予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2021東工大。

 無茶振りは無いがストレートに難しい。

難易度:標準(飽く迄「東工大としては」)

昨年比:難化

※「ブログの今後について。」で述べた通り、必ずしも「全ての問題に真面目に解答を付ける」という事はしていません。勿論、全部自力で解ける事は確認しています。

 

1:(1)場合の数;(2)不等式の証明(粗く評価)、誘導「結果の利用」。目標解答時間20分。

テクニックB

記述量AB

発想力BC

総合難易度B

 面白い問題ですが、難しくはありません。

 (1)は良いでしょう。各桁を9以外の9通りから選ぶだけです。但し、最高次だけは0は駄目なんで8通りです。

 (2)は不等式の証明です。(1)から足される項の数は判っていますが、当然、そのまま足す事は出来ません。なので如何するかと言うと、(*)を満たすnについて、大胆な不等式評価

b_n\leq\frac{1}{10^{k-1}}

を行います(kは空気読んで)。普通に考えたら如何考えても収束しなそうな評価ですが、如何やら(1)で項がかなり減っていたみたいで、指数の力により収束し、しかも丁度80です。不等式の証明問題で「粗く評価」は定石ですが、評価の仕方が大胆過ぎてやや発想力重視な気がします。因みに、自然数の逆数和\sum_{n\in\mathbb{N}}\frac{1}{n}って発散するんですが、その証明は、

1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\frac{1}{7}+\frac{1}{8}+\frac{1}{9}+\cdots

\gt1+\frac{1}{2}+\frac{1}{4}+\frac{1}{4}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{8}+\frac{1}{16}+\cdots

=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}+\cdots

と、本問同様「端に統一する」という粗い評価によって成されます。これを知っていると、発想し易かったかも?

 (2)は絶対取れとは言えない、微妙な難易度です。

 

2:二次曲線と二次方程式の糞怠算数。目標解答時間30分。

テクニックAB

記述量C

発想力AB

総合難易度B

 東工大(の悪い)名物、計算だけの算数です。東工大のこういう問題を出してしまうところ、俺は嫌いです。

 試験場で合わせるのは大変だとは思いますが、これは解けないといけない。

 

3:(1)コンビネーションの定義、nとn+1は互素;(2)離散全称命題の証明(数学的帰納法);(3)ディオファントス方程式(解を持つとして特称条件に帰着→''離散中間値の定理'')、誘導「結果の利用」、素因数、1との大小比較。目標解答時間40分。

テクニックCD

記述量BC

発想力CD

総合難易度CD

 今年コンビネーション多いな。俺は好きですが、難易度的には受験生泣かせでしょう。

 (1)(2)は良いでしょう。コンビネーションは帰納法と相性が良いってのは今年の東大4でも指摘しました。因みに(1)は「a_nは整数列である」ってのを保証する為の設問であり、誘導ではありません(かと言って、a_nが整数列である事、この後別に使う訳ではないのだけどね)。

 問題なのは(3)です。先ずは(2)を誘導と見て、山勘で「まあn\geq4は解無いんでしょ」と予想出来るとやり易いです(やらなくても後から気付けるけど)。今年の九大5に近いですね。って事でn\geq4の場合に解(n,p)が在ると仮定しますが、(2)を頭の片隅に置きつつ{}_{2n}\text{C}_nの分子を並べたものを睨めっこすると、分子n+3, n+4,\ldots,2n-1のどれかがpと一致している筈と判ります。整数問題で素因数に注目するのは常識ですね。また、(解の)存在を仮定したので、``離散変数の中間値の定理''的な発想にも気を回すべきです(2012の東大4に近いです)。このpで辺々割った後、更に各分数と1との大小を考える事で矛盾が出ます。1との大小比較も、離散変数絡みの問題や不等式絡みの問題では、常に意識しておくべき感覚です。今年の名大4(2)での処理とかも、元はこの考え方ですよね。

 (3)は中々難しいです(俺もかなり考えた)。(1)(2)だけで十分ですかね。(3)は好きなんで解答付けておきますね:2021東工大3(3)

 

4:(1)ベクトル(係数比較);(2)2変数の最大最小(数式化→``予選決勝法''→二次函数)、重心のベクトル、内積の定義;(3)連立方程式(二次式混入、二次式の処理(平方完成))、誘導「結果の利用」。目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力BC

総合難易度BC

 (1)は良いでしょう。|\vec a|=1とかに注意して係数を比較してやるだけです。F=-2(\vec a+\vec b+\vec c)\cdot(\vec a+\vec b+\vec c-3\vec d)です。

 (2)ですが、3\vec g:=\vec a+\vec b+\vec cと置いてやると、\vec gは(ABCが三角形を成す場合は)ABCの重心を表すベクトルになります。この事から、0\leq|\vec g|\leq1である事は(図形的に)認めて良いでしょう。その上でFを式処理しないといけないと意識していると、内積の定義と併せて次の変形が思い付く事も良いでしょう:

F=-2(3\vec g)\cdot(3\vec g-3\vec d)=-18(|\vec g|-(\cos \theta)|\vec d||\vec g|)=-18(|\vec g|^2-(\cos\theta)|\vec g|).

