんま似てないけどね。

 (1)は「a_0=4k-1の形じゃなきゃいけない」と言うのさえ見抜ければ、後は力業で行けます。これで色々と観察しろって事でしょうね。

 (2)先ずは(1)と同様、a_0=4k-1の形でないと駄目です。誘導中での観察の利用ですね。んで、ずっと奇数っつってんだから、奇数の方の漸化式しか使いません。つまり偶数の方の漸化式は余計な情報です。余計な情報を見抜くって、数学では大切なので、美しくはないけど悪い問題ではないと思います。っつー事で奇数の方の漸化式を解くと

 \displaystyle a_n=4k\left(\frac{3}{2}\right)^n-1

となり、こいつがn\leq10で全て奇数になるには\displaystyle4k\left(\frac{3}{2}\right)^nが常に偶数なら良く、k=2^9となります。従って、a_0=4\cdot2^9-1=2047となります。

 標準問題集ではあんま出会わない知識が、割とオリジナルなセッティングの中に複数組み込まれています。これが今年1番難しい子じゃないかなあ。

 てか本問、コラッツ予想という有名な未解決問題に近いけど微妙に違うやつです(コラッツ予想の話はそういうの好きな人が散々に語っているだろうから、俺はこれ以上触れません。よく知らないし、人工的であんま興味も無い)。

 

5.(1)面積(定積分)、αと置いて先に進め;(2)極限計算(分子の有理化、``強さ''の感覚、eの定義式の形を無理矢理作る);目標解答時間30分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 (1)の交点は求まるけど一々書くのは大変なので、αとか置いて先に進みましょう。数IIIの微積あるあるのやつです(IIIに限らねえけど)。計算すると

 S_a=\sqrt{a^2-1}-\sqrt{a^2+1}+\log\left(\frac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}}\right)^a+1 

となります。

 (2)は只の極限計算です。\sqrt{a^2-1}-\sqrt{a^2+1}は分子を有理化すれば0に行くと 直ぐに判ります。一方で

 \left(\frac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}}\right)^a=\left(\left(1+\frac{2}{\left(a+\sqrt{a^2-1}\right)\left(\sqrt{a^2+1}+\sqrt{a^2-1}\right)}\right)^{\frac{\left(a+\sqrt{a^2-1}\right)\left(\sqrt{a^2+1}+\sqrt{a^2-1}\right)}{2}}\right)^{\frac{2a}{\left(a+\sqrt{a^2-1}\right)\left(\sqrt{a^2+1}+\sqrt{a^2-1}\right)}}\rightarrow e^0=1 

より、\log\left(\frac{a+\sqrt{a^2+1}}{a+\sqrt{a^2-1}}\right)^a0に行くと判り、結局、残るのは1だけと判ります。 

 ザ・理系の標準問題です。雑魚ではないけど、腕力だけでいけるので、ちゃんと受験勉強した子はこれが1番取り易かったんじゃないかな?

 因みに、使われている\displaystyle\frac{e^x+e^{-x}}{2}\displaystyle\frac{e^x-e^{-x}}{2}は「双曲線関数」と呼ばれる子達で、三角関数の双曲線類似として知られています(別にそれを知ってても本問では何の役にも立たないけどね)。

 

6.対数(桁数と最高位の数)、数えるもののすり替え、区間内の整数の数、極限(粗く評価して挟撃);目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量B

発想力B

総合難易度BC

 何か肩に\sqrt kとか乗ってて一瞬びびるけど、なんて事はありません。前半はいつもの桁数と最高位の数の計算です。後半は数えたい2^{\sqrt k}を整数kにすり替えます。ここで、例えばN_n区間\left[\left(\frac{n-1}{\log2}\right)^2, \left(\frac{n}{\log2}\right)^2\right)に含まれる整数の個数なのですが、区間に含まれる整数の個数って上端引く下端の値から\pm1とかずれてちゃんと数えようとするとうざいんですよね。ですが、ここで求めたいのは極限なので、\pm1とか如何でも良いんです。つまり、(念の為、\pm1ではなくより粗く\pm2とかにしといて)

 \left(\frac{n}{\log2}\right)^2-\left(\frac{n-1}{\log2}\right)^2-2\leq N_n\leq \left(\frac{n}{\log2}\right)^2-\left(\frac{n-1}{\log2}\right)^2+2

とかして(L_nも同様)、後は挟撃でOKです。後半は1(2)と殆ど同じ問題でしたね。

 これもちょい捻られてはいるけど、標準問題の範疇な気がするから、ちゃんと受験勉強した子は1とか3とかよりも取り易かったんじゃね?

