予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2020名大理系。

難しい上に怖い問題が多いです。

 

難易度:標準~やや難

昨年比:やや難化

 

1:(1)解↔交点の言換、二次方程式の解の配置;(2)三角形の面積の公式選択((底辺)×(高さ)÷2);(3)Maxmin(2変数、置換で1変数化→微分)。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量BC

発想力C

総合難易度C

 初っ端から良いパンチ打ってきますねえ。俺は見事にやられましたよ(笑

 (1)勿論、x座標に関する方程式の解の存在条件に帰着です。図形的にb≠0である事に注意しながら連立すると、二次方程式

(a^2-b^2)x^2-2ax+(1+b^2)=0

の解の配置問題に帰着されます。交点が各々の連結成分に1つずつって条件から、解が各々、正と負なら良いので、最高次の係数の正負で場合分けしx=0での値を見れば良いのですが、定数項1+b^2\gt 0の条件から、最高次が正の場合は死に、負の場合は常に成り立ちます。従って後者、即ちa^2-b^2\lt0が答えです。

 (2)はやられましたよ。三角形の面積の公式のどれを使うかが問題ですが、まさかの(底辺)×(高さ)÷2です。いや、座標なんで初めはベクトルだと思ったのですが、計算が爆発して終りました。勿論、その後、三角形の公式を思い付いた順に考えた訳ですが、(底辺)×(高さ)÷2は最後だったので、凄く時間が掛かりました。高さは点と直線の距離の公式ですね。

 (3)はt:=a^2-b^2\lt0とし微分です。

 最初も言った通り、初っ端から最悪でしたよ。(2)は正しい公式選択が出来る迄、只管時間を食います。

 

2:(1)大小比較(次数の感覚);(2)ディオファントス方程式(積の形と素数)、誘導「結果の利用」((1)の大小比較から場合分けを絞る)。目標解答時間20分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 (1)は良いでしょう。強いて言えば、次数に関する大小の感覚ですかねえ(2次 vs 4次)。

 (2)は右辺が素数の積で左辺も積の形になっているので、解のパターンは限られますが、(1)からそのパターンは更に絞られます。

x^2+2xy+2y^2=(x+y)^2+y^2\gt (x+y)^2

がポイントです。若干発想力ですが、(1)の利用を意識していれば見抜ける筈です。

 易問とは言いませんが、本セットではこれがぶっちぎりで1番易しいと思います。

 

3:やや難の不等式の証明の解法選択総合;(1)不等式の証明(図形量の比較と見る、凸性と傾き);(2)定積分込みの不等式の証明(特別な不等式の利用((1)の不等式)、積分区間を弄る)、誘導「結果の利用」、\cosの周期性;(3)定積分込みの不等式の証明(部分積分)、誘導「結果の利用」。目標解答時間40分。

テクニックCD

記述量BC

発想力CD

総合難易度CD

 全小問、不等式の証明で、その各々が独立した大問並みの凶悪さを秘めています。

 (1)いきなり酷い難易度です。

F(x)\geq 0

\Leftrightarrow f(2\pi-x)-f(\pi-x)\geq f(\pi+x)-f(x)

\Leftrightarrow \frac{f(2\pi-x)-f(\pi-x)}{\pi}\geq \frac{f(\pi+x)-f(x)}{\pi}

と、直線の傾きの比較に帰着します。不等式の証明の解法「図形量の比較と見る」ですね。0\leq x\leq\pi/2の仮定からx\leq\pi-x且つ\pi+x\leq 2\pi-xが判るので、凸性から先の傾きに関する不等式は正しい事が判ります。凸性のヒントだけからこいつに辿り着くのはかなり高度だと思います。因みに俺は初め、よく在るF(0)\geq 0且つF'(x)\geq 0の流れかと思ってF(0)\geq 0を示そうとしていて、傾きの解釈に気付きました。こっちの方が若干、見え易いのかも知れません。しかし以上の議論から「従って凸性から明らか」とするのは、余りに直観的に過ぎる気がしてきました。でもここから更に厳密性を期すなら、それはもう凸性の定義(任意のグラフ上の異なる2点を取ると、その間の点は先の2点結んだ直線より下)を用いないといけない気がするのですが、恐らくこれは高校生は知らないでしょう。てかこんな事を言い出したらそもそも高校数学では2回微分と凸性の関係も直感的な説明で済ませているので、まああんま気にしないで良い気もします。答案には「ここの議論はグラフのイメージに依っており厳密ではないけど、厳密ではない事は理解しているので、許してください」とか書いておけば良いでしょう。