(※\thetaは空気読んで。)これで、|\vec g|を変数とする二次函数に帰着しました(\thetaも変数なんで、片文字を固定して所謂``予選決勝法''をした事になります)。

 (3)は、(2)のFが最大になるのが\theta=0, |\vec g|=1/2の時である事を踏まえ、方程式を立てて解くだけです。\vec a:=(x,y,z), \vec b:=(a,b,c)として:

・これ等が球面上の点を表すベクトルである事;

\theta=0である事;

\vec gが重心である事,

に注意し、連立方程式を解いていきます。しかしながら、そうすると

64x^2-112x+z^2+49=0\cdots

という2変数の式だけが残ってしまいます。一瞬「答は変数込みか?」とか思いますが。ここで★にもう少し二次式としての変形(つまり平方完成)をしてみると、

\Longleftrightarrow 64\left(x-\frac{7}{8}\right)^2+z^2=0

と綺麗に定数項が消え、x=7/8, z=0と判ります。成程、初めは「何でCの成分こんな糞汚えんだよ怠いな」と思っていましたが、答を一意にする為の調整だったんですね。上手です。

 上手な設定の下で1つの目的に向かって様々な知識を問う、とても良い問題だと思います。(3)の★の式変形だけ、少し手を動かすハードルが高めな気がします。

 

5:(1)「円の包含」と「円の中心からの距離と半径の大小関係」の言い換え;(2)「円の包含」と「円の中心からの距離と半径の大小関係」の言い換え、「文字定数は``工夫して''分離せよ」、二次式の処理(平方完成)、誘導「方針の利用」?;(3)求積(y軸回転体)。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量C

発想力C

総合難易度C

 これも4(3)同様、(2)で少し気の利いた考察が必要になります。

 (1)は良いでしょう。中心からの距離が常にa以上になれば良いだけです。この様に「円の領域への包含を、円の中心からの距離と半径の大小関係に注目して議論する」というのは、大学で数学をやっている人間は「開集合(「境界を含まない集合」を表す専門用語)」の議論で慣れているんですが(知ってる人向けに話すと、イプシロンボールの議論ですね)、受験生にとっても常識かと言われたら、ちょいちょい微妙な気がします。``接する⇔重解''とかは勘弁してください。放物線の場合と違って、グラフの考察とかしても正当化出来ないでしょ?使うなって事です。

 (2)も(1)と同じ方針なのは良いと思うんですが、そうして立式していくと、

{}^\forall t\in\mathbb{R}, t^8-2at^6+(1+2a)t^4+(1-2a)t^2\geq 0

を満たすa\gt0の範囲が求めるものと判ります。「よっしゃ、t=0の場合は常に成り立つから。0\lt t^2=:Xとしてこいつで辺々割って文字定数分離だ!」と普通ならやるんですが、場合分けが煩雑な上に極値がとてもじゃないけど計算出来ねえ。仕方無いから、文字定数分離の直前のところから方針を考え直します。

{}^\forall X\gt0, X^3-2X^2+(1+2a)X+(1-2a)\geq0\cdots

なら良い訳ですが、ここで文字定数aをXごと分離すると場合分けが生じてうざいので、文字定数を工夫して分離して、

\Longleftrightarrow {}^\forall X\gt0, X(X^2-2X+1+2a)\geq 2a-1

ここで注目したいのが、左辺括弧内の二次式です。これに二次式の処理(つまり平方完成)をしてみると、(X-1)^2+aとなり、a,X\gt0に注意すれば、如何やら左辺は常に正みたいです。X\rightarrow+0の時は左辺は0に近付くんで、つまり☆の成立には2a-1\leq0であれば良いと判ります。「文字定数は``工夫して''分離せよ」に加え、4(3)の★の変形同様、再び二次式の平方完成がポイントだった訳ですね。よく考えたら、☆の変形に近い変形を(1)でもやっているので、ひょっとしたら東工大の先生は「方針の利用」のつもりで出題されたのかも知れません。まあでも、この見方は流石に無理が在る気がします。色々勉強出来る良い小問だとは思いますが、試験問題で解くのは大変でしょう。

 (3)はもう勘弁してください。円の半径の大きさで場合分けも生じますよね?怠過ぎ。いやまあでも数III勉強したかを問う問題としては悪くは無いと思います。少なくとも2よりか全然マシな問題。

 (2)は試験場では難しいでしょうねえ。でも、(2)が出来なくても(3)には取り組めるんで、被害は少なく済む気がします。

 

 