 

 

 去年よりは確実に難化ですが、難問らしい難問は無かったので、解いててそんな嫌ではなかったです(つっても1と4はそこそこ時間食ったけどね)。満点もそこそこいたんじゃないかな。てか極限多かったですね。

 後は、1は4色定理、4はコラッツ予想と、有名問題を想起させる問題が多かった気がします。

 

 

 九大も解き終ってはいるのですが、福岡から帰ってきてからかな(ちょっと遊びに行ってきます!)。

 そういや最近、走るばっかでサーキット系のトレーニングしてねえな。今組んで明後日からやるわ。(※)明日は上半身の日。

 

ファーストサーキット:

必要な要素(全て息が上がった状態で行う。間にダッシュ2往復?):

1. 正確な足の移動(クアロー、シルクスライダー)

→床の目印への飛び移り(斜め跳び→立ち幅跳び)

2. 視界のコントロール(魚骨、ドラゴンキャッチ)

→縄跳びで良いかな?

3. ツインダイヤ型正確な足の移動

→普通に遠くの目印へジャンプ

4. 下半身高強度(タックル)

→ハイハイで良い気がする。ハイハイならここはこれをダッシュの代わりにして良い?

5. ジャンプ(ドラゴン跳び、反り壁)

→ジャンプして両手でバスケネットタッチ×2?足場意識。

 

(※)制限時間は120秒で収めたい。

2023年京大理系。

 流石に今年度の入試前にやっときました。つってもさっと全部解ける事を確認しただけで、真面目に記述の答案作ってないし、難易度判定も細かくはしてない。出題テーマはめっちゃ京大らしいと思う。受験数学しばいてドヤりたい系おじさんにとっても易しい難易度で、好き。

 

1(1):定積分計算(\sqrt{x}=:tの置換と\log込みの部分積分)。

 京大は定積分計算、絶対に出来なきゃ駄目ですよね。易。

1(2):多項式の割り算。

 割り算の定義を思い出しながらどんどんx^4+x^3+x^2+x+1で括ると、

x^{2019}(x^4+x^3+x^2+x+1)-x^{2018}(x^4+x^3+x^2+x+1)=x^{2023}-x^{2018}

よりx^{2023}-x^{2018}x^4+x^3+x^2+x+1で割り切れ、同様にx^{2018}-x^{2013}, x^{2013}-x^{2008}, ..., x^{13}-x^8, x^8-x^3が全部x^4+x^3+x^2+x+1で割り切れ、つまりこれ等の総和の 

x^{2023}-x^{2018}

+x^{2018}-x^{2013}

+x^{2013}-x^{2008}

+x^{13}-x^8

+x^8-x^3

=x^{2023}-x^3

x^4+x^3+x^2+x+1で割り切れます。どんどん消えるやつです。京大って多項式の割り算の定義を大切にする問題、多いですよね(15の5とか)。え、てか小問のくせに結構むずくね?もっと簡単な解き方在るのかな?(1の5乗根は反則だろうしてか簡単だけど連立は大変だし。)まあもう良いや。標準。

 

2:ベクトル(点の位置ベクトルを2通りで表して係数比較するやつ(垂線の足の計算とかで使う))。

 これも京大、好きだよね。ものとしては線型空間の基底の係数の決定なので、うちの線型代数の講義で使い易い気がする(初学者にも易しいし)。易。

 

3:確率(ダブりの処理でドモルガン)。

 チャート式の例題。まさか京大がそのまま出すとは。格好付けて言えば、包助原理の問題。本年度最易。

 

4:最大値最小値(微分、カタマリを置換)。

 最小値の方はめっちゃ相加乗だけど、まさかの相加乗ではない。等号成立を気にしない様な学生には、入ってきてほしくないんでしょうね。易。

 

5:3次元求積(「全体の形を考えるな。断面積だけ取り上げろ。」)。

 東大京大のお家芸です。最近の京大だと20の6, 18の6(難問), 16の4ですかね。アステロイド回ってます。x=t \ (0\leq t\leq 1)で切れば直ぐ出来ます(対称性よりt\geq0だけ考えれば良いのもこの手の問題のお約束)。x軸からの最大距離の計算は相加乗です。他大で出たら差が付く標準問題だけど、京大だとこれ取れないとやばい気がする(受かった子は大体取ったんじゃないかな)。易~標準。

(※)予備校が軒並み、難/やや難判定してるな。一応、複数方向に動いてるから東大で大取り張る系の問題の類題なのか。片方の動きを固定するっての、東大だと常識だけど、京大の過去問しかやってないとむずいのかも知れねえ。

 

