予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

大学数学科での数学。

 大学、特に数学科で学ぶ数学について、しばしば「高校数学と全然違う。」とか「高校迄得意だったのに数学科に入ってから全く出来なくなった!」等と云う話を見聞きしますが、肝心の「実際に如何違うのか?」とか、或いは「如何云う人が落ちこぼれるのか?」と云った具体的で為になる話は余り聞かないので、これ等の疑問に対する俺なりの回答的なものを書いてみようかと思います。
 
 
 実数、座標平面、整数等々、高校数学でも慣れ親しまれているこれ等の対象は、立ち返って考えてみればどれも「何かものの集まり」即ち高校の数Ⅰでも学ぶ「集合」です。高校数学で集合と言えば、「何かセンターⅠAで必要条件だとか十分条件と一緒に出てくるだけのやつ」程度の認識の方も少なくないかもですが、先に述べた通り、思えば数学で扱う対象はどれもこの集合である訳で、従って大学数学科では先ず、この集合こそを全ての数学の基礎と位置付けます。
 さて、では高校数学の復習も兼ねて「集合」について少し補足します。集合を表記しようとしたら、例えば偶数全体の集合について、大きく次の2通りが在りました。
 \{\,\ldots,4,-2,0,2,4,6,\ldots\,\}
 \{\, m\in\mathbb{Z} ~|~ \mbox{ある整数kが存在して、}m=2k\mbox{と表される}\,\}
見ての通り、前者はもう兎に角全部並べる感じで(無限個だから並べ切れてないけど)、後者は該当するものを論理的に述べる方法です。当然、視覚的に分かり易いのは前者です。ですが、じゃあ数学って学問をする上でこの表記は誤解の余地の無い厳密なものか?と聞かれれば、これは一寸微妙です(まあ偶数全体程度なら誤解の余地も糞っ垂れもあんま無いですが、もっと複雑になればこの方法にいずれは限界が生じる事は、自然に了解されると思います)。一方で後者は、言われて一瞬「は?」とはなるかもですが、確り読んで理解出来れば、その後誤解の余地は一切無い筈です。
 この様に集合を記述する上では、その集合を誤解の余地無く記述する為の言葉として「論理」が不可欠な訳です。従って数学科の数学では先ず、全ての数学の土台となる「集合」と、それを記述する言葉である「論理」を学ぶ事になります。具体的には、高校数学でもお馴染みの「かつ」「または」「⇒(ならば)」とか、或いはこのブログでも時々使われる「∀(全ての)」「∃(存在する)」とかを、組み合わせが多少複雑になっても確りと理解出来る様に練習し、それを使って集合を記述する勉強をしていく訳です。
 この時点でもう、二次函数の最大値最小値を求めたりだとか、或いは加法定理を使って三角函数を弄ったり、みたいな数学とは少し毛色が違いそうだ、ってのが判ると思います。
 
 さて先程、集合の例の1つとして、「実数全体」を挙げましたが、これは当然、単に「集合」ってだけではなく、数学をする上で中心的な興味の対象となる、以下の様な性質を持っています。
・「1+1=2,2×3=6」即ち足し算掛け算と云った「2つのものから新しいものを作る規則」
・「2は4よりも1に近い(2と1の距離1>4と1の距離3)」と云った「遠近感覚」
・「区間[2,5]の長さは3」と云った「大きさを測る方法」
ですが、これ等の性質は勿論、実数だけが持っているものではありません。
多項式全体の集合も「(x+1)+(x^2+1)=x^2+x+2(足し算),(x-1)(x+1)=x^2-1(掛け算)」の様に「2つのものから新しいものを作る規則」を持っている。
・座標平面も「(1,1)と(2,2)の距離は√2」「(0,0), (1,0), (1,1), (0,1)を頂点とする正方形の面積は1」の様に「遠近感覚」「大きさを測る方法」を持っている。
 この様に、一見別物の様に見えるのに特定の性質を共有している集合、と云うのは、探してみると案外多いです。ってな訳で、例えば初めの「2つのものから新しいものを作る規則」なら、単に実数とか多項式とかで別々に学ぶのではなく、これ等を「2つのものから新しいものを作る規則を持つ集合」と抽象化して、纏めてその性質を調べよう、と云う考えが湧いてくる訳です。
 従って、集合論を学んだ後は、単に集合ってだけではなく、特に「数学の興味の対象となる様な性質を持つもの」を学んでいく事になります。即ち大学の数学では「集合+特定の構造」と云う見方をするんです。因みに、先の例は各々、
・「2つのものから新しいものを作る規則」は専門用語で「二項演算」と呼ばれ、これを中心に学ぶ分野を「代数」と呼ぶ。
・「遠近感覚」は専門用語で「位相構造」と呼ばれ、これを中心に学ぶ分野を「幾何」と呼ぶ。
・「大きさを測る方法」は専門用語で「測度」と呼ばれ、これを中心に学ぶ分野を「解析」と呼ぶ。
となっています。
 そして、これ等の「二項演算」「位相構造」「測度」を数学の対象としてきちんと記述するのにもまた、先に述べた集合と論理の言葉が用いられるのです。
 