 絶対取らないといけないのは1(1),2,3(1)(2),4(1),5(3)ですかね。これだと未だギリ半分無いと思います。1(2),4(2),5(1)は、少し高度だけど東工大生なら食らい付けないと駄目だと思います。この3つの中から2つ押さえた6割前後くらいが合格者平均なんじゃないかと思います。1(2)の粗い評価、4(3)の★の変形、5(2)の「文字定数は``工夫して''分離せよ」の様に、今年は「思い切った方針選び」が明暗を分けた問題が多かった様に思います。が、普段から「詰まったら前に戻って解法選択のやり直し」を徹底していれば、そんな`に`難しい''って程ではないと思います。3(3)は中々難しいと思いますが、指摘した通り2021の東大4とかを経験していると、案外すんなり行けたかもです。``難問''って程ではない。トップ層なら十分、満点が狙えたんじゃないですかね?

 てか東工大も確率無え!まじで統計中心のカリキュラム改変が嫌なんですかね?

 後は東北大と北大ですね。明日から4日間研究集会なんで、また止まるか、或いは面倒臭くてやらないかもです(忙しいアピール研究してますアピール俺大好きアピール…)。

2021名大理系。

 前半2題が随分と易しく、一昨年迄の易化傾向時の難易度に戻りました。

難易度:やや易

昨年比:易化

※「ブログの今後について。」で述べた通り、必ずしも「全ての問題に真面目に解答を付ける」という事はしていません。勿論、全部自力で解ける事は確認しています。

 

1:二次方程式、求積(数IIの微積)、最大最小(二次函数)。目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量BC

発想力A

総合難易度AB

 長いですが、各小問はチャート式の例題に在るやつばかりです。特にコメントの必要は無いでしょう。

 

2:対数、大小比較、解と係数、誘導「結果の利用」。目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 (1)は底の変換公式です。

 (2)は大小比較です。\sqrt2とかの適当な近似値は使って良いと思います。

 (3)は解と係数の関係の学習直後の定期テスト問題です。後は(2)を使えば、実質「(負の数)×(正の数)=(負の数)」とかを聞いているだけです。まあ(1)から

\frac{1}{\alpha}+\frac{1}{\beta}+\frac{1}{\gamma}=\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha

である事も、ポイントっちゃあポイントですかね(誘導「結果の利用」)。

 

3:確率(該当パターン全調査、排反)。目標解答時間45分。

テクニックAB

記述量CD

発想力B

総合難易度BC

 いやこれは全パターンの確率計算すりゃ良いだろ。ひょっとしたら他に上手いやり方が在るのかもだけど、考えるのも面倒臭え。中々の計算量でしたが、4題で150分って試験時間と1,2が簡単だった事も考えると、妥当な方針だと思います。「どれか1つを等しい確率で選び…」って仮定が在るんで、次の数字を選ぶ確率は``現在地''だけで決まります。何度も使うんで、先に``現在地''毎に一覧表にでもしておくと便利だったと思います。11への到達方法は、``最短経路の場合の数''の問題での考え方なんかに近い気がします。他にも、例えば「p_{11}の計算で(a)で1を選んだ場合の確率の計算には、(a)で2を選んだ場合とかの結果が使える」「p_5は排反を考えれば良い」とか色々工夫が出来ます。前者は確率漸化式っぽいっちゃあぽい気がします。

 「全部調べろ」という方針を採れたか如何かが大きな勝負の分かれ目だったでしょう。他にも、排反や確率漸化式っぽい考え方でどんどん計算量が減らせるんで、悪い問題ではないと思います。

 

4:離散変数の総合問題;(1)(2)ガウス記号の処理;(3)ガウス記号の等式の証明、誘導「結果の利用」(前問の対偶を考える)、離散変数の不等式の取り扱い(0\leq m-n\lt {}^\exists r\lt 1\Rightarrow m=n);(4)漸化式(解く)、誘導「結果の利用」。目標解答時間40分。

テクニックBC

記述量BC

発想力C

総合難易度BC

 名大名物「離散変数系統の総合問題」です。名大はガウス記号、好きですね。

 (1)はまあ、頑張ってください。

 (2)はつまりa_n\geq[a_n]+1/2って事なんで、こいつを漸化式にぶち込んでやれば良いです。途中:

a-[a]aの小数部分;

[a]\leq a\lt[a]+1\Longleftrightarrow a-1\lt[a]\leq a

 を利用します(ガウス記号の問題を見た時点で頭に用意しておかないといけない知識)。

 (3)について、先ず1つ目の式は最初の漸化式と比較する事で、[a_n]=[a_n+1/2]が示されれば良いと判りますが、これは

a_n\gt a_{n+1}

\Longleftrightarrow a_n\gt3[a_n+1/2]-2a_n

\Longleftrightarrow a_n\gt[a_n+1/2]

