予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2015東大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2015/3/7に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い加筆、修正し転載したものです。

 

難易度:標準

昨年比:昨年並

 

1:通過領域(逆像法)。目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 東大の通過領域なんで一瞬身構えてしまいますが、前年の6と違い極平凡です。まあaで整理して逆像法(逆手流)で良いでしょう。2乗の係数に文字が入っていてこいつが0か否かで場合分けが生じますが、大した事は無いです。

 本問は是非完答したい。

 

2:確率(n、漸化式(最初の一手で場合分け or「すべてのものを区別せよ」))、回数の飽和。目標解答時間35分。

テクニックCD

記述量B

発想力CD

総合難易度CD

 これは難しい!取り敢えず確率の解法選択については2015京大6(https://avgdr60221367.hatenablog.com/entry/2019/05/18/200323)を参照してもらうとして、(1)(2)共漸化式以外だと全く方針が立たないので求める確率をp_nとして漸化式です(汗。

 漸化式の立て方について、最初の一手が1, 2, 3か4, 5, 6かで場合分けすれば漸化式が立ちそうになりますが、それだけでは未だ足りません。と言うのも、4, 5, 6の方は後n-1回振ってn-1個後がAになればそれで良いのでp_{n-1}が使えますが、1, 2, 3の方は後n-1回振ってn-2個後がAにならないといけないので、振る回数と何個後かが一致しておらずそのままではp_{n-1}p_{n-2}が使えないのです。ここで少し考えると、サイコロをn-2回振ったら後ろn-2個は絶対に決まるので、n-1回目が如何なろうが如何でも良く、つまりp_{n-2}が使え、これで晴れて漸化式が立ちました。自分はこの様に「回数的に後は如何なっても良いor〇〇しか駄目」みたいな現象を「回数の飽和」と勝手に呼んでいるのですが、同じ様な考えをする問題を2006京大後期3以外に知りません。従って確率を考える上での定石と言うのはややはばかられるのですが、でもこれを試験場で自力で思い付けと言うのは中々に難しいと思います。

 一方、予備校の解答速報や過去問集の解答ではよく「AAをA{}_1A{}_2と区別する」って解答が見られます。これ自体は確率での定石の1つ「全てのものを区別せよ」なので別に良いのですが、個人的に問題だと思うのはその後の漸化式の立式です。と言うのも、p_nとは飽く迄「n回振った後、n番目がAである確率」ですが、それ等の解答では振った回数について一切考慮されていない様に俺には見えるからです。まあそれ等の解答を書かれている大層賢い予備校の先生閣下方にとってはそれで良いのでしょうが、頭の悪い俺は如何してもそこが気になってしまうので、最初の解答と合わせて、そこのところを正当化した略解を載せておきます。

※略解(画像じゃなくてすまんこ):2015東大2.pdf - Google ドライブ

 

3:微積分(数Ⅲ)、解↔交点の言換、文字定数分離、求積(雑魚)。目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 (1)はもうお馴染み、「文字定数は分離せよ。」ですね(正確には、分離に工夫がいる場合も多いですが)。但し、ヒントの極限の形を作ろうとして1/a=x^p/\log xにすると、分母が0になる場合があってうざいので、結局aは普通に分離して、ヒントは逆数で見た方が良いです。何故この形でヒント出したのでしょうか、他に模範解答が在るのでしょうか。俺は最初、1/aで分離して計算がウザくなって1人部屋で発狂してました。

 (2)は只の求積ですね。まぁ\log積分なんで部分積分な訳ですが、まさか出来なかった人は居ないでしょう。

 (3)は殆どオマケです。

 本問は完答必須ですねえ。

 

4:(1)等式の証明(与えられた条件式の利用);(2)適切な式変形&置き換え(欲しい形を無理矢理作る)、誘導「結果の利用」;(3)離散全称命題(帰納法(二段仮定))、誘導「結果の利用」。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 何かフィボナッチな問題ですねえ。

 (1)ですが、考える式をa_nとでもして、与えられたp_nに関する漸化式を利用して無理矢理a_{n-1}に持っていくだけです。

 (2)は考察する形を無理矢理作る為にp_{n+1}の定義式からp_{n-1}を引くと、(1)の形が出てきて勝手に解けます。まあ一応、誘導「結果の利用」でしょうか。

 (3)は離散全称命題、つまり任意の自然数nに対する命題の証明ですが、まあ今回帰納法なのは良いでしょう。但し、漸化式が三項間なので帰納法は二段仮定になります。

 最初も言った通り、多分フィボナッチ数列を背景に作られた問題でしょうが、如何関連しているのか俺には判りませんし、本問を解くだけなら判る必要も在りません。(1)(2)は行き当たりばったりに式を弄るだけでも解けてしまいそうなのが、試験問題としては嫌ですね。

 

