予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2020東工大。

重厚な問題が少なく、余り東工大らしさは有りません。

 

難易度:やや易

昨年比:易化

 

1:(1)3の剰余類、絶対値(外す)、二次不等式;(2)誘導「結果の利用」。目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量AB

発想力AB

総合難易度AB

 (1)は剰余類ですが、勿論、うざい絶対値は場合分けして外します。二次不等式の処理ですね。

 (2)ですが、(1)より3の倍数が周期的に現れる事から簡単に解けます。

 京大の「実験→予想」問題に近いでしょうか。ですが(1)が在るので、実験する気が無くても自然に出来てしまいます。(1)は要らなかった気がします。因みに「オイラー多項式」と呼ばれる自然数を順に代入していくと素数を大量に生成する多項式が在って(x^2+x+41とか)、その関連で23辺り迄ずっと素数なのかなあ、とか初め思いましたが、そんな事はなかったです。

 

2:(1)複素平面(正三角形の条件と\omegaの性質)、筋の悪い独立小問?;(2)京大型ハイパー三角函数(しかしそんなに難しくはない、座標設定(一般性を失わない)、対称性(崩す))。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 (1)は多分有名なんだと思います(俺は複素数平面やってない世代だから知らん)。知っている証明を書いておけば良いでしょう。俺は\omegaの性質に投げました:与えられた式は中々取っ付き難いので、取り敢えず\alpha,\beta,\gammaが正三角形になる同値条件から攻める事にして、複素数の掛け算が回転を表す事から

\alpha,\beta,\gammaが正三角形を成す

\Leftrightarrow \underbrace{\frac{\beta-\alpha}{\gamma-\alpha}}_{=:z}=\omega\mbox{ or }\omega^2

\Leftrightarrow z^2+z+1=0

で、分母払えば与えられた式が出てきます。あら。

 (2)は恐らく(1)が使えるのでしょうが、俺は使いませんでした(如何使うかも判らん)。対称性を崩して座標設定します:

A:=(R,0), ~B:=(-\frac{1}{2}R,\frac{\sqrt{3}}{2}R), ~C:=(-\frac{1}{2}R,-\frac{\sqrt{3}}{2}R), ~P:=(R\cos\theta,R\sin\theta)

としましょう。てか最早、一言注意しておけば計算はR=1も仮定して良い気がします。これで計算すれば綺麗に\cos\theta, \sin\thetaが消えて答が出ます。対称性が高い設定をそれを崩し座標設定するのなんか、一昔前に京大でよく見たタイプの問題な気がします。但し、本問は別に難しくはない。

 1問目に続き、テーマが京大っぽいですね。

 

3:(1)空間ベクトル(同一直線上);(2)四角形の頂点の同一円周上条件選択(方べきの逆)、存在領域(雑魚)。目標解答時間30分。

テクニックAB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 (1)は良いでしょう。センターⅡBです。

 (2)ですが、4点の同一円周上の条件と言ったら:

1. (外心の候補が在る場合に限り)ある点からの距離一定;

2. 円周角の逆;

3. 対角の和180°;

4. 方べきの逆,

くらいでしょうか。後は今回は空間なので、同一平面上にいる事も一言指摘が必要でしょう。俺は初め、成分が具体的に与えられているので内積計算して上2つのどっちかだと思ったのですが、計算だけが膨れて如何仕様も無かったです。4ですね。Pの置き方もヒントと言えるかも知れません。最後の図示は要らんだろこれ。

 俺は(2)で方針を誤って内積計算をしたので凄い計算量に感じましたが、ストレートに正答を書ければ大した記述量ではありません。こう云う、図形の解法選択1つで大きく明暗が分かれるのも、東工大っつーよりは京大っぽいです。発想力(それも別に大した事ない)しか問えていない感じがして、個人的に嫌いです。

 

4:求積(斜軸回転)。目標解答時間30分。

テクニックAB

記述量BC

発想力A

総合難易度AB

 東工大名物数Ⅲの算数です。設定が怠いせいで計算量がまあまあ最悪です。y=\sin xからx+y=0に下ろした垂線とy=\sin xの交点が1つだけである事は、一言指摘が必要でしょう。ポイントはここくらいですね。満点以外在り得ません。

 

5:やや難の極限計算;(1)積分漸化式;(2)極限(収束に関する感覚(次数)、積分区間で定数化);(3)(4)極限(収束に関する感覚(次数))、誘導「結果の利用」「方針の利用」。目標解答時間45分。

テクニックC

記述量C

発想力CD

総合難易度CD

 ここ迄は東工大にしてはやや軽めでしたが、最後は極限の収束の感覚を問う、中々に高度な思考力を要求される問題です。でも何か極限に関する記述が変ですね(「kを限りなく大きくするとき」)。