\Longrightarrow[a_n]+1\gt[a_n+1/2]

\Longleftrightarrow(0\leq)[a_n+1/2]-[a_n]\lt1

となり、ガウス記号は整数である事から最後の不等式は[a_n]=[a_n+1/2]を意味する事から判ります。2つ目の式については(2)の対偶利用を考えましょう。a_n\lt a_{n+1}の否定はa_n\geq a_{n+1}ですが、これは当然、問題文の仮定a_n\gt a_{n+1}から従うので、(2)(の対偶)からa_n-[a_n]\lt1/2を得ます。即ちa_n\lt[a_n]+1/2であり、これを既に得たa_{n+1}=3[a_n]-2a_nに適用し

a_{n+1}\gt 3[a_n]-2([a_n]+1/2)=[a_n]-1

を得ます。従って、仮定a_n\gt a_{n+1}と合わせ、

[a_n]\geq[a_{n+1}]\geq[a_n]-1

となるため、[a_{n+1}]=[a_n]\text{ or }[a_n]-1が判り、前者を否定すれば良いと判ります。その為に、前者であると仮定してみましょう(背理法)。即ち、a_{n+1}\geq[a_{n+1}]=[a_n]です。すると、再び先の漸化式から

[a_n]\leq a_{n+1}=3[a_n]-2a_n\Longrightarrow a_n\leq[a_n]\Longleftrightarrow a_n=[a_n]

となります。しかしこれは

a_{n+1}=3[a_n]-2a_n=a_n

を導き、問題文の仮定であるa_n\gt a_{n+1}に矛盾します。

 (4)は良いでしょう。(3)から、1\leq i\leq k-1に対して

a_i

=3[a_{i-1}]-2a_{i-1}

=3([a_{i-2}]-1)-2a_{i-1}

=\cdots

=3([a_1]-(i-2))-2a_{i-1}

=-2a_{i-1}-3i+6

となり、この漸化式を解くだけです。

 (1)(2)はガウス記号の標準的な処理を行うだけなんで、是非取りたい。一方で(3)は、離散変数の定石と既出の条件を、色々と場面に合わせて理詰めに組み合わせないといけないんで、結構な難易度だと思います。(2)迄出来れば合格には十分かな?

 

 

 1,2,3(1)は絶対に解けないと駄目ですね。計算ミスを考慮しても、これで半分は確保です。これでまあ、最低限足を引っ張らない程度の得点率ですかね?3の後半や4(1)(2)から集めて、6割強くらいが合格者平均だと思います。4の後半は中々に難しいと思います。

 あー東工大やりたくねー。

2021阪大理系。

 すんません。友達んちで丸2日鍋してました。今日から再開します。

難易度:標準

昨年比:難化

※「ブログの今後について。」で述べた通り、阪大以降は必ずしも「全ての問題に真面目に解答を付ける」という事はしません。勿論、全部自力で解ける事は確認しています。

 

1:2変数の最大最小(条件から文字消去→微分)。目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 これは言われた通りにやれば解けます。まあでも量はちょいちょい怠いです。最大最小はルートの中だけ見れば良いです。

 

2:共通テストのベクトル。目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 「同一平面に在るから係数の和が1で係数を比較して…」ってやつです。

 これも量だけはまあまあうぜえ。

 

3:(1)不等式の証明(適切な式変形、図形量の比較と見る(積分と面積)、粗く評価);(2)不等式の証明(図形量の比較と見る(積分と面積));(3)極限計算(区分求積法、和分出来ないΣ達)、誘導「結果の利用」。目標解答時間35分。

テクニックC

記述量BC

発想力C

総合難易度C

 不等式評価を中心に数IIIの様々なテクニックが散りばめられた総合問題です。こいつぁは中々の難易度だ。

 (1)は不等式の証明です。お約束テクニックの1つ「図形量の比較と見る」なんですが、直ぐには適用出来ません。\log x-\log tの部分に注目し、こいつを\int_t^x\frac{ds}{s}と見ます。不等式評価時には「適切な式変形」を考える事は常識とした上で、一般にf(a)-f(b)の形を見たら:

1. 平均値の定理

2. \int_a^bf'(x)dxと見る,

の2つを「適切な式変形」として押さえておきましょう。今回は後者ですね。更に積分を面積と見て「図形量の比較と見る」に持ち込むのも定石です。ここ迄くれば、本問は\int_t^x\frac{ds}{s}を台形で近似している問題であると判るでしょう。後、条件のt\geq 1を用いて、粗く評価する必要も在ります。

 (2)は(1)を辺々(xで)定積分するのは良いでしょう。(1)同様、再び定積分を面積と見るんですが、今度は不等式に\intがいるんで、この発想も容易でしょう。

 (3)が中々の曲者です。k/nから区分求積を考えるのは良いでしょうが、``1/n''がいなくて困っちゃいます。ですがここで注目したいのが」、「pn」の「n」の部分です。つまり、

a_n-pn=n\left(\frac{1}{n}\sum_0^{n-1}\log\left(1+\frac{k}{n}\right)-p\right)

