予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2015名大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2015/3/8に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い加筆、修正し転載したものです。

 

難易度:やや難

昨年比:昨年並(14年4の様な難問は消えたが、その他の問題に比して全体的にレベルアップしている)

 

1:(1)微分;(2)一意性込の特称命題(定数分離、「解↔交点の言換」);(3)ディオファントス方程式(「(整数)=(分数)」の形、しらみ潰し)、誘導「結果の利用」。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 数Ⅲと整数の融合問題です。苦手な人は初っ端から最終問題には出鼻を挫かれかねません。

 (1)はサービス問題ですよ。一言、2^x微分は覚えていない方は対数微分で導いていると思いますが、2^x=e^{x\log 2}と見れば瞬殺出来ます。あ、でも名古屋は確か公式集みたいなの配られるからこれも載ってるのかな?

 (2)はものとしては個数に関する情報込みでものの存在を聞いてくる、所謂「一意性込の特称命題」でかなり高度なテーマですが、本問はお約束の定数を分離して方程式の解とグラフの交点を言い換えるやつですね。

 問題は(3)です。(2)より実数解自体がそもそも3つしか無い訳ですが、割と良く使われる式なんで、その内2つが2, 3だってのを覚えていた人もいるかもしれません。そんな人なら「流石に1個くらい無理数だろ。」と勘を働かせ、背理法で意外とあっさりいったのかもしれませんが、まあ少数派でしょう。しかし、そんな事を知らなくとも、有理数解を持つとしてそれをq/p\in\mathbb{Q}とすれば、

2^{q/p}=(q/p)^2\Longleftrightarrow 2^q=(q/p)^{2p}

と(整数)=(分数)の形になり、これよりp=1が必要で、従って有理数解は整数解のみ、それも2冪に限ると判ります。後は(2)で描いたであろうグラフを見ながらしらみ潰しです。

 複数の分野の知識を聞き、それでいて難し過ぎない、名大らしい良い問題です。強いて難癖を付けるとしたら、さっき言った様に2, 4が解だと知っていただけの人が若干有利になってしまった点くらいでしょうか。易問ではありませんが、他の問題の難易度も考えると、出来れば最後迄取っておきたい問題です。

 

2:(1)(2)代数的操作(冪根);(3)大小比較。目標解答時間25分。

テクニックB

計算量B

発想力C

総合難易度BC

 代数的な問題です。因みに代数的とは、(多項式)=0の形の方程式や、その解となる数(例えば、\sqrt{2}とか\omega)の式処理に関する問題です。決して難しい問題ではありませんが、慣れていない人は全滅する恐れが在り、その意味で本セットの中で1番怖い問題です。

  (1)は\alpha=\cdotsの形から良さ気な冪根を分離し、冪乗して消していくだけです。この年は他に阪大の3でも出ていますね。方程式以外の分野では、例えば楕円の図形的な意味(2点からの距離の和が等しい)から例の式表示を導く時なんかにもやった覚えが有ると思いますが、ここで詰まると本問は死刑確定です。

 (2)が中々の洞察力を要求します。(1)の方程式を導く際に、(左辺)=(右辺)⇒(左辺)^2=(右辺)^2と云う式変形を2回行いますが、矢印の方向を見ても明らかな様に、逆は成り立っていません(二乗同士が等しくても、(左辺)=-(右辺)の可能性が在ります)。ここが、この方程式が\alphaに固有なものではない事を物語っており、これこそ(2)攻略のポイントです。まあ詳しくは解説を見て下さい。

 (3)はおまけです。一言、√の大小比較は中身だけ比較すれば十分です。

 (2)の洞察、俺は大学の数学でちょこちょこしていたんで慣れていて難無く出来ましたが、受験生は果たして如何だったんでしょうかねえ。

※因みに、本問だけでは\alphaに対して題意を満たす様な多項式f(x)が一意的か如何かについては解りませんが、実はこの様な多項式f(x)は一意である事が知られていて、「\alpha\mathbb{Q}上最小多項式」と呼ばれています。最小多項式の概念は、体論と呼ばれる分野や、更にそれに続くかの有名なGalois理論に於いて非常に重要な概念です。

f:id:okazar1992:20190526035504j:plain

 

f:id:okazar1992:20190526035518j:plain

 

 3:微積分総合:(1)接線、求積(面積)、「今、自分が弄っている値は何か?」;(2)不等式の証明(特別な不等式(自作特別な不等式(図形量の比較と見る)))、結論の同値変形、極限(挟撃)。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量C

発想力C

総合難易度C

 中々に重厚な微積分の総合問題です。2程の洞察力は必要とされませんが、与えられた条件を状況に応じて1つずつ丁寧に利用していかないと計算が大変な事になってしまいます。

 (1)はほぼ算数ですが、S_2を計算する際に現れる台形の面積計算に於いて、今、自分が弄っている値、つまり\alpha,\betaが各々e^{\alpha}=t\alpha,e^{\beta}=t\betaを満たす値だと意識しその都度置き換えを行わないと、計算量が大変な事になります(なりました(汗))。「今、自分が弄っている値は何か?」を常に意識しておく事、当たり前ですが大切だと思います。 

