※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2015/3/10に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い加筆、修正し転載したものです。
難易度:標準
昨年比:同程度
1:図形量のMaxmin(数式化→三角函数の処理)、楕円(パラメータ表示、接線)。目標解答時間15分。
テクニックA
記述量AB
発想力A
総合難易度A
楕円です。それだけです。楕円上の点の三角函数によるパラメータ表示も楕円の接線も、まさか東北大志望者で知らない人はいなかった事でしょう。
2:(1)接点T(領域(逆像法)、1対1対応による数える物のすり替え(接線と接点)、解↔交点の言換、文字定数分離);(2)基本対称式、解と係数の関係。目標解答時間30分。
テクニックBC
記述量C
発想力A
総合難易度B
有名手法の詰め合わせと云った感じです。計算量もそこそこ在ります。
(1)は紛う事無き接点Tの問題です。他に色々試したくなるかも知れませんが、ゆうやく振り切ってこうです。逆像法や多数の数える物のすり替え等、本来ならかなりの難問ですが、受験数学としては完全にパターン問題なので、その意味では標準問題です。
(2)は見た瞬間に凄い計算量だと判る萎え問です。まあ二次/三次函数のお約束である解と係数の関係を使えば多少計算量は減りますが、それでもちょいちょいです。嫌い。
3:二次方程式(判別式、解と係数の関係)、確率(場合の数で処理、該当パターン全調査);(3)対称性(対等性?)、誘導「結果の利用」。目標解答時間20分。
テクニックAB
記述量B
発想力AB
総合難易度AB
サイコロで二次方程式の係数を決める在りがちなやつです。
(1)(2)は良いでしょう。(2)は一応、解と係数の関係です。今年の東北大は好きですねえ。
(3)も別に普通に数え上げても良いのですが、出てくる条件がと対等なのでこれを使えば
と計算出来ます。結果の利用ですね。恐らく模範解答もこれでしょう。対称性ってか対等性には常に気を遣えって事で(俺は最初気付きませんでしたけど(汗))。
4:数Ⅲの定積分と極限;(1)不等式の証明(定積分込、積分区間で定数で評価);(2)極限(挟撃、前問の不等式の利用)、誘導「結果の利用」(3)極限(挟撃、全問の不等式を利用)、誘導「結果の利用」「方針の利用」。目標解答時間15分。
テクニックAB
記述量AB
発想力AB
総合難易度AB
(1)は定積分込の不等式の証明で、被積分函数を積分区間で定数で評価するやつですが、同一テーマだった2015阪大1や2015東大6と違いこれは易問です。
(2)(3)は(1)の不等式を用い挟撃ですが、(3)は更にの評価を(1)同様に積分区間での定数化により行います。典型的な方針利用の誘導ですね。
本格的に入試数学に取り組み始めた受験生に誘導の使い方を教える問題として最適だと思います。
5:(1)成す角(鋭角条件、円周角の定理);(2)垂心計算(算数);(3)誘導「結果の利用」、図形量のMaxmin(四面体の体積、√内だけ見る)。目標解答時間25分。
テクニックB
記述量B
発想力BC
総合難易度B
(1)は平面に於ける直線の成す角の問題ですが、まあ円周角で良いでしょう。他のテクニックは2015東工大4に確か纏めています。
(2)自体は良いでしょう。
(3)だけ、誘導を如何使うかにやや発想力を必要とします。QRで折り曲げるって事は、つまりRQを軸に回転させるって事です。ここでHが垂心である事からQR⊥PHであり、従ってこの回転でPはHを通りRQに垂直な平面上を円を描きながら移動する事になります。A,Bについても同様に考えれば、結局P,A,BがぶつかるのはHを通りMQに垂直な平面、Hを通りQRに垂直な平面、Hを通りRMに垂直な平面の3つの平面の交わり、つまりHを通りxy平面に垂直な直線上であると判ります。後はこの条件を盛り込みながら体積をtで表し最大値を求めるだけです(処理は平凡)。
本問は(3)だけ誘導の利用方法の考察と空間での点の動きを冷静な考察を必要とし、やや難度が高かったと思います。まあ解いていて面白い問題ではありますけど、中学入試で変な図形対策をした連中が露骨に有利になりそうなんで、選抜問題としては個人的に好きになれませんねえ。