であり、こいつが収束するには\lim_{n\rightarrow\infty}\frac{1}{n}a_n=pが必要で、区分求積の形になったと同時にpも求まりました。問題なのはqの方で、こいつは(2)の不等式を誘導と見て挟撃に持ち込む事を検討します。ですがその為には、先ずは(2)を(3)に使える形に見直す必要が在ります。ここで更に、\sum_0^{n-1}\log\left(1+\frac{k}{n}\right)を「y=\log(1+x)から定まる面積を短冊で近似したものの和」と見ます。所謂「和分出来ないΣ達」ってやつですね。すると段々と(2)の変形の仕方も判ってきて、つまりt=1+\frac{k}{n} (k=0,1,\ldots,n-1)として(この置き方はt\geq1の条件に抵触していない事にも注意)、これ等を足し合わせます。\int_0^{1/n}+\int_{1/n}^{2/n}+\cdots+\int_{(n-1)/n}^1=\int_0^1に注意すれば、a_nを含む不等式が得られるんで、後はqの形を作り出すだけです。

 (1)からそれなりに高度で、更に(3)はテクニックもその組み合わせ方もかなり難しいです。これは全滅しても仕方無いですかねえ。

 

4:(1)倍数性の考察(3の剰余類、mod 3);(2)ディオファントス方程式(積の形、倍数性に注目、正負に注目)、誘導「結果の利用」。目標解答時間30分。

テクニックB

記述量BC

発想力BC

総合難易度BC

 (1)ですが、積分は完全にこけおどしで、最初に計算したら後は2度と微積の処理は無いです。まあ「うわ整数なのに積分もあるどうしようもうぜんぜんわからないよお」とかなる馬鹿用の虫除けでしょう。計算し、辺々6を掛け、a-bで辺々割った後は、3c^2だけ分離し、先ずa,bに対して3の剰余類を考察する事でa\equiv b \mod 3を得ます。この結果を踏まえると、3c^2=(9\text{の倍数})となる事から、cが3の倍数である事が判ります。

 次に(2)ですが、これは

2a^2+5ab+b^2=(2a+b)(a+2b)

因数分解でしょう。積の形への分解を考えるのは、ディオファントス方程式の定石です。この意識さえ有れば見抜ける筈です。後は、こいつが=-3\cdot3600^2と負の数らしいので、a\lt bと併せてabの正負等の情報も得られます。更に、(1)(の解答)からa\equiv b\mod3も得られているので、更に絞り込む事が出来ます。にしても、3600とか怠いわもっと小さくしろよ。

 (1)は出来たいですが、本質的にはパターン問題とはいえ何か色々とイレギュラーな形してますから、微妙なラインですねえ。

 

5:(1)一意性込みの特称命題の証明(グラフの単調性と中間値の定理);(2)``接点T''の変種(二重接線(「傾き=傾き」且つ「値=値」))。目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力B

総合難易度BC

 (1)はパターン問題です。詳しくは今年の東大5(1)をご覧ください。

 (2)は問題文的には難問臭がしますが、やってみると割と標準的だと思います。x=tでの接線y-\sin t=\cos t(x-t)x=s (|s|\geq\frac{\pi}{2})でも接するとすると、

\cos t=\cos s且つ\cos t(x-t)+\sin t=\cos s(x-s)+\sin s

となり、前者からs=\pm t+2n\pi (n\in\mathbb{Z})が必要と判りますが、+t+2n\piの方は後者と矛盾する事から-t+2n\piと判り、これを後者にぶち込み変形するとt-\tan t=ntが得られます。上記議論が同値変形である事はほぼ明らかですが、問題文で「必要十分条件」と態々言っているんで、同値性の記述には少し気を払うべきでしょう。接線の問題で接点(s,\sin s)を置くのは、まあ``接点T''に近い技術ですね。今年の京大6(2)の易類題と言って良いと思います。

 (1)は必須ですが、(2)は微妙なラインですかねえ。

 

 

 さて、1,2,5(1)は取れなきゃ論外です。後は「微妙なライン」つったとこから小問1問分取って6割弱くらいで合格者平均くらいじゃないですか?易しいセットではないですが、これくらいが阪大の標準な気がします。

 てか、今年は阪大も確率無いですね。

2021東大理系。

 本当、書く事が多過ぎて腱鞘炎になりそうです。

難易度:標準~やや難(飽く迄「東大としては」)

昨年比:同程度~微易化

 