 (2)は前半は先ず不等式の証明ですね。使われ得るテクニックについてはこの年の阪大理系の記事(https://avgdr60221367.hatenablog.com/entry/2019/05/22/165957)を参照してもらうとして、本問はそこで述べている「特別な不等式」を自力で用意する必要が在ります。そしてそれを用意する際に用いるのが「図形量の比較と見る」です。つまり、P, R, Qのx座標はこの順に大きくなるので、

\alpha \lt \alpha+\beta-1 \lt \beta \Longleftrightarrow \alpha \lt 1 \lt \beta

が判ります。一応、標語的に言っておくと、特別な不等式は:

①既知のもの(相加乗、凸不等式、x\geq\sin x等);

②前問で誘導として与えられているもの;

③自力で見付ける、

の孰れかです。これより\alpha \lt e/tの方は

t\alpha=e^\alpha\lt e

から得られます。一方で\beta\lt 2\log tの方についてですが、今迄の考察では\logなんて何処にも出てきていないので、取り敢えず同値変形をして\logを消去してみます(示すべき式の同値変形)。

\beta \lt 2\log t \Longleftrightarrow e^\beta \lt e^{2\log t} \Longleftrightarrow t\beta \lt t^2 \Longleftrightarrow \beta \lt t

より、\beta \lt tを示せば必要十分と判りました。ここで更に

t\beta=e^\beta \Longleftrightarrow t=e^\beta/\beta

より、結局

\beta \lt e^\beta/\beta \Longleftrightarrow \beta^2 \lt e^\beta

を示せば必要十分です。しかし、こんな式は\betaが正なら常に成り立つのでO.K.です。ただ1つ、このまま答案にすると、示すべき式を変形する事からスタートしていて、あたかも結論を仮定しているかの様な悪印象を与えかねないので、実際に答案にする際には逆から辿ると良いです。最後の極限はおまけですね。(1)より当然S_2/S_1\lt 1/2と、今示した不等式を同じく(1)の値に代入し挟撃です。まあ\log t/t\rightarrow 0は常識として認めて良いでしょう。

 うーん、本問も(1)はともかく、(2)は不等式の知識をフル活用する必要があり、お世辞にも易問とは言えません(難問でもありませんが)。医学科、理学部トップ層以外なら、(2)の片方の不等式迄いければ十分でしょうか。

 

4:確率:(1)全数調査+推移図+確率漸化式;(2)P(A\cup B)=P(A)+P(B)-P(A\cap B);(3)P(n=k)=P(n\leq k)-P(n\leq k-1)、推移確率、偶奇性。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量C

発想力BC

総合難易度C

 様々なテクニックを要求し、更に状況把握もやや面倒な、重厚な確率の問題です。取り敢えず確率の問題に対する解法テクニックとして今年の京大6の記事(https://avgdr60221367.hatenablog.com/entry/2019/05/18/200323)も参照して下さい。

 (1)ですが2^5通り未満と判るので全数調査で良いでしょう。但し書き方も計算の仕方も工夫が必要で、先ず全数書き出すのに推移図を描きます。そして具体的に全確率を計算する際にはnが小さい方から順に確率漸化式的に計算していきます。既に難しいです。

 (2)ですが、気付かないといけないのは

「全ての点に印がつく」⇔「少なくとも1回5を踏む」

です。しかしここで少し注意で、「少なくとも」と見た瞬間に条件反射で余事象に飛び付く受験生が多そうですが、本問は直接数えます。5に到達するのが4回目直後か6回目直後だけなんで(この辺りは今年の東大2の「回数の飽和」に近いかもです)。まあ(1)で推移図をちゃんと描けていれば気付いたと思います。求めるのは

(4回目に5に到達する確率)+(6回目に5に~)-(4回目も6回目も5に~)

となります(P(A\cup B)=P(A)+P(B)-P(A\cap B))。

 (3)は2回周期の推移確率です。基本的な考え方は

(ずっと1~3を行き来する確率)-(ずっと1, 2を往復し続ける確率)

ですが(P(n=k)=P(n\leq k)-P(n\leq k-1))、推移確率の方針を取るのも一苦労だろうし、2回周期に由来する偶奇性による場合分けが生じ、計算も地味にうざいです。

 1つの操作をネタに(1)(2)(3)の各々で異なる確率の計算テクニックを問う、極めて学習効果の高い良問ですが、難易度も計算量もかなりのもので、試験としてはかなり厳しいです。しかも(1)で推移図が描けていないと、恐らく本問はほぼ壊滅だったと思われます。恐ろしい。

※良問なんで解答載せます(画像じゃなくてすまんこ):2015名大4.pdf - Google ドライブ

 

 

 さて、絶対取れそうなのが1,2(1),3(1)だけですね。これだと4割くらいでしょうか。2(2)以降はともかく、3(2)と4は大量のテクニックが使われてはいますがそれ等1つ1つは標準的+α程度なので、本当に真面目に勉強していれば、太刀打ちは出来る思われます。