予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2021東北大理系。

 研究集会が終ったんで、北2つを片付けておきます。

難易度:やや易

昨年比:同程度~微易化

※「ブログの今後について。」で述べた通り、必ずしも「全ての問題に真面目に解答を付ける」という事はしていません。勿論、全部自力で解ける事は確認しています。

 

1:領域、二次方程式の解の配置。目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度A

 領域つってますが、まあ二次方程式の解の配置だけですよね。aの値で場合分けですね。

 新高3に配慮した春の模試とかで出そうな問題です。

 

2:(1)平面ベクトルの教科書の例題;(2)2変数函数の値の範囲ってか最大最小ってか(独立2変数(各々動かすだけ));(3)誘導「結果の利用」、ディオファントス方程式(絞り込み→積の形)。目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 (1)は良いでしょう。

 (2)も、(1)で求めた値をa,b各々動かすだけです。解法選択って程ではない気がする。

 (3)は(2)からS/T=3になりますね。後は因数分解です。数値の設定のお陰で処理が少なくて助かります。

 整数問題を全然別の分野に上手く結びつけている問題です。東北大、結構好きな気がします(17の3とか)。難しくはないんで、これも取らなきゃですね。

 

3:場合の数の傍用問題集問題。目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 どの問題集にも載っていて、誰でも解けて、そして一寸怠いやつです。

 

4:図形と方程式総合;(1)「解↔交点」の言換、多項式因数分解、解と係数の関係;(2)軌跡(文字消去)、変数の範囲;(3)線分の通過領域(素朴に動かす)、求積(数IIの微積)。目標解答時間30分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 難し過ぎない中で、色々な知識を問うている中々良い問題です。

 (1)ですが、先ずはlをy=x+cとして連立でしょう:

x^3-3x-c=0\cdots

いつもならここで「文字定数cを分離して…」とかやる訳ですが、今回は「解の1つをaとして良い」と言っているので、その情報を反映させて方程式に問題に帰着する事が出来ます。先ずはx=aを代入し、

a^3-3a-c=0\Longleftrightarrow c=a^3-3a

である筈です。従って、

★\Longleftrightarrow x^3-3x-(a^3-3a)=(x-a)(\underline{x^2+ax+a^2-3})=0

となります(2つ目のイコールはf(x)-f(a)の形に注目し因数分解しました。多項式方程式の解を考えているので、因数分解は常に頭に用意しておくべき事です)。P, Qのx座標は各々(上記下線部)=0の解ですので、解と係数の関係が使えます。(-\frac{1}{2}a,a^3-\frac{7}{2}a)になるみたいです。標準的な知識の組み合わせなので、(1)は出来たいですね。

 (2)は軌跡の定石通り(x,y)=(-\frac{1}{2}a,a^3-\frac{7}{2}a)としてaを消去すれば良いのですが、問題なのはaの範囲です。当然、先ずは問題文の条件(*)を満たさないといけないのですが、その他にも「3つの交点の内、座標が1番大きいのはR」という条件が隠れています。これを反映させるには、実際に(1)の方程式のa以外の解を求め

x=\frac{-a\pm\sqrt{12-3a^2}}{2}

となり、「大きい方がaよりも小さい」という不等式

\frac{-a+\sqrt{12-3a^2}}{2}\lt a

を解く必要が在ります。俺みたいな数学の人間は「条件を満たしているかチェックする」という習慣は頭に染みついているのですが、受験生にとってはそれ程常識ではないでしょう(実際、数学科の大学生ですら、身に付いている人間はそう多くはない)。

 (3)は線分の通過領域です。テーマ的にはそれ程易しくはないですが、今回はその線分がy=x+cと動く部分がcだけですので、cの範囲を(2)で求めたaの範囲を元に特定し、その範囲でcを素朴に動かしてやれば良いです。ここ迄くれば、後は算数ですね。