5:コンビネイションの定義、実験、因数2の数え上げ。目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量AB

発想力BC

総合難易度BC

 気付くかどうか、それだけの問題です。何に気付くか、と云う話ですが、先ずは近しい値で実験をしてみると、いくらやっても分子の2が上手い具合に分母に打ち消されてしまう。何が原因か考えると、mが小さい内は分母分子で2の倍数、4の倍数、8の倍数…の数が等しい事と判り、これ等に注目すれば良いと判ります。でもここで気を付けなければいけないのが、例えば4の倍数なら、只の4の倍数ではなく、4の倍数で、且つ8の倍数ではないものの数に注目する必要が在る事です。分母はm!ですから、こう云う人達は小さい順に登場してくれますが、分子はそうでない、その差が初めて生じる部分を見極める事が本問の要求です。実際に書き並べてみると、

2014=2×1007で、2の倍数だが4の倍数ではない。

2012=4×503で、4の倍数だが8の倍数ではない。

2008=8×251で、8の倍数だが16の倍数ではない。

2000=16×125で、16の倍数だが32の倍数ではない。

1984=32×62で、こいつは32の倍数で、しかも64の倍数でもあります。

つまり、分子に1984が登場した瞬間、m=32が答です。なんで2010とかを考えなくて良いのかは説明不要ですよね。

 本問、前のブログでは「勉強不足でも閃きだけで解けてしまう」って事で結構ぼろ糞に言っていたのですが、まあでも東大名物のコンビネイションの定義式も聞いているし、実験も大学入試のお約束だし、最近はそこ迄悪い問題ではない気がしています。でもやっぱ個人的にあんま好きな問題ではないですねえ。

 

6:(1)定積分込の不等式の証明(与えられた特別な不等式の利用、積分区間で評価(定数化))、偶函数;(2)定積分込の極限(部分積分→挟撃)、置換積分(区間調整)、誘導「結果の利用」(挟み打つ不等式を(1)の不等式から作製)、東大名物式処理中に適切な式変形&置き換えしないと泥沼(定積分の極限→式処理中に部分積分)。目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量B

発想力C

総合難易度C

 最後は数Ⅲに関する様々な技術を要求する、大取に相応しいやや難の良問です。

 (1)は与えられたfに関する式を利用し、fの方を積分区間で定数化するだけです。途中、区間調整の為の置換積分とかが必要ですが、東大受験生なら問題は無かったでしょう。

 (2)がやや難です。積分にlimが付いている訳ですが、基本的にlimと∫の交換は大学生になる迄ご法度です(当然、いつでも出来る訳ではありません)ので、出来る事は2つです:

積分計算を(ある程度)実行;

②挟撃。

本問はこの定石を両方使う必要が在ります。頭の切れる方ならhがgの導関数になっていることが直ぐに見抜けたでしょうが、積分計算を実行する時点で部分積分以外の選択肢は在りませんから、実際に手を動かしてから()の形になっている事に気付いても全然問題は在りません。後は()の不等式を使ってあげるだけです。

 …とまぁ、あたかも余裕で出来た様なコメントをしましたが、実は俺は(2)で誘導の使い方を間違えまして、正答に辿り着いた時には時間オーバーでした。やっぱ東大数学を全部解くのは家でやっていても中々難しいです。因みにどう間違えたかと云う話ですが、先ず初めに小問について、小問に分かれている問題の前の小問は具体的に:

①誘導「結果の利用」;

②誘導「方針の利用」;

③独立小問、

の孰れかですが、東大だと③は考えにくい(勿論、忘れて良いと云う訳ではないですよ)。そして、本問は①であった訳ですが、俺は初め②だと思って、(1)の様に被積分函数積分区間内で評価して自分で新しい不等式を立てて各々の極限から挟み撃とうとしたのですが、どうも評価が荒かった様で左右で値が異なってしまい撃沈しました。それで方針を①の方にして解いた訳ですが、誤答の方の計算で時間を食ってしまい試験時間オーバーでした。まあでも、時間内に解けていない分際で偉そうな感じになりますが、こうやって方針を間違えた時に直ぐに他の方針を採用して立て直す力も大切です。

 考察中に適切な式変形(今回は部分積分)を入れないと泥沼になるのが、如何にも東大らしい問題です。(2)は東大受験生でも難しかったかも知れませんね。

 

 

 さて、全体的な難易度について、東大入試としては極標準か、或いは少し易しいくらいだと思います。1,3は東大入試としては明らかな易問ですし、4も適当に弄ってれば出来そうですしね。合格ラインはここから更に1題分の4完は必要だったと思われます。

 セット全体の傾向について、難しい3問(2,5,6)がどれもポイントさえ突破すれば記述量は少なくて済み、東大と言うよりは京大っぽい問題です。残りの易しい3つも記述量はそれ程多くなく、この年は東大らしい重厚さは無かった気がします。