※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/3/6に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。
難易度:やや難(北大としては)
昨年比:易化
1、垂線の足、s≧0,t≧0,s+t≦1、目標解答時間15分。
テクニックA
記述量AB
発想力A
総合難易度A
タイトルに在る通り、三角形の周上または内部と言われたら条件反射でこれです。これは完答以外在り得ません。
2、連続n整数、n,n+1:互素、誘導「結果の利用」「方針の利用」、目標解答時間20分。
テクニックB
記述量B
発想力B
総合難易度B
(1)ですが、連続2整数の積は当然偶数です。
(2)(3)もmの倍数はm飛びに分布しているのでそりゃあ当たり前で、それを文章にするってだけですが、苦手な人が多そうですねえ。こう云う当たり前の事を確りと文章にする力って、数学力以前のものである気がします。この能力が低い人が如何すればそれを上げられるのかは、申し訳有りませんが俺には分かりません。
(4)は(2)(3)の結果の利用ですが、因数3が高々1個である事も言わなきゃいけません。証明は(2)(3)と同様で、方針の利用とも言えそうですが、まあ「同様に…」で良いと思います。
北大理系生なら解けて当たり前の問題ですが、現実問題としてそうとはいかないでしょうねえ。差が付くと思います。「高校生は苦手だろうなあw」とか思いながら解いているのが、優越感が刺激され大変気持ち良かったので、解答を作りました。
3、極値(微分)、分数函数の極値、軌跡(パラメータ消去、雑魚)、目標解答時間20分。
テクニックA
記述量B
発想力A
総合難易度A
(1)は「文字定数が入っていても微分出来ますか?増減表書けますか?」って聞かれているだけです。
(2)は与えられた分数函数の極値を具体的に求めないといけないのが計算だけ一寸大変です。実は分数函数の極値f(a)/g(a)はf'(a)/g'(a)と等しい、ってのが在って、これを使えば計算も楽ですが、うーん答案で何の断りも無く使っても良いのかな?まあ証明も簡単なので、示せば良いだけです。「分数函数 極値」とかで検索すれば直ぐに証明も出てくると思います。ところで、如何でも良い事ですがこの定理、かの有名な予備校講師、安田亨先生が発見したって事で“安田の定理”なんて呼ばれているらしいのですが、こんな簡単な主張を初めて発見したのが存命の、それも予備校講師である筈が無いと思うんですよね。でもそう思って前に調べた事が有るんですけど、それ以前のソースが出てこないんです。まあ当たり前過ぎて誰も定理だって認識が無く、従ってそう書いている文献が無いだけだと思うんですけど、実際のところ如何なんですかねえ。残りの軌跡もx座標が-tなんで、カスみたいなもんです。
勿論、完答必須です。
4、確率(Σ計算)、目標解答時間20分。
テクニックAB
記述量B
発想力AB
総合難易度AB
何の変哲も無い確率です。一見ルールが複雑そうですが、書いてみればそんな事もないです。Σの利用もお約束ですね。
5、積分方程式、加法定理、連立漸化式、誘導「結果の利用」、積分の等式証明(左辺に纏める、面積の意味付け)、目標解答時間30分。
テクニックBC
記述量BC
発想力BC
総合難易度BC
北大らしい式処理メインの積分の標準問題です。但し、(3)だけはかなり理詰めに考える必要があり、易しくはないです。
(1)は与えられたf_{n+1}の積分パートを中のsin(x-t)を加法定理でばらせば自然に出来ます。積分計算がちょいちょい鬱陶しいですが、まあ常識の範囲内でしょう。
(2)はこれ要らない誘導ですね。無くても自力で連立漸化式を解こうとして下さい。
(3)だけ、かなり理詰めに考える必要があります。折角なので、俺が解いた時の思考過程を書いてみます:
「(2)からa_1=b_1=1なら良いけど、fを定数倍して幾らでも調整が効くから、a_1=b_1を考えれば良い。 …①
等式の問題だから辺々処理するか左辺に纏めるかだけど、両辺とも積分区間が同じな定積分だし、まあ後者だろう。 …②
積分の等式(∫_0^π(sin-cos)f=0)を考える訳だから計算するか面積と思うかくらいしか無い気がするけど、正体不明のfが混ざっているから後者しか無い。 …③
取り敢えず積分区間でsinとcosが各々x軸と囲む面積は等しいけど、cosの方は負になるから、等しくしようとしたら絶対値か2乗を考え∫|sin|-|cos|=0か∫sin^2-cos^2=0だろう。あ、f:=sin+cosで後者か。 …④」
みたいな感じで理詰めに①~④の4つのステップをクリアしないと、中々解けないと思います。書いてみると短くなってしまいましたが、これは俺もそこそこ難儀しました。残りの細かな積分計算は全部(1)で済んでいるので、ここ迄辿り着ければほぼ終りです。ところで、2(4)と云い、今年は「1つ求めよ。」が多いですね。
さて、見た瞬間「うわ!やりたくねー!」と思ったのですが、実際に解いてみると上手く作られているお陰で、処理量自体はそこ迄酷くはないです。(1)(2)は絶対に押さえるべきでしょう。(3)は中々難しいと思います。これ単独なら京大や東工大のやや難でもいけるでしょう。ここも差が付きそうですね。
全体について、取り敢えず1,2(1),3,4,5(1)(2)は確保でしょう。これで7割越え位じゃないですか?各予備校とも軒並み難化裁定ですが、絶対にそんな事は無いです。差が付くと思われるのは上でも述べた通り2(2)(3)(4),5(3)です。全部取れれば数物医学でも十分努力が報われると思います。
昨年2題も出て、「今後要注意かも」と言っていた領域・軌跡系ですが、一応3(2)で軌跡を求めろとは言ってはいますが、こんなの軌跡の問題でも何でもないので、実質出題されていませんね。すまんこ。
さて、これで今年も終了です。東大東工大に結構ぼこぼこにされて凹んでいましたが、最後東北大北大は割と気持ち良くしばき回せたので良かったです。