1:(1)二次方程式の解の配置;(2)通過領域(2変数、線型計画法的)。目標解答時間40分。

テクニックC

記述量C

発想力C

総合難易度C

 初っ端から最悪な難易度っすわ💩

 (1)は良いでしょう。二次次方程式の解の配置です。チャート式の例題に在るやつですね。

 問題は(2)です。放物線の通過領域の問題ですが、変数が2つ在るんでいつもの変数の存在条件に帰着させるのが中々出来ません(1文字ずつ処理して「放物線の通過領域の通過領域を求める」みたいにすれば恐らく出来るけど、処理量が最悪になる(なった))。では如何するかと言うと、(1)の領域をD、求める領域をEとすれば、

(x,y)\in E\Longleftrightarrow {}^\exists (a,b)\in D \text{ s.t. } b=-xa+y-x^2

と見て、ab平面でDとb=-xa+y-x^2の交点の存在に問題を言い換えます。ものとしては違いますが、所謂「線型計画法」の時と同じ考えです。が、線型計画法のあの発想を他の問題でも使える様に整理出来ている学生がどれだけいる事か。中々に難しいと思います。そして、答の絵も描き難いわ糞野郎!

 いや俺は初め先の「通過領域の通過領域」の方針で行ってめっちゃ時間使ってしまいました。これを試験場で完答出来たら大したもんですよ。

 

2:複素平面での存在領域(実平面に帰着、ベクトルの終点の存在範囲(但し係数が3変数)、素朴に動かす)。目標解答時間40分。

テクニックBC

記述量C

発想力C

総合難易度C

 これも最悪ですよ💩

 (1)は良いでしょう。連立方程式です。ただまあ、文字が多くて計算には細心の注意が必要です(必要でした)。

 これも問題は(2)です。(1)から〇+〇iの形にして、ベクトルの終点の存在範囲に帰着させるのは良いんですが、係数(〇のとこ)に変数がα, β, γの3ついます。じゃあ如何するかって話ですが今度は再度α, β, γについて整理し直し、素朴にパラメータを動かして領域を追跡します。領域の問題で素朴に動かすの、東大では多いです(去年の2とか18年の3とか)。そしてこいつも兎に角、領域が描き難い!

 (1)よりは気持ちマシな気がしますが、こいつも試験場で解くのは大変だと思います。これでも十分難しいですが、欲を言えば(1)無でも解ける様になりたい。

 

3:(1)一意性込みの特称命題の証明(「解↔交点」の言換 or 因数分解);積分計算(教科書の例題レヴェルだが項が多くて計算量が多分やばい)。目標解答時間25分?

テクニックAB

記述量BC?

発想力A

総合難易度AB

 やっと解ける問題です。

 (1)はグラフの交点についての一意性込みの特称命題の証明です。グラフの交点を方程式の解にすり替えるのは良いでしょう。方程式を式変形すると、三次方程式に帰着します。今度はグラフの交点に再度すり替え、三次函数のグラフを考えれば良いです。通常、この「一意性込みの特称命題の証明」はかなり高度なテーマなのですが、本問は三次函数なんで普通にグラフが書けておしまいです。ですが本問、実は考えている三次方程式が簡単に因数分解が出来てしまうので、普通に解けてしまいます(グラフ描いた後に気付いた)。いやこれは三次方程式が出てきた時点で気付かんといかんかったな💩

 (2)は教科書の例題レヴェルの積分計算です。ごめんなさい俺は見た瞬間に絶対に出来ると判ったので、もうやってないです。ただ、項が多いんで計算は大変だと思います。

 他の問題の難易度的に、本問を落とす訳にはいかないでしょう。

 

4:整数;(1)mod計算;(2)コンビネーションの定義、離散全称命題の解法選択(2変数、片文字に関する数学的帰納法帰納法の変数が有限で打ち止め);(3)誘導「結果の利用」「方針の利用」、コンビネーションの定義、離散全称命題の解法選択(2変数、片文字に関する数学的帰納法帰納法の変数が有限で打ち止め)、偶奇で場合分け、数学的帰納法アルゴリズムの改変(``2個飛ばし''の数学的帰納法);(4)誘導「結果の利用」。目標解答時間45分。

テクニックC

記述量CD

発想力CD

総合難易度CD

 東大はコンビネーションの定義に絡めた整数問題、好きですね。本問は俺も好きです。

 (1)は良いでしょう。こういう自分で文字を置かないといけない論証、意外と書けない受験生が多そうですが、未来の東大理系生にその心配は無用でしょう。

 (2)が結構難しいです。コンビネーションの隣に居る離散変数a, bに関する全称命題です。bに関する数学的帰納法で行くと上手く行くんですが、bは有限で打ち止めの変数なので、経験が無いと数学的帰納法を選ぶ事自体が難しかったかも知れません(フェルマーの小定理の証明とかでやりますよね)。コンビネーションって(整数の積)/(整数の積)なんで、数学的帰納法と相性が良い気がします。