 (1)は良いでしょう。部分積分2回です。a_{k+2}=\frac{4}{\pi^2}(k+1)(1-ka_k)となります。

 (2)ですが、問題文からka_kは収束するらしいので(勿論、示すべき事!)、特にa_k\rightarrow0の筈です(★)。すると(1)の漸化式で辺々k\rightarrow\inftyとする事でka_k\rightarrow1が判ります。以上の極限に関する議論は★さえ示せれば正当化出来るので、これをしましょう。しかしこれは、a_kの定義の定積分区間内で0\leq \sin \leq 1と評価すれば直ちに得られます。★は結論から先読みしないといけないので、中々発想力な感じです。★の感覚は以降もかなり重要になります。

 (3)は早速、★の感覚が必要になります。つまり、(1)よりA=1なのに注意し

k^ma_k-k^n

=k^n(k^{m-n}a_k-1)

ですが、ここでm-n\gt1ならこいつはk\rightarrow\inftyで正の無限大に発散する訳です。k\rightarrow\inftyの状況で、kの肩の数字の大小に注目するのは常識です。従ってm=n+1で、後はnを求めれば良いです:

k^n(ka_k-1) …☆

漸化式に立ち返りましょう。但し、主役は勿論、a_kではなく、今注目しているka_kです:(1)の漸化式で辺々k+2を掛け

 (k+2)a_{k+2}=\frac{4}{\pi^2}(k+1)(k+2)(1-ka_k)

\Leftrightarrow ka_k-1=-\frac{\pi^2}{4}\frac{(k+2)a_{k+2}}{(k+1)(k+2)} …♥

であり、これを☆に代入すると

 -\frac{k^n}{(k+1)(k+2)}\frac{\pi^2}{4}(k+2)a_{k+2}

となります。これが0以外の値に収束するってんだから、\frac{k^n}{(k+1)(k+2)}の分母分子の次数に注目しk=2で、この時、(2)と併せその極限は-\frac{\pi^2}{4}です。

 (4)(3)の解答と同様にして:

p=q+1 (これを仮定し)

k^r(k^{q-r-2}(k^3a_k-k^2)-B)からq-r-2=0\Leftrightarrow q=r+2

を予想します。「方針の利用」の誘導とも言えるでしょう。しかし、(3)よりも変数が増えている事から、議論は少々面倒です。上2つの予想が各々成り立たないとして、矛盾を導きます:

p\gt q+1\Leftrightarrow p-q\gt 1と仮定すると、

k^r(\underline{k^{q-r}(k^{p-q}a_k-1)}-B)

ですが、これでは(3)で見た通り下線部がk\rightarrow\inftyで正の無限大に発散し、従って全体も正の無限大に発散し矛盾します。従って以降では、p=q+1を仮定します;

q=r+1と仮定すると、

k^r(\underline{k^{-1}(k^3a_k-k^2)}-B)

ですが、下線部は0に収束するので全体としては負の無限大に発散し矛盾します;

q\gt r+2\Leftrightarrow q-r-2\gt0と仮定すると、

k^r(\underline{k^{q-r-2}(k^3a_k-k^2)}-B)

で、下線部が正の無限大に発散し、従って全体も正の無限大に発散し矛盾します。

以上からq=r+2, ~p=q+1=r+3で、後はrを決定すれば良いです。

k^r(k^2(ka_k-1)-B)

=k^r(-\frac{\pi^2}{4}\frac{k^2}{(k+1)(k+2)}(k+2)a_{k+2}+\frac{\pi^2}{4}) (∵♥)

=\frac{\pi^2}{4}k^r\frac{(k+1)-k^2a_{k+2}}{k+1}=:\spadesuit

ここで手が止まる訳ですが、大元の(1)の漸化式

\frac{\pi^2}{4}a_{k+2}=(k+1)-k(k+1)a_k

\Rightarrow \frac{\pi^2}{4}a_{k+4}=(k+3)-(k+2)(k+3)a_{k+2} …♣

を思い出せば、♠の分子はこいつの右辺に(次数やらの情報が)近い訳で、これを無理矢理作り出せば更に計算が出来そうです:

(♠の分子)

=(k+3)-(k+2)(k+3)a_{k+2}-2+5ka_{k+2}+6a_{k+2}

=\frac{\pi^2}{4}a_{k+4}-2+5(k+2)a_{k+2}-4a_{k+2}.

(定数)a_〇\rightarrow 0と(1)より(k+2)a_{k+2}\rightarrow 1である事に注意しつつ

\spadesuit=\frac{\pi^2}{4}\frac{k^r}{k+1}(5(k+2)a_{k+2}-2+\frac{\pi^2}{4}-4a_{k+2})

が0以外に収束すれば良いから、r=1で、この時\frac{3}{4}\pi^2に収束します。

 極限の次数等の感覚に注意しつつ、結果も先読みしながら極限計算を調整する事が要求され、かなり高度な問題だと思います。(3)(4)は試験場では一寸厳しいかもですねえ。

 

 

 

 5(3)(4)以外は難しくないと思います。1,3(1),4,5(1)は絶対に解ける筈です。後、2,3(2),5(2)は微妙で、ここから1問分弱取れれば十分でしょうか?5(3)(4)は中々難しいですが、別に無茶振りって程でもないです。他が大した事ない事から、数学自慢は十分取り組めたと思います。