予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2023年京大理系。

 流石に今年度の入試前にやっときました。つってもさっと全部解ける事を確認しただけで、真面目に記述の答案作ってないし、難易度判定も細かくはしてない。出題テーマはめっちゃ京大らしいと思う。受験数学しばいてドヤりたい系おじさんにとっても易しい難易度で、好き。

 

1(1):定積分計算(\sqrt{x}=:tの置換と\log込みの部分積分)。

 京大は定積分計算、絶対に出来なきゃ駄目ですよね。易。

1(2):多項式の割り算。

 割り算の定義を思い出しながらどんどんx^4+x^3+x^2+x+1で括ると、

x^{2019}(x^4+x^3+x^2+x+1)-x^{2018}(x^4+x^3+x^2+x+1)=x^{2023}-x^{2018}

よりx^{2023}-x^{2018}x^4+x^3+x^2+x+1で割り切れ、同様にx^{2018}-x^{2013}, x^{2013}-x^{2008}, ..., x^{13}-x^8, x^8-x^3が全部x^4+x^3+x^2+x+1で割り切れ、つまりこれ等の総和の 

x^{2023}-x^{2018}

+x^{2018}-x^{2013}

+x^{2013}-x^{2008}

+x^{13}-x^8

+x^8-x^3

=x^{2023}-x^3

x^4+x^3+x^2+x+1で割り切れます。どんどん消えるやつです。京大って多項式の割り算の定義を大切にする問題、多いですよね(15の5とか)。え、てか小問のくせに結構むずくね?もっと簡単な解き方在るのかな?(1の5乗根は反則だろうしてか簡単だけど連立は大変だし。)まあもう良いや。標準。

 

2:ベクトル(点の位置ベクトルを2通りで表して係数比較するやつ(垂線の足の計算とかで使う))。

 これも京大、好きだよね。ものとしては線型空間の基底の係数の決定なので、うちの線型代数の講義で使い易い気がする(初学者にも易しいし)。易。

 

3:確率(ダブりの処理でドモルガン)。

 チャート式の例題。まさか京大がそのまま出すとは。格好付けて言えば、包助原理の問題。本年度最易。

 

4:最大値最小値(微分、カタマリを置換)。

 最小値の方はめっちゃ相加乗だけど、まさかの相加乗ではない。等号成立を気にしない様な学生には、入ってきてほしくないんでしょうね。易。

 

5:3次元求積(「全体の形を考えるな。断面積だけ取り上げろ。」)。

 東大京大のお家芸です。最近の京大だと20の6, 18の6(難問), 16の4ですかね。アステロイド回ってます。x=t \ (0\leq t\leq 1)で切れば直ぐ出来ます(対称性よりt\geq0だけ考えれば良いのもこの手の問題のお約束)。x軸からの最大距離の計算は相加乗です。他大で出たら差が付く標準問題だけど、京大だとこれ取れないとやばい気がする(受かった子は大体取ったんじゃないかな)。易~標準。

(※)予備校が軒並み、難/やや難判定してるな。一応、複数方向に動いてるから東大で大取り張る系の問題の類題なのか。片方の動きを固定するっての、東大だと常識だけど、京大の過去問しかやってないとむずいのかも知れねえ。

 

6:\cosn倍角の公式(チェビシェフの多項式)、誘導(方針の利用)、nへの一般化(帰納法アルゴリズムの変更を意識(2段仮定))、ディオファントス方程式(積の形→素因数考察)、理詰めに考える(自力で``最高次の考察''を行う)。

 (1)は(2)へのヒントなのですが、もう1個、\cos2\theta\cos5\thetaを入れても良かったんじゃないかな(まあそれくらい自分でやれって事か)。

 (2)ですが、まあ無理っぽいから背理法なのは良いでしょう。(1)が誘導になっていて、先ず\cos n\theta\cos\thetaの整数係数のn次式になる事を数学的帰納法で示します(チェビシェフの多項式と言います)。なので\theta:=\frac{m}{n}\piとして、

(-1)^m=\cos m\pi=\cos n\theta=a_n\left(\frac{1}{p}\right)^n+a_{n-1}\left(\frac{1}{p}\right)^{n-1}+\cdots+a_0 \quad (a_i\in\mathbb{Z})

となります。両辺\times (-1)^mp^nしてb_n:=(-1)^ma_nとしてpの倍数を分離しましょう:

p^n=b_n+b_{n-1}p+\cdots+b_0p^n \Longleftrightarrow b_n=p(\cdots)

京大、この式処理もよくやる気がします(つっても00の4しか思い出せん)。しかし、ここで矛盾を見るには、最高次係数b_npの倍数でない事を言わないといけないので、チェビシェフの多項式の最高次の考察の必要性が生じます。ここで(1)の計算結果を見ると、最高次が2^{n-1}である事は見えると思います(有名らしいが、俺は知らなかった or 忘れてた)。これを組み込んだ帰納法を再度回せば、背理法も回ります。

 知ってるかどうかで凄く差が付く問題だとは思いますが、知らなくてもちゃんと数学出来る子なら何とか出来そうな気もします。でもやっぱ「努力した中間層」よりも「知ってるだけの奴」の方が得する問題なので、俺は嫌いです。やや難。

 

 易しいですが、これでも合格者平均は7割くらいだったんじゃないですかね。1~6(1)がちゃんと出来れば、十分差を付けられたと思います(京大生舐め過ぎ?)。東大もこれくらいの難易度にしてくれると嬉しいです。1問くらいチャレンジングな問題があるのは寧ろ楽しいですが、全部重いのはまじ勘弁です。