 (3)は(1)の結果を利用して問題を少し言い換えた後は、基本的に(2)と同じ流れですが(「方針の利用」と言える)、「a-bが偶数」って条件からaやbの偶奇性を気にしないといけなくなるので、固定する方であるaの偶奇で場合分けをします。それに伴ってbも奇数(resp. 偶数)しか動かせなくなるので、帰納法アルゴリズムを2個飛ばしに変更します。(2)よりも更に難しくなっていますね。

 (4)は勿論、これ迄の結果を使う訳ですが、2回使います。まあでも、東大特有の誘導の使い方に悩まされる様なものではないです。ユークリッドの互除法を複数回使う時みたいなノリですね。

 1問に離散変数系の知識が盛り沢山の問題です。上で「俺は好き」とか言っておきながら、何と最下段の俺の初見時の解答は、(3)の「a-bが偶数」って条件の取り扱いがまずい事になっています。なので、そこを適切に直したものを貼っておきます:2021東大4.pdf - Google ドライブ

 

5:(1)一意性込みの特称命題の証明(「解↔交点の言換」、文字定数は分離せよ、中間値の定理とグラフの単調性);(2)導函数の符号と極値の関係。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力AB

総合難易度B

 「ザ・理系の標準問題」ですね。

 (1)は大問3(1)に引き続き「一意性込みの離散特称命題の証明」です。ですが本問の「中間値からのグラフの単調性に帰着」の流れは、どの問題集にも載っているパターン問題です。先ずは与えられた式を変形していくのですが、ここは天下の宝刀「文字定数は分離せよ」ですね。分離後の定数じゃない方のグラフを考察します。ここで、方程式の解の議論をグラフの交点の議論にすり替えています。そして、ここで最初に述べた中間値とグラフの単調性を適用します。

 (2)は良いでしょう。教科書に書かれている、導函数の符号と極値の関係を理解しているかを問うているだけです。但し、(1)で導函数の議論を他の函数の議論にすり替えたりしているので、ひょっとしたら混乱し得たかも知れません。

 他の問題の難易度的に、本問は落とせないです。

 

6:(1)多項式の係数比較;(2)誘導「結果の利用」、係数比較(厳密には多項式ではない);(3)多項式の式変形、誘導「結果の利用」、有理数を整数問題に帰着、ディオファントス方程式(積の形。これ自体は簡単だが色々入り乱れた中で出てくるので混乱するかも)、厳密な数学文章の記述力。目標解答時間45分。

テクニックCC

記述量CD

発想力C

総合難易度CD

 去年の6同様、「どうやって作ったんだよ?」と聞きたくなる問題です。

 (1)は良いでしょう。係数比較です。

 (2)は取り敢えず色々と手を動かす気になったかが、勝負の分かれ目になったんじゃないかと思います。「(1)の係数比較で使わなかったもの(c=qr)を取り敢えず使ってみる気になったか」ですね。(1)の結果も反映すると「(pの6次式)=0」って式が得られるんで、今度は「こいつと与えられた式を関連付ける気になれたか」です。でも「誘導(てかこれ迄に得られた情報)を意地でも使ってやろう」という意識が有れば、見抜けると思います。後はp^nの係数を調整し、f, gを特定します。(1)の係数比較と同じノリですが、こっちはpが定数との事なんで、厳密には多項式ではないですね。

 (3)はまあ誘導の利用なんですが、先ずはx^4+bx+cの2次式への因数分解が問題文の形のものだけ(を考えれば十分)である事にちゃんと言及しないといけないでしょう。次に、(1)(2)ではずっとp\neq0という仮定を付けてきたので、そうでない場合をちゃんと分けて確認する必要が在ります。他にも「(1)よりp,q,rが有理数であるにはpだけ有理数であれば十分」である事への言及や、十分性の確認(つまり「求めたaに対して本当に多項式因数分解するか」の確認)等、細かな議論を確りと詰める能力が必要とされます。こういうの、数学科の学生でもまともに出来る学生、殆どいないですよね(東大数理なら大丈夫なのかな?)。でも、物凄く大切な数学の基礎力だと思います。

 見事な誘導の中で厳密な数学文章の記述力を問う、とても良い問題だと思います。但し、試験場で制限時間付きでやらされんのはまじで勘弁です。

 

 

 相変わらず恐ろしい難易度です。取り敢えず試験のつもりで真面目に「試験用の解答」は作りましたが、もう怖いんで時間は真面目に計っていないです。時間内だと4完半くらいしか出来なかったんじゃないですかねえ。試験場だともっと酷いかも知れねえ💩

 さて、3は絶対に取らないと駄目です。5もなんですが、(2)みたいな基礎の理解は案外難しい?残りの1,2,4,6は(1)は確実に取れた筈ですが、それ以降はどれも中々に厳しい。今挙げたの全部取って半分弱くらいで、最低限のラインには達したんじゃないですかね?っでも流石に4つの内、どれか1つくらいは最後迄いきたいものです(その辺が合格者平均くらい?)。雑魚(大問3)がいるしどの問題も(1)は取り敢えず手が出るんで、まあ去年よりは少しは取り組み易かったのかも知れません。

 出題分野について、確率はもう数学じゃないって事なんですかね。

 1,2の領域系の議論や、4の全称命題の解法選択、そして6の同値性に注意を払った答案作り等、どれも「入試数学の掌握」でかなり良い対策が出来ると思います。掌握は良いぞ。

 一応、解いてる時に作った答案を載せておきます:2021東大理系。.pdf - Google ドライブ

2021九大理系。

 後半2題が上手です。誰が作ったんだろう?