6:\cosn倍角の公式(チェビシェフの多項式)、誘導(方針の利用)、nへの一般化(帰納法アルゴリズムの変更を意識(2段仮定))、ディオファントス方程式(積の形→素因数考察)、理詰めに考える(自力で``最高次の考察''を行う)。

 (1)は(2)へのヒントなのですが、もう1個、\cos2\theta\cos5\thetaを入れても良かったんじゃないかな(まあそれくらい自分でやれって事か)。

 (2)ですが、まあ無理っぽいから背理法なのは良いでしょう。(1)が誘導になっていて、先ず\cos n\theta\cos\thetaの整数係数のn次式になる事を数学的帰納法で示します(チェビシェフの多項式と言います)。なので\theta:=\frac{m}{n}\piとして、

(-1)^m=\cos m\pi=\cos n\theta=a_n\left(\frac{1}{p}\right)^n+a_{n-1}\left(\frac{1}{p}\right)^{n-1}+\cdots+a_0 \quad (a_i\in\mathbb{Z})

となります。両辺\times (-1)^mp^nしてb_n:=(-1)^ma_nとしてpの倍数を分離しましょう:

p^n=b_n+b_{n-1}p+\cdots+b_0p^n \Longleftrightarrow b_n=p(\cdots)

京大、この式処理もよくやる気がします(つっても00の4しか思い出せん)。しかし、ここで矛盾を見るには、最高次係数b_npの倍数でない事を言わないといけないので、チェビシェフの多項式の最高次の考察の必要性が生じます。ここで(1)の計算結果を見ると、最高次が2^{n-1}である事は見えると思います(有名らしいが、俺は知らなかった or 忘れてた)。これを組み込んだ帰納法を再度回せば、背理法も回ります。

 知ってるかどうかで凄く差が付く問題だとは思いますが、知らなくてもちゃんと数学出来る子なら何とか出来そうな気もします。でもやっぱ「努力した中間層」よりも「知ってるだけの奴」の方が得する問題なので、俺は嫌いです。やや難。

 

 易しいですが、これでも合格者平均は7割くらいだったんじゃないですかね。1~6(1)がちゃんと出来れば、十分差を付けられたと思います(京大生舐め過ぎ?)。東大もこれくらいの難易度にしてくれると嬉しいです。1問くらいチャレンジングな問題があるのは寧ろ楽しいですが、全部重いのはまじ勘弁です。

 浪人していた頃の自分の数学の答案を見たのだけど、「学生の文章」だと思って見たら、こいつ、まじで優秀だな(笑)。「自分がどこまで理解していて、どこからは理解していないのか」というのを、これでもかってくらいにしつこくアピールしてる。当時、数学の先生達と凄く仲が良かったのだけど、こりゃ好かれるわ。何なら相手してて少し怖かったんじゃないかと思う。思えば昔から、特に算数や数学で気になった事は、自分が納得するまで考える子だったので、きっとそれが効いたのだろうねえ。

 もっともっと努力して強くなりたい。でも、論文読むのも代数幾何勉強すんのも腕立ても持久ダッシュもつらくてやりたくない。努力が足りていない自分を責めずにはいられない。休みの日にゲームとかやってても「お前、それで良いのか?」ってなる。能力に比して多くを求め過ぎなのだと思う。でも、そういう性格なのだから仕方が無い。自分が強欲過ぎてしんどい。

 

追:正直、この間のSASUKEは、観てて相当に堪えました。俺と同じくらいの時期に練習始めた人達が、普通にセカンドとかサード行っとるし。努力も情熱も全然負けとる。先ず出る為の努力が足りていないし、仮に出れたところで、ファースト確実にクリアする自信も全く無い。このままじゃまじで後悔する。

 31歳にもなってこんな事を書くのはとても恥ずかしい事なのだとは思うのだけど、急増した他人との関わりに、戸惑い振り回された1年だったと思います。ただ、そういうものと向き合う事が意外と嫌ではなかったので、きっとこれからも大丈夫だと思います。

 来年は学生との関わりだけではなくて、自分の事(i.e., 研究とSASUKE)も確り頑張りたいと思います。*1

*1:学生と部活したり同期とトレーニングしたり走り込みはしていたので、身体能力自体は寧ろ上がっていると思うのだけど、SASUKEに出る為の対策や、SASUKEをちゃんと意識した動きの練習は全く出来なかった。

 「「好き」と「愛」の2つの単語は、表す範囲があまりに広過ぎるので、語彙を細分した方が良いのではないか」と思う今日この頃である。

 

追:何詰まんねえ事考えてんだ。てめえは強くなる事だけ考えとけ。