予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2015東工大。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2015/3/8に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い加筆、修正し転載したものです。

 

難易度:標準

昨年比:やや難化

 

1:(1)漸化式(既知の形に無理矢理帰着);(2)不等式(粗く評価)、示したい式から逆算;(3)極限(挟撃(上からの評価は誘導「結果の利用」、下からの評価は評価不等式の自作))。目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量B

発想力BC

総合難易度BC

 (1)はいつかどこか出すだろうと誰もが予想していた、一般の分数型の漸化式a_{n+1}=\frac{pa_n+q}{ra_n+s}を誘導無で解けって問題です。取り敢えず漸化式を含む問題の解法の最大の分かれ目は、その漸化式を:

①解く;

②解かない、

の2通り在るって事です。まあ今回は解けっつわれてるんで当然①ですが、与えられた漸化式を必死で解こうとして出来ず、解答見ると解いていない、なんてのは在る在るだと思うんで、注意喚起と云う事で。では解かないといけない訳ですが、解くなら:

①教科書に解き方が載っているやつ;

②無理矢理式変形して①に帰着;

③予想して帰納法

の3通りです。まあ今回のは教科書や普通の参考書には誘導無では載っていないと思うんで、②だと思います(多分③でもいける)。じゃあ解けるやつで帰着出来そうなのは何かって話ですが、まあa_{n+1}=\frac{pa_n}{qa_n+r}型ですよね。この後辺々分母分子ひっくり返してx_n:=1/a_nと置くやつです。っつー事で、辺々定数\alphaを引いて(足しても良い)調整し、この形を目指す事にします:

a_{n+1}-\alpha=\frac{4a_n-9}{a_n-2}-\alpha=\frac{(4-\alpha)a_n-(9-2\alpha)}{a_n-2}.

この時、最右辺の分子がa_n-\alphaの定数倍になってくれればc_n:=a_n-\alphaと置く事で目標の形になるので、つまり

1:\alpha=4-\alpha:9-2\alpha

を満たす\alpha、即ち\alpha=3を辺々引けば良いと判りました。解くとa_n=\frac{6n-1}{2n-1}になります。まあ在りがちっちゃあ在りがちですけど、でも漸化式を解く際の心構えが確りと頭に入っていないと解けない問題です。青チャートの解法を丸暗記していたって人は、今回はラッキーでしたね。

 (2)は不等式の証明です。1つだけポイントが在ります。

a_n=\frac{6n-1}{2n-1}=3+\frac{2}{2n-1}\lt 3+\frac{2}{n}

と、\frac{2}{2n-1}\frac{2}{n}で上から評価出来たかです。所謂「粗く評価」です。「何で\frac{2}{n}なんだよ?」って話ですが、a_n3+d_nと云う形で上から評価したとすれば

b_n \lt 3+\frac{\sum_{k=1}^{n}kd_k}{\frac{1}{2}n(n+1)}

で、これを示したい式と一致させようとすれば\displaystyle\sum_{k=1}^{n}kd_k=2nなら良いですが、まあこれを成立させる一番簡単なd_n\frac{2}{n}だからです。別に難しくはないですが、如何粗く評価するかを示したい式から逆算しなきゃいけないのは、確り理詰めに考えないと少し厳しいかもです。

 (3)は(2)が在るんでこれを誘導とした挟撃なのは良いでしょう。上が3に収束するので、3に収束するであろうと予想しながら下から評価せねばなりませんが、まあb_nは3より大きいものを加重平均しているだけなので、これが3より大きいのは当たり前でしょう。強いて言えば、これも粗く評価して評価不等式を自作しています。

 さて、(1)で確固たる漸化式の基礎を、(2)では不等式の定石を理詰めに使いこなせるかを問うていて、決して易問ではありません。でも、思考の基礎がちゃんと出来ていれば絶対解ける問題です。

※因みに、本問は\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}b_n=\lim_{n\rightarrow\infty}a_n=3ですが、これは偶然の一致ではなく、一般に収束列x_nに対して\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\frac{\sum_{k=1}^{n}kx_k}{\sum_{k=1}^{n}k}=\lim_{n\rightarrow\infty}x_nが知られています。大学の数学科に入学すれば、1年生の\epsilon-\delta論法の講義で必ず解かされる問題です。

 