 (2)は名大名物、定積分込みの式処理の問題です。但しこれも一筋縄ではいかない。定積分込みの不等式と言ったら:

1. 積分区間内で評価;

2. (部分積分等で)(或る程度)積分計算;

3. 区間調整,

辺りがテクニックになるでしょうか。今回は3です。15阪大1や15東大6でも使っています(これ等は確か極限用の評価不等式立式に使った気がする)。そしてこの積分区間変更により、(1)が使える形に超無理矢理式変形します:(1)の\pi/2って数字にも注意しながら

\int_0^{2\pi}f(x)\cos xdx=\int_0^{\pi/2}+\int_{\pi/2}^{\pi}+\int_{\pi}^{3\pi/2}+\int_{3\pi/2}^{2\pi}

区間を分け、例えば2つ目の\intなら

\int_{\pi/2}^{\pi}f(x)\cos xdx

(x:=\pi-t)

\int_{\pi/2}^{0}f(\pi-t)(-\cos t)(-dt)

\int_0^{\pi/2}\{-f(\pi-x)\}\cos xdx

とかします。これで(1)が適用出来ます。

 (3)は今度は(2)迄は2回微分に関する情報なのに比して今回は1回微分の情報である事から、符号にも注意しつつ(2)が使える様に

f(x):=-\int_0^xg(t)dt …★

とすれば出来ます。しかし俺はこれ、(2)で初め部分積分だと思ってそれを実行した結果(3)の形が出てきたために偶々直ぐに思い付いただけで、恐らくそうでもなければ★の発想はこれまたまあまあ難しい気がします。でも本問、1つ疑問を呈すとすれば、そもそも★の様にfを置けるのか、つまりg積分可能なのか、って話です。まあ結論から言えばg微分可能である事から連続で、そこから(リーマン)可積分である事が(大学の微積の知識を使えば)判ります。大学の数学を勉強すると、積分可能性ってのは中々にデリケートな問題である事を思い知らされるので、それを言及無しにやっちまうのは数学科としては少々ムッとします。

 各小問とも、空気を読んで条件を使っていかないといけないところなんか、まじでむずいです。

 

4:(1)(2)確率(漸化式(しかし漸化式を立てるのは問題文で与えられているのとは別の数列!余事象っぽい)、偶奇性と見せかけてそうでもないトラップ);(3)離散不等式の証明(階差の考察)。目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量BC

発想力BC

総合難易度BC

 名大名物の重厚な確率漸化式ですが、今年はこいつもかなりの思考力を要求してきます。

 まあ(1)は良いでしょう。

 (2)は漸化式ですが、立てる漸化式はp_nについてではなくn解振った直後に:

・コマが対角に並ぶ確率D_n

・コマが隣り合う確率N_n

に関する連立漸化式です。如何発想したかと言うと、余事象、即ちn回振ってもゲームが終っていない確率を考えようとすれば、このD_n, N_nの場合分け含め自然に見付けられます。ですがこの連立漸化式、解くと\sqrt{2}が残って大変汚い!まあでも仕方無いです。17東工大4もこんな感じでした。

 (3)は離散不等式の証明です。nが奇数の場合だけ考えれば良く(こっちの方が先手が沢山攻撃出来、勝つ確率が高い筈!まあでも別に偶数もやってしまっても良い)、となると帰納的にp_{2m+1}\mbox{ vs }p_{2m}の比較となります。階差の比較ですね。もう良いでしょう。

 さて、(2)の数列を見付けられるかが鍵です。まあでも上でも述べた通り、確率の解法選択をちゃんとしていれば出来る筈です。

 

 

 

 ここ数年、(名大にしては)穏やかな傾向が続いていましたが、今年は中々難しかったと思います。2は取るとして、他に確実に取れそうなのは1(1),4(1)くらいです。ですがこれだと4割も無いでしょう。もう少し頑張って、半分弱で十分ボーダーくらいには届くのでは?3は正直、かなり難しいと思います。1つ思い付けないと以降何も出来ない、みたいな怖さの有る問題が多かったのも、難度上昇に寄与している気がします。怖いですねえ。