予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2016東大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2016/2/26に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い加筆、修正し転載したものです。

 

難易度:やや易。

昨年比:やや易化。

 

1:不等式の証明(どんどん微分、グラフの単調性の利用)。目標解答時間20分。

テクニックB

記述量BC

発想力A

総合難易度B

 何をすれば良いのかは明らかなのに、対数微分から始まりlogやら分数函数やらの微分をがっつりやらされ、中々結論に達しません。導函数考察時のグラフの単調性の利用も知識としてはそこそこ高度で、決して雑魚ではありません。

 まあでも東大の問題って事なら是非取りたいレベルですね。

 

2:確率(n、最初の一手で場合分け、推移確率と周期性);(1)「n回目で初めて○○⇒n-1回はnot○○」;(2)「n回目迄に○○=\displaystyle \sum_{k=1}^{n}(k回目に初めて○○)」。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力AB

総合難易度B

 昨年に引き続き確率は「最初の一手で場合分け」でした。推移図を書けば判りますが、後の対戦カードの周期は全てここで決定されます。「最初の一手で場合分け」は漸化式を立てる時だけのものではないです。例えば、有名問題でポリアの壺と呼ばれる問題もこのタイプです。しかし本問も記述量がかなりしょっぱいです。推移図を書いてる時も油断すればこんがらがってしまいそうになりますし、その後の計算も非常にデリケートです。条件付き確率もどうすれば答えが出るかは直ぐに解りますが、いざ計算するとうんざりさせられます。使われるテクニック自体は極標準的なので、本問も取りたいのですが…

 

3:図形量のMaxmin(数式化→微分)。目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度A

 数Ⅲの定期試験問題です。東大がここ迄簡単な問題を出すのは珍しい気がします。しかし、本問も計算量で点差を開けさせにきている感が若干在ります。にしても、1に続き一体何回分数函数微分させる気なのでしょうか…

 

4:複素平面、平面での成す角(鋭角三角形、円周角の定理の逆)、東大名物式変形中に適切な式処理をしないと泥沼(平行移動、共通因子を捨てる)。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 俺は初めz=x+iyとして実平面の議論に落とし内積でいったのですが、計算量が爆発し時間オーバーになっちゃいました(5,6は先に解いていました)。これでも当然いけるのですが、本問にはもっと良い解答が在ります。

 平面での角度に関する議論は平行移動で不変である事、更に複素平面では0でない複素数を掛けたり割ったりしても回転するだけで角度は変わらない、ってのが大きなポイントになります。つまり:

 1, z, z^2が鋭角三角形を成す。

\Longleftrightarrow 0, z-1, z^2-1が鋭角三角形を成す。

\Longleftrightarrow 0, 1, z+1が鋭角三角形を成す。

となります。この解答、仲が悪い知り合いがドヤ顔で語ってきたものなんで個人的にあんま紹介したくないんですけど、でもこの解答だけは非常に優れているので、知ってしまった以上は紹介せざるを得ないです。

 まあでも、ここ迄シンプルではなくとも、他にも色々と利口な解答が考えられます。俺の初手の筋が悪過ぎただけです(汗

 

5:小数の10進法表示;(1)不等式の整数解(範囲を絞ってしらみつぶし)、適切な式変形&置換(「αと置いて先に進め」、√は分離し二乗)、整数問題で小数の取り扱い(「n\gt m\Leftrightarrow n\gt m+\frac{1}{2}」的な);(2)離散特称命題(整数間距離1);(3)意地悪な独立小問、ガウス記号は切り捨ての記号、一般化(有限小数有理数)、√と有理数無理数。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量BC

発想力C

総合難易度C

 恐らくこの年1番難しかった問題です。

 (1)は整数問題に於ける絶対値1未満の小数の取り扱いがポイントになっています。俺は初め「繰り上げが起きる場合は面倒なのでは?」とか思ったらしく、以下の解答ではその名残の場合分けが見られますが、この場合分けは必要無いです。直すの面倒臭いんでそのままにします。ごめんなさい。

 (2)は東大名物、離散特称命題の証明です。色々なテクニックが在りますが、今回は整数間距離1、つまり「差が1以上の2数の間には必ず整数が含まれるでしょ?」です。まあ当たり前なんでその場で思い付いた人も多いでしょうが、ちゃんと離散特称の証明テクの1つとして頭に入れておくべきでしょう。

 (3)がかなりいやらしく、結論から言えば(1),(2)とは何の関わりも無い独立小問です。ガウス記号は切り捨ての記号なので、つまり本問は「平方数以外で小数部分が有限小数になる整数なんて無いでしょ」って事になります。更に「有限小数有理数」ってのも、技術的には「一般化」に相当しますが、これもかなり厳しい。これくらい翻訳出来れば、まあ直接示せそうだと判断が付くでしょうが、それでもかなり発想寄りな問題だと思います。これは試験場では出来なくても仕方が無いでしょう。

 色々な技術を含んでいて学習効果は高いと思われるので、解答を載せておきます。

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6:三次元求積(回転体だけど回転体と判り難い、断面考察(最大距離のみに注目、素朴に動かず))、通過領域(素朴に動かし境界の軌跡に帰着)、多変量の取り扱い(「動きを分割する」)。目標解答時間30分。

テクニックC

記述量B

発想力C

総合難易度C

 様々な技術を必要とする、やや難の三次元求積です。俺は初めパズル感覚で何も考えずにやって解けてしまったので、そんなに難しい問題だと思わなかったのですが、冷静に分析するとそんなに易問ではないですね。頭が冴えていない日ならちゃんと解法選択をしないと解けなかったと思います。

 断面を考察しないといけないですが、先ずは(空間の)通過領域の問題だと捉えます。その後は、素朴に動かしてみる事で:

・動きを縦方向と回転の2つに分割する;

・境界のみを考えれば良い,

辺りの事を特定します。この辺りで「回転体と言っていないけど回転体なタイプ」だと気付くでしょう(一応言っておくと、回転体と言われていない立体が回転体だと捉えられないかを疑うのは、体積の問題に於ける鉄則の1つな気がします)。ここ迄考察が進めば、記述量自体はそこ迄多くはないです。

 これも試験場だと中々厳しかったかもですねえ。

 

 

 東大としてはやや易しめの年だったとは思いますが、3以外はそれなりのポイントを含んでいますし、特に後半3つは決して易しくはないと思います。確か当時、ツイッターやらで「今年の東大簡単過ぎw普通に全部解けたわw」とかほざき散らしているチンカスファックが溢れていた記憶が有りますが、そう云う連中は試験場の緊張の中、採点者に見せられる答案を本当に時間内に全部書き上げられるか如何か、胸に手を当ててよく考えてみるべきです。これを本当に時間内に満点取れるのなら、数学で差を付けまくって余裕で東大生になれた筈ですよ。