 以上から推察される様に、教科書を開いて先ず書かれている定義が、「放物線」とか「三角比」とか「数列」の様に、ある意味具体的で身近な対象だった高校数学に比して、集合と論理で記述される大学の数学ではかなり「抽象的」なのが、高校以前の数学と大学以降の数学の大きな違いでしょうか。
 最近ではこの「抽象化」に対してあの手この手を尽くして説明を試みている大学数学の教科書も多いですが、如何にもこの抽象論に対して致命的な抵抗を持っている人が(高校迄の数学の出来とほぼ関係無く?)結構な数いる様で、その様な人が数学科に入ってしまうと、冒頭で述べた「高校迄得意だったのに数学科に入ってから全く出来なくなった!」みたいな不幸の始まりです。
 
 では若し数学科を目指そうと思うのなら、自分がこれ等の抽象論に対して適性が有るか如何か?ってのを事前に判断しておくべきだと思うのですが、それには矢張り、実際にその手の抽象論を1度学んでみて判断するより無いと思います。その為に個人的に勉強してみると良いかも、って分野を2つ挙げておきます。
 
 理系の学部1年ならどの学部でも同じ名前の講義を受けると思いますが、数学系とその他の学部では学ぶ内容が大きく異なる可能性が有るのに注意です。数学科では必ず「線型空間」(或いは「ベクトル空間」)と云うものを線型代数で学ぶのですが、これこそ先に述べた「代数」の最も有名な例の1つです。なのでここでの目的に沿うには、この「線型空間」が確りと扱われている数学科向けの線型代数の本を読む必要があります。
 他にも「計量線型空間」と云う「線型空間」に更に+αの構造を付加したものも数学科向けの線型代数では必ず扱われますが、この「計量」ってのも「位相構造」や「測度」と関係の深い抽象的な対象の1つなので、ここ迄読めると尚良いです。
 じゃあ具体的にどんな本が良いかって話は、僕自身がブログで文章化する程、つまり高校数学の参考書程には把握出来ていないので、一寸控えます。若し興味が有る方が見てくれているのなら、コメント等でコンタクトを取って下さい。ただ、1つ言っておくなら、何か高校数学の参考書的なのりの「わかりやすい!」「単位が取れる!」みたいな本は、他学部向けでこの用途には使えないものが多いと思います。
 
2、代数(を使った初等整数論)
 名前の通り、先に紹介した代数です。普通勉強するのは大学2,3年次なのですが、代数、幾何、解析の中で唯一、予備知識無でも勉強に取り掛かれる分野です。
 後、単に代数ではなく、これを利用して初等整数論(高校数学の整数問題の延長だと思って良い)を勉強しよう、って本も在ったりして、そっちは更に学んだ知識がそのまま大学入試の整数問題に使えたりもするので、何かそう云う現金な意味合いでもお勧めです(線型代数は多分、直接入試の役に立つ事は殆ど無い)。但し、範囲外の高度な知識を学ぶと、いざ入試問題を解く際に下手にその知識を使う事に拘って泥沼にはまるって人が多分少なくないので、そこは要注意です。飽く迄、解法の選択肢が1つ増えたってだけで、素朴な知識も含めた平時の頭の使い方を忘れてはいけません。
 後、初等整数論、みたいな名前の本でも、ここで目的とする代数の知識を使っていない本も多いので、注意して下さい(てかその方が普通?)。まあ何にしろこれも興味が有ったらコメントとかして下さい。
 
