予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2022九大理系。

 個人的に好きな問題が多いです。

難易度:標準

昨年比:やや易化

 

1:空間ベクトル(平面に垂直なベクトル、垂線の足)、図形量の最大最小(幾何的考察(折り返しの有名なやつ))。目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度A

 どの問題集にも載っているやつです。外積でも正射影でも知っていれば好きに使えば良いです(知らなきゃ普通に解けば良いです)。これは取れなきゃいかんでしょう。

 

2:多項式の割り算、極限計算。目標解答時間30分。

テクニックB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 (1)は先ず三次式(x-\alpha)(x-\beta)^2で割り算して、残った2次式の2次の係数を(x-\alpha)(x-\beta)で調整し、それで残った1次の係数をx-\alphaで調整し、それで残った定数項がCです。本来なら易問でしか無いのですが、多項式の割り算を何やっているのか理解せずに丸暗記している学生とかは出来ないんでしょうね。虫除けに丁度良い問題だと思います。好きです。

 (2)は良いでしょう。代入したり微分したりするやつです。

 (3)の極限計算が少々厄介です。A=\frac{\alpha^n-\beta^n}{(\alpha-\beta)^2}-\frac{n\beta^{n-1}}{\alpha-\beta}とかになるんですが、先ずは\alpha^n-\beta^n=(\alpha-\beta)(\alpha^{n-1}+\alpha^{n-2}\beta+\cdots+\beta^{n-1})なる因数分解ですかね。極限以前に文字式を弄っているんだという意識が有れば、必ず式変形の候補に挙がると思います。左の項の分母分子が\alpha-\betaで割れる事からも、この式変形で良さそうです。この次が厄介なんですが、「更に分母の\alpha-\betaを消したい」「左の項の分母は\alpha^{n-1}+\alpha^{n-2}\beta+\cdots+\beta^{n-1}のn項」という事を意識していれば、n\beta^{n-1}=\underbrace{\beta^{n-1}+\cdots+\beta^{n-1}}_{n\text{個}}という見方が何とか出来るんじゃないかと思います。ここは中々に理詰めに考える力を必要とされている気がします。

 (3)は微妙ですかね。

 

3:ディオファントス方程式;(1)n,n+1は互素;(2)因数考察、誘導「方針の利用」;(3)特称命題の証明(具体的に1つ見付ける)、誘導「結果の利用」。目標解答時間30分。

テクニックB→BC

記述量B→BC

発想力B

総合難易度B→BC

 (1)は良いでしょう。与えられた方程式をmod 2すればnは奇数と判り、よってn^2\pm1は偶数になる事から、与えられた2数は整数です。差が1である事から互いに素である事も明らかですね。15の5でも似た様な議論をしましたね。

 (2)は168=2^3\cdot 3\cdot 7である事から、n^2-1が上記各素因数を持つ事を順に見ていけば良いだけです。先ずはnが奇数で、従ってn^2-1=(n-1)(n+1)n-1, n+1はどっちも偶数でしかも一方は4の倍数である事から、n^2-1は8で割り切れます。次に与えられた方程式をmod 3すればn=3l\pm1の形と判り、従ってn^2-1=(n-1)(n+1)n-1, n+1のどっちかは3の倍数と判ります。7についても同様に出来る事から、言いたい事が言えました。(1)のmod 2の議論を3, 7にも適用するところは、一応「方針の利用」ですかね。後、こういう素因数の議論は、北大の19の2に近い気がします。

 (3)ですが、まあn^2-1=168\,(n\gt 0)\Leftrightarrow n=13でしょう。168の倍数として具体的に1つ168を選んだ訳ですが、まあこういう「具体的に1つ挙げる」って習慣、身に付いていない受験生多そうな気がします。掌握の1巻をよく見とってください。宇宙人の存在を証明するには、火星人を1人見付けてくれば良いんです。流石に「169=13^2」は皆知っているんですかね?こういう数字の感覚の普及度は俺にはよく判りません。とても綺麗な誘導ですが、13^4を試験場で受験生に計算される事は、憲法18条の「奴隷的苦役」に抵触する気がします。

 いやn=13だとm自然数になってねえ(間違えてm^2を求めてたわ)。くそミスった今年九大満点取れてねえ。てか電卓使ったらmが自然数になる最小の168の倍数、1680なんだけど、こんなの全部試験場で計算させんの?何だこれは?まじ奴隷的苦役!糞問題だろまじで!

 あーいや脳筋過ぎたわ。n^2-1=168kとすればn^4=1+210m^2\Leftrightarrow m^2=\frac{4k(84k+1)}{5}で分子が5の倍数になるkを選ばなきゃいけなくて、ここからk=1,5,6,10,\ldotsくらいに候補が或る程度絞られはすんのか。しかもこれならn^4を計算する必要も無えな。やっぱこれは良い問題な気がするわ。勘違いさえしなきゃ俺も普通に解けた筈です信じてください。

 

4:微積分;(1)導函数の定義;(2)対偶;(3)(4)区分求積の基本理解。目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量B

発想力

総合難易度AB

 問題の形式は一寸変わっていますが、微積の基本を問う良い問題です。

 (1)はfやらの原始函数の存在は仮定して良いんですかね?まあ勿論、良いんだろうけれど、数学的には一寸気になります。これはサーヴィス問題であるべきだと思うのですが、微分の公式、ちゃんと証明も身に付いている受験生は、果たしてどれくらいいるんでしょうかねえ。

 (2)は平均値の定理(特称命題)を使えっつってるんだから、証明は対偶「\int_a^bg(x)dx\leq 0\Rightarrow g(x)\leq0なるa\leq x\leq bが存在」を示すのが良いでしょう。仮定からgの原始函数Gに対してG(b)-G(a)\leq 0\Leftrightarrow\frac{G(b)-G(a)}{b-a}\leq 0で、左辺に平均値ですね。

 (3)(4)は(高校数学の)定積分の定義と区分求積の関係をちゃんと示させる問題です。普通に教科書を勉強していれば出来る筈ですが、恐らく多くの高校生は``受験数学テクニック''に夢中でやってないんじゃないかと思います。因みに、大学に入ると定積分の定義は区分求積でする事が多いです。

 2(1)もそうですが、「教科書に書いてあるけど、受験生は流しちゃうんだろうなあ」みたいな所を付くのが好きみたいですね。俺も好きです。

 

5:パラメータ微積。目標解答時間30分。

テクニックB

記述量BC

発想力AB

総合難易度B

 大取はやや重めのパラメータ微積です。只の作業で怠いだけなんで、あんまやりたくないですね。東工大のカス問題って感じです。

 (1)はまあ好きにすれば良いでしょう。\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{dt}\frac{dt}{dx}を使う訳ですが、高校数学では完全には正当化していない公式なので、一寸「うーん」ってなります。

 (2)は普通に痴漢積分です。

 (3)は回せっつわれたら今の受験生は複素平面なんですかね。まあ何でも良いです。

 (4)について、(3)より原点中心に``6方向対称''な図形である事は判りますが、これ、凸性は気にしなくて良いんですかね?``概形''の定義が判らないので、何とも言えません。

 怠いだけで、数学的には難しくないと思います。

 

 

 「教科書を「ちゃんと」読め」というメッセージがひしひしと伝わってきますね。個人的には好きですが、まあ工学部とかも受ける試験なので、一般論としての良し悪しは俺には判りません。てかまた確率が無いですね。

 

 

 あー東大やりたくねえな。やんねえかも知れねえ💩