 通過領域の問題で「素朴に動かす」のは、東大だとよくやる手法です。色々と通過領域のテクニックを覚えてしまうと、かえって採用し難くなってしまう手法ですよね。ちゃんと箇条書きで頭に入れておき、いつでも使える様にしておいてください。

 

5:(1)(2)複素平面(因子を捨てる(拡大回転するだけで点の位置関係は保たれる));(3)図形量の最大最小(数式化→微分)。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力AB

総合難易度B

 (1)(2)は16東大4の易類題ですね。因子zを捨てるんですが、16東大4はその前に平行移動という一工夫が必要でした。

 (3)は当然、数式化して微分ですが、(2)のzの存在範囲がまあまあ怠いんで、場合分けもかなり怠いです。

 

6:(1)nと積分込みの等式の証明(数学的帰納法、部分積分);(2)不等式の証明(積分区間被積分関数を評価);(3)誘導「結果の利用」。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 「ザ・理系の標準問題」なのですが、とある有名事実に基いています(後述)。

 (1)ですが、nがいるのでまあ帰納法でしょう。「k⇒k+1」の証明で部分積分を用います。

 (2)は数IIIの標準問題集に必ず載っているやつです。当然、e^x積分区間で評価します。

 (3)は(2)の不等式により「最小のn」が求まります。偉そうに言っていますが、気付く前に一緒に問題を見ていた某先輩に即座に言われちゃいました(勿論、俺も絶対に気付きます)。こういう「不等式を成り立たせるベストな値」の議論は、数学科に入ったら先ず勉強する「イプシロンデルタ論法」ってのでめっちゃやります。ただ、ひょっとしたら慣れていないと受験生には難しいのかも?

 さて、聞いた事が有る生意気な受験生も多いでしょうが、実は(1)はe^xの「テイラー展開」ってやつです。但し、本問は別に「テイラー展開を知っていればもっと簡単に解ける」みたいな類いの問題ではないですし(剰余項(定積分のとこ)関する知識もちゃんと有って、且つ関連する演習問題とかの経験も有ればこの限りではないが、それだけ確り勉強している受験生は殆どいないでしょう)、寧ろ余計な事を知っているせいで変な事をしようとして普通の解き方が出来なかったかもなので、案外、そういう「知識に振り回される受験生」向けの虫除けに丁度良い問題だったかも知れません。

 ところで、東北大ってこういう「大学1年レヴェルの微積ちゃんと勉強していると有利になる問題」が時々出る気がします(19の5とか14の6とか?)。なので、数学科志望とかで他の科目も或る程度目途が立った受験生は、そういうものに手を出してみるのも、ひょっとしたら悪くないかもです(「合格する」という観点から見れば、他教科が不完全だったり模試の判定がAで安定しなかったりする受験生には、先取り学習はお勧めしない)。

 

 

 昨年に引き続き易し目の出題ですが、相変わらず高校で数学を真面目に勉強したか如何かを問う、良質な問題が並んでいます。地方旧帝大の理系生の数学力を見聞きする感じ、これくらいの出題が丁度良い気がします(名大や最近の九大は少し難し過ぎる気がする)。前半の基礎問題3つを確実に取る事が先ず大切です。後半3題は地方旧帝大の問題としては標準的です。ここから1問分取り、4完分くらいで合格者平均くらいだと思います。満点が取れればちゃんと周りと差を付ける事も出来ると思います。欲を言えば、1題くらいはB問題を数物医学の数学自慢向けの問題に差し替えてあげると良い気もします。

 後半3題は東大の標準問題に近い気がします。4,5が東大に近い事は指摘しましたし、6についても、テイラー展開が背景である問題は昔の東大の問題に結構在った気がします。後、2の「独立2変数を各個処理する」ってのも、そう言えば今年の東大2でも出てますね。まあ、だからと言って「東大の過去問もやると良い」とか言うつもりは無いですけど。

 ところで、東北大も確率が無え。