 これ以外なら、先にも述べた通り先ずはそもそもの集合の勉強を確りするのも良いかも知れませんが、高校の集合程度でも先の2分野は触り程度なら十分勉強出来るのと、何より集合だけ出来ても大学数学科の数学への適性の有無は判断出来ないんじゃないか、と個人的に思うので、以上2つをお勧めとしました。やはり数学科の数学と言ったら、先に赤文字で書いた通り「集合+特定の構造」だと思います。
 後、ひょっとしたら解析と聞いて「1年で習う微積は違うの?」と思う方がおられるかもですが、学部1年で習う微積は正直、高校数学の延長に過ぎないので(まあεδ論法とか云う曲者はいますが、これは数学特有の抽象論って感じではない)、この「数学科適正検査」の役割は果たせないと思います。
 後は「何を以てこれ等の概念への適性が有ると判断するか?」の基準について、これは正直、何か統計を取ったって訳でも何でもないので、僕の完全なる主観でしかないのですが、例えば本で線型空間の定義とその基本的な性質を示している数ページについて、別に読んで直ぐに理解出来る必要は全く無くて(てかそんな人がいたら、その人は少なくとも学部の数学に対してはかなり適性が高いと思います)、そこだけ読んで解らないのなら、例を弄ったり取り敢えず演習問題の解答を読んでみたりとか、或いは他の本やらネットやらで別の説明も見てみたりなんてしながら、何日か掛けてぼんやりイメージが掴めた、位で全然良い線行ってると思います。何なら初めは1ヶ月とか掛かっても全然駄目ではないと思います。僕の某先輩(超優秀)が言っていたのですが、「大学の数学は数週間で理解出来る程度の事なら“簡単”な方。」との事です。只まあ、そうこうしても何ヵ月も何を言っているのか全く解らない、みたいな状況のままってんなら、残念ながら数学の才能は無いのかも知れません。こればっかは向き不向きの問題なので仕方無いと思います。
 最後に、これ迄「高校数学と違う。」って事ばかりを強調してきましたが、じゃあ高校数学で培った力は何の役にも立たないのかと言われれば、少なくとも自分はそんな事は無いと思っていて、と言うのも、確かに習得しなきゃいけない概念は高校数学と大分違って抽象的なのですが、それ等の知識を無事修得出来たとして、じゃあ実際に具体的な問題を解こうとすると、自分の場合はブログで入試問題相手にやっている様な「解法選択」を普通にしています(つっても当然、大学で学んだ分、テクニックはブログに書いているそれよりもずっと増えていますが)。まあこれで学部の間はずっと成績良かったんで、多分嘘は言っていないと思います(但し、僕は「数学書や論文の文章に有るギャップを埋める力」が弱いので、今は落ちこぼれてしまいましたが…)。
 
 
 まあこんな感じですかね。確かに大学数学科で学ぶ数学は高校迄の数学とは一寸異質な難しさが有って、駄目な人は駄目かもですが、数学好きなら今述べた様に一寸先の事を覗いてみて、それでいけそうなら(少なくともそれなりの成績取って普通に卒業するだけなら)何の問題も無いと思います。
 何か高校の数学教師とかに限って、過度に数学科への進学の不安を煽る様な発言を学生に吹き込むのがいるんですよね。高校の数学教師って大概、大学の数学は落ちこぼれなんで、変な奴の話は無視して、先の様に自分で判断した方が賢明です(当然俺なんかよりずっと優秀な先生もいますよ!)。ほんと、教員志望の奴って「は?お前が数学で金貰うつもりなの?」みたいなチンカスファック野郎がとても多いです。あんなのに若い芽を摘まれたら堪ったもんではない。
 
 まあでも1番の害悪は、ブログでぐちぐち他人様の悪口を言ってるだけの26歳無職童貞の俺だわ(糞