2:空間図形(四面体)、対称性(活かす):(1)垂線の足(ベクトル(内積0));(2)図形量(四面体の体積)のMaxmin、座標設定。目標解答時間35分。

テクニックA

計算量BC

発想力A

総合難易度AB

 まじで計算量が最悪なだけの教科書レベルの空間ベクトルです。

 (1)ですが、内積0を用いて係数を只管決定するだけです。内積計算の途中で\theta:=\angle AOB=\angle AOC(\angle AOB=\angle AOCは対称性より)と置いて\cos \thetaを計算しておく必要が生じますが、全部文字定数x込みで、計算量がまじ最悪です。

 (2)は誘導に従うなら(底面積)×(高さ)です。底面積の候補は△ABCか△OBCのどっちかでしょうが、どっちにしろ方針は極めて単純且つ計算量が最悪です。俺なら対称性に注意しつつOを原点、BCがxy平面上x>0、H'がx軸上になる様に座標設定して、\vec a=:(a,0,b)a^2+b^2=1AB=xからa,bを決定し、行列式スカラー三重積ですかね(※)。後は本問、最大値を出すだけなら初等幾何よりOAがOBCに垂直な時と直ちに判ります。

 (2)だけなら超易問なのに、余計な小問&方針を押し付けてくる(1)がまじで最悪で、下手糞な年のセンター試験みたいです。対称性を使わずとも一寸計算量が増えるだけなので、もうまじで何も思考していなくても解けます。まあでも東工大受験生なら、こんな問題は激テク風俗嬢に手コキとアナルのW責めをされながらでも解けたでしょう。

(※)四面体の体積は、行列式スカラー三重積と呼ばれるものから直ちに導く事が出来ます。四面体の求積は割と頻繁に扱われるテーマですので、気になる方は東京出版の教科書NEXTのベクトルのやつでも見たって下さい。

 

3:(1)求積(y軸回転体(バウムクーヘン分割));(2)明示されていない値(回転体の断面積)込の不等式の証明(数式化(軸を設定し積分)→特別な不等式(\int_{-b}^bf\lt \int_{-a}^af ~(f\gt0,|b|\lt |a|)(「積分区間が狭い方が面積も小さいですよね」ってだけ)));(3)不等式の証明(特別な不等式(誘導で与えられた不等式))、誘導「結果の利用」、適切な式変形&置き換え(「定数は\intの外へ」)。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量B

発想力C

総合難易度C

 数Ⅲの求積と不等式を絡めたやや難の問題です。

 (1)は問題無いでしょう。y軸回転なのでバウムクーヘン分割です。多分使っても良いと思います。

 (2)は明示されていない値込の不等式の証明です。先ずは:

①数式化;

②図形量等と見て押し切る、

の2通り、俺は初め後者でいこうとしたのですが(何てったって面積と云う図形的意味が有る)、駄目だったので数式化です。こんな断面積を数式化しようと思ったら、勿論積分しか無いので、解答の様な軸を取って積分計算をしました。後は不等式の証明ですが、当然積分区間が狭い方が面積も小さいですよねってだけです。

 (3)も再び不等式の証明問題ですが、左辺の値には見覚えが有る筈です。そう、根号の中が(1)で求めた体積その人ですよね。そして、Vを求めるもう一つの手段としては断面積の積分が考えられる、つまり

\pi(1-e^{-a^2})=V=\int_{-a}^aS(t)dt

って事です。ここ迄来ればオチは見えた筈です。途中、重積分の形(\int\intの事)が出てきて少し戸惑うかもしれませんが、ここ迄来られる人なら大丈夫でしょう(定積分なんて所詮定数だから、もう一方の\intの外に出せますもんね)。

※本問は、理工系の大学1年の微積分で習う、ガウス積分を元ネタにした問題です。ガウス積分とは、\int_{-\infty}^\infty e^{-x^2}dxと云う、本問の被積分函数と同じ函数の無限区間での面積を考えるものです。これを求める過程で、本問の(3)の様な、1度重積分に落とす操作が現れます。無事合格を勝ち取られた方は、東工大微積分の講義でこのテーマが扱われた時に、感慨にふけってみるのも良いでしょう。

 不等式の解法選択の力、誘導の応用力を見る上で中々良い問題だと思うので、(2)(3)の解答を載せておきます。

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4:(1)成す角;(2)解↔交点の言換、明示されていない値込の不等式の証明(図形量の比較と見る)。目標解答時間25分。

