予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2019阪大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/3/3に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:8割ならやや易、満点なら難

昨年比:8割なら易化、満点なら難化

 

1、定積分込みの不等式の証明( (1)微積分学の基本定理、(2)グラフの単調性の利用&積分区間で定数化)、定積分込の極限(置換、挟撃(粗く評価し不等式の自作))、誘導「結果の利用」、目標解答時間25分。

テクニックBC

記述量B

発想力B

総合難易度BC

 昨年に引き続き、1番はザ・理系の微積の標準問題です。

 (1)は良いでしょう。微分して下さい。実質不等式の証明問題です。xが∫の下なんで符号は注意です。

 (2)は左の不等式が(1)から得たグラフの単調性利用で、右は区間内で定数評価(被積分函数の変数xをaにする)です。

 (3)がやや曲者で、(2)を利用した挟撃なのは良いでしょうが、その為に先ず(2)を使える様に強引に痴漢します。これでほぼ終りですが、下から押さえる不等式にくっついているごみの処理が地味にうざいです。

 (1)(2)は絶対確保ですが、(3)は微妙ですねえ。

 

2、3項間漸化式(解く)、複素数(ドモワブルと周期性)、確率((場合の数)/(場合の数)で処理、該当パターン全調査(ディオファントス方程式のしらみ潰しに帰着)or全数調査)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 よくもまあこれだけ沢山、1問に綺麗に纏めたもんです。但し、問題文では複素平面って言っていますが、複素平面の問題ではないですね。

 (1)ですが、その前に漸化式の処理です。まあ今回は解きましょう(解く必要が無く、しかも解く事に固執すると全滅する様な問題も在りますので、判断は慎重に)。そうすれば自然にドモワブルへと行き着きます。

 (2)は只のドモワブルと周期性の計算問題です。これ要らねーだろ。

 (3)は確率で、ドモワブルの周期から条件を絞り、周期に関するディオファントス方程式に帰着が普通でしょうが、所詮サイコロ2回なので全部調べても良いです。前者でいくなら類題は16九大後期1でしょうか。ドモワブルや三角の周期性からディオファントス方程式に帰着するのは1つのお約束だと思って良いかもです。

 沢山の知識を使いますが、悪戯に難易度が上昇しない様に上手く組み合わされています。その阪大の先生の優しさを汲んで、ちゃんと押さえて下さい。

 

3、存在領域(二次方程式の解の実数条件)、回転体(平凡だがうざい)、目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量BC

発想力A

総合難易度AB

 もう(s+t,st)ときたら条件反射で二次方程式の判別式に帰着です。ご丁寧にそれに気付かせる為の小問(1)も用意してくれています。求積も教科書の例題みたいなレベルですが、計算量だけ一寸大変ですね。

 これは取らないと。

 

4、互素の証明(背理法)、離散全称命題と一意性込の離散特称命題の融合(帰納法(特称は一意性と合わせ帰納法に組み込む、特称の処理は帰納法内で具体的に構成する)、帰納法を回す文字と帰納法アルゴリズム(二重帰納法、片文字全段仮定)、誘導「結果の利用」、帰納法アルゴリズムの復元、目標解答時間40分。

テクニックD

記述量C

発想力D

総合難易度D

 大学入試としてはかなりの難問ですが、個人的に糞みたいに大好きです。

 (1)は背理法なのは良いでしょうが、帰納法っぽく上の段へ登って行かなきゃいけません。既に受験生は苦手そう。

 (2)は分数p/qに関する主張を2つの自然数p, qに関する離散全称と見て、離散全称命題と離散特称命題の融合と見ます。全称+特称の詳しい解法選択は「入試数学の掌握」の2巻に投げるとして、今回は離散全称を帰納法で処理し、特称は帰納法中に投げます。但し、変数がp, qと2つ在るので、どちらで帰納法を回すかを考えなければなりませんが、結論から言うと今回は両方についての二重帰納法です。いきなり思い付く人もいるでしょうが、自分は初め1文字で回そうとして仮定が足りないと思った事から二重帰納法へと行き着きました。使う技術も、それを採用するに至る迄の思考力も、かなり高度なものが要求されます。帰納法を回す際の既約性の確認も地味に躓き所です。

 (3)は解こうとして初めて、一意性の証明も(2)の帰納法に組み込む必要が在ると気付きます。一意性込の特称と見るって事ですね。帰納法で考えている以外の分数から(p+1)/(q+1)が作られ得ないのは流石に明らかでしょうが、一言書いておいた方が良いかも知れません(解答には書いていないですすいません)。

 (4)も只のおまけの数値計算ではありません。新たな分数の構成が数学的帰納法アルゴリズムの中で示されているので、ここを詳しく見る必要が在ります。大学以降の数学で「○○が存在する」って定理を帰納法等で示した後、実際に○○を計算しようとしたら定理の証明から計算方法を復元しなければならない、と云う状況がしばしば起きるのですが、本問が要求しているのは正しくその作業です。

 高度な知識と思考力が大量に要求される、かなり難しい問題です。(1)以外は基本捨てだと思いますが、数論や代数を目指している数学科志望には是非解いてもらいたい!

※最初は更に全段仮定だと思っていて解答にもその名残が有りますが、そんな事は無かったです。

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5、空間図形の算数、目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度A

 如何解いても構わないです。こいつと4の完答が同じ得点率20%なのがまじで信じられません。

 

 

 1(1)(2),2,3,5の7割でボーダー、差が付くのは1(3),4(1)辺りでしょうか。最初にも書いた通り、8割迄なら明らかに去年より易しいです。4にも時間がたっぷり使えるので、案外完答者はいるかも知れません。4とか試験場で答案が作れたら、さぞかし気持ち良い事でしょう。微積の標準問題、確率、空間図形に整数の難問と、出題傾向は概ね例年通りだと思います。

 一寸自慢になりますが、俺は難問4が大好物で割と直ぐ解けたので、試験時間の半分ちょいで4迄解けました。5はもう下らな過ぎるので解答を作りませんでした。すまんこ。