6:ディオファントス方程式の大型問題;(1)必要十分の証明(同値でいける)、整数問題に於ける分数の取り扱い、;(2)ディオファントス方程式(整数解の非存在性、偶奇性に注目)、誘導「結果の利用」;ディオファントス方程式(解の個数の数え上げ、素因数の振り分け、偶奇性)、、1対1対応による数える物のすり替え(整数解と自分が設定したパラメータ(解答中のr)をすり替える)。目標解答時間40分。
テクニックCD
記述量CD
発想力BC
総合難易度CD
数の総和をテーマにしたディオファントス方程式の大型問題です。千葉大医学科専用問題で2014や2012に似た様な似てない様な問題が出題されています。「加法的整数論」って題目の下、沢山研究されているテーマなので、問題が作り易いのでしょう。
(1)ですが、苦手とする受験生も少なくないであろう、同値性(必要十分である事)を示す問題です。この問題へのアプローチは基本的に:
①両方の矢印を各々示す;
②同値変形(⇔で繋げられる変形)を繰り返し目標の形に持っていく,
の2通りです。基本は①です。p⇒qの形の命題に落ちますから、対偶法、背理法等一気に武器が増えます。しかし、示さないといけない事が2つになって怠いです。一方で②で行けると楽です。だから常套手段としては先ずは②を疑い、駄目なら①に切り替えるって感じですかね。本問は幸い②で行けます。問題文で与えられた条件は、自然数mの存在ですが、自然数って事はつまり:
(イ)整数であり;
(ロ)0より大,
である訳ですが、結論から言うとこれらが各々(A)(B)に対応します。mを分離してやると、(A)の形が先ず現れますが、ここで(A)の条件は自然数であることではなく整数であることです。従って、0より大と云う条件が抜けているので、更にこの値を0より大として不等式を解くのですが、ここで1つ注意点です。自然数から1/2引いても、0より大きいのは変わりませんよね?だって、最小の自然数1が1/2より大きいんですから。つまりmの値として(A)出てきたやつの1/2はぶった切って構わないんです。この、離散変数の問題に於いて絶対値が1より小さい小数は殆ど大小に関係しないってのは非常に良く使う見方です。更にm,nが整数なら
が成り立ちます。「何当たり前の事言ってるんだ!」と怒られそうですが、こう云った素朴な事実が難しい整数問題に於いて致命傷となる事が少なくありません。
(2)はディオファントス方程式の解の非存在性の証明です。まあ偶奇性に注目しつつ背理法なのは良いでしょう。(1)を誘導と捉えても独立小問だと無視してもいけますが、まあ如何にもな小問が居るんで前者でいった人が多かった事でしょう。でも実は後者の方が楽な気がします。
では(3)について、本問も使う道具自体は(2)と同じですが、使い方がもう少し複雑になります。やはり先ずは小問をどう見るかについてですが、結論から言うと(3)は特に(1)を独立小問と見た方が楽です。てか(1)を誘導だと思うとして如何使うのかは俺はもう忘れてしまいました。さて(3)も(2)同様、素因数がテーマですが、整数問題で注意すべきは
(合成数がある場合その約数を含めた)登場する全ての素数が主人公になり得る!
です。本問、登場人物はpばかり目立っていますが、2もそうですよね?そして、(2)同様2に注目、つまり偶奇で場合分けをしつつ素因数pの振り分けを考えていけば解けます。解の個数の数え上げは、整数解を自分で設定したパラメータ(解答中r)の個数にすり替える必要が在り、ここが唯一、本問で発想を必要とされるところだと思います。後は(1)のところで注意書きした、も再び活躍してくれますね。
苦手な受験生が多そうな問題ですが、慣れてしまえば各段階でディオファントス方程式のお約束を積み重ねていけば普通に解ける問題だとも思います。
1,2(1),3,4,5(1)(2)は殆どの合格者が解けたんじゃないですかね。これ全部6割強位ですか?差が付いたのは2(2),5(3),6(1)(2)辺りだと思います。ここからもう1問分取れていれば普通の学部志望なら十分だったでしょう。6(3)は医学科含め殆ど全滅だったんじゃないかと思いますが、数学自慢ならこう云う問題こそ腕の見せ所ですよね。