テクニックB

計算量B

発想力B

総合難易度B

 前問の積分に引き続き、またも明示されていない値に関する不等式の証明があります。東工大好きですねえ。俺は受験時代は生物選択だったんで、速度ベクトルとか言われるとそれだけで問題見てるスマフォの画面かち割ってやりたくなりますが、まあ実際は物理の理解度なんて一切要りません。

 (1)は平面での成す角の問題です。使われ得る技術は:

内積(余弦定理);

②tanの加法定理;

③正弦定理;

④円周角の定理;

複素平面(or回転行列)の援用;

⑥その他初等幾何;

辺りでしょうか。④は使えれば強力(ex. 2010京大理乙2)なので⑥と区別し書きましたが、今回の様に具体的に角度を求めなきゃいけない時は割と無力です。⑤,⑥はまあ今回は違うでしょう。①~③の使い分けですが、①は成分や辺の長さに関する情報、②は直線の傾きに関する情報、③は角度に関する情報が多い時によく使う気がします(当然、絶対ではありません。解けなきゃ全部疑って下さい)。なので今回は内積でいきましょう。計算すれば直ぐに\cos\theta(t)=\frac{2}{\sqrt{t^2+4}}が判ります。従って\cos\theta(t)\rightarrow 0なので\theta(t)\rightarrow \pm\frac{\pi}{2}ですが、聞かれているのは成す角なんで\frac{\pi}{2}です。

 (2)が最初に言った明示されていない値に関する不等式の証明です。取り敢えずy軸に垂直って条件から\vec vのx座標が0なので、つまりt_1,t_2共方程式

2t\cos t-t^2\sin t=0 …★

の解となります。t\gt 0らしいので

\Longleftrightarrow 2\cos t=t\sin t \Longleftrightarrow \tan t=\frac{2}{t}

となります。言う迄も無いと思いますが、「解↔交点の言換」ですね。つまり、t_1,t_2y=\tan xy=\frac{2}{t}の交点のx座標の小さい方2つです。これでt_2-t_1は線分長と云う図形量としての意味を持ちました。実はこれで、示したい不等式は自明になります。

 それ程多くない処理量の中で、幾つかのポイントが確りと含まれた良い問題だと思います。まあでもこの処理量の良心さは東工大らしくはないですね(笑

 

5:最大公約数最小公倍数、素因数分解表示、文字の設定力。目標解答時間20分。

テクニックB

記述量A

発想力B

総合難易度B

 最後は最大公約数、最小公倍数に関する論証問題なのです。新課程の受験生なら整数を確りと扱っている筈なので、本問は易問と迄はいかずとも多くの受験生が解けると個人的には思うのですが、予備校の速報とかSNSなんかを覗いているとどうもそうではない様です(河合塾なんかやや難で出していました)。

a=p_1\cdots p_rp_{a_1}\cdots p_{a_s}

b=p_1\cdots p_rp_{b_1}\cdots p_{b_t}

 1\leq r+a_s,r+b_t\leq k, a_u\neq b_v ~(\mbox{for }1\leq {}^\forall u\leq s, 1\leq{}^\forall v\leq t)

とでも置いてやります。この時、添え字はa,bの共通因子が最初のr個になる様に適当に変えています。勿論、一般性を失いません。こうすればf(a,b)abの共通因子以外を全て掛けたものである、即ち

f(a,b)=p_{a_1}\cdots p_{a_s}p_{b_1}\cdots p_{b_t}

と直ちに判りますし、この瞬間、(1)(2)は自明です。(3)も

S(f(a,b))+S(a)+S(b)=(s+t)+(r+s)+(r+t)=2(r+s+t)

と直ちに判ります。

 いやこんなの本当なら易問でしかなく、東工大受験生なら絶対解けないといけないのですが、でもこうして都合の良い文字を自力で設定するってのが、やっぱ受験生には難しいのでしょうねえ。

 

 

 では全体概観ですが、2以外はどの問題も適度に定石的な考え方とその場に応じて理詰めに考える力を要求する、とても良い問題です。この様なセットを時間内に全て合わせる力が有れば、トップ校受験生の中でも数学が得意だと胸を張って言えるでしょう。