難易度:標準~やや難

昨年比:やや難化

 

1:空間図形(平面の手法の真似、点と平面の距離公式)。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力AB

総合難易度B

 タイトルの通りです。(1)の内接球の半径は平面図形の内接円の半径の真似、(2)の切り取られる円の半径は平面座標で円が切り取る線分の長さを求める時の真似です。後者は「点と直線の距離の公式」が「点と平面の距離の公式」になります(今の課程だと教科書に載ってるんだよね?)。

 次元が増えた分計算量も増えるし、絵も描かなきゃなので、記述量はちょいちょいです。試験場では決して雑魚ではないでしょう。

 

2:(1)二次次方程式の解(判別式)、三角函数の式処理;(2)複素平面(素朴な考察)、三角関数の式処理;(3)複素平面(素朴な考察)、三角函数の式処理、変数の範囲に注意。目標解答時間25分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 二次方程式、三角函数複素平面と盛り沢山です。

 (1)は勿論、(判別式)<0ですが、この後の式処理を如何するかで結構処理量が変わってきます。(下に載せた)解答の通りに\tan\sin,\cosばらすと直ぐですが、俺は初め脳筋になって\tanに統一しようとしたせいでまあまあ時間を持っていかれました。

 (2)は中心が実軸上である事がポイントです。「図形問題は式処理をする前に先ず出来るだけ素朴に見よう」という習慣が有れば見抜けると思います。このタイプ、九大だと割と多い気がするのですが、類題を直ぐに思い付かない💩

 (3)も(2)同様、どの角が直角になり得るかを先ずは素朴に考察です。最終的にtanを含む二次方程式に帰着しますが、答えは0\lt\theta\lt\frac{\pi}{4}というパラメータの条件に注意です。

 これもテクニックも計算量も多く、決して雑魚ではない。

 

3:(1)全称条件(不等式)、領域、微分;(2)求積。目標解答時間25分。

テクニックBC

記述量C

発想力B

総合難易度BC

 理系向けドストレートといった感じの、やや難の総合問題です。

 (1)は「任意のtに対して不等式が成り立つ範囲を求めろ」系の問題です。二次方程式の最後の方にやや難の問題として載っているやつの類題ですね。ただ、2変数な上に式処理が数IIIの微分なので、中々難しいと思います。19の1とか12の3みたいに、難しい年の九大の微積は文字の多さで受験生を心を折りにくるんで、怖いですね(12は俺が折られた年です(笑))。

 (2)は回転体の体積、つまり只の積分計算ですが、今度は計算量が中々にえげつないです。

 前2題に増して試験場で取り組むには大変な問題だと思います。

 

4:独自設定下での複素数の式処理と色々な論証;(1)全称命題の証明;(2)全称条件の同値性(パラメータの存在にすり替え);(3)非存在性の証明、複素数(絶対値、複素数平面での素朴な考察)。目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量C

発想力C

総合難易度C

 「平均値の性質」という、正にそれっぽい定義を与えた独自設定下での、複素数を中心にした論証問題です。(3)が中々上手です。

 (1)は特称命題(つまり「存在する」)の証明です。指示通りに式変形をすれば普通に解ける問題なのですが、聞き方だけで多くの受験生が苦手としていそうな気がします(うちの数学科の学生もまあ苦手ですよね)。

 (2)は複素変数下での文字の条件を求めさせるやつです。19の5に近いですが、流石にあれ程難しくはないですね(雑魚でもないけど)。「線分\alpha\beta上」って条件を、実数のパラメータの存在条件に言い換えます(こことか正に19の5の類題ですね)。実数の話になったので、実部と虚部に分けて実数の議論に帰着する事が出来ます。ですが、答が何とb,cには条件が付きません。この辺の変に受験生を怖がらせにくるのも、正に九大理系数学です(だが良い問題)。

 (3)最後は「平均値の性質を持たない」つまり非存在性の証明ですね(「非存在性の証明」って、何か中高生向けのボカロの曲の歌詞に在りそう!俺もこういうの大好き!笑)。まあ在るとして背理法なのは良いでしょう。f'(\gamma)=7\gamma^6なんで、角度や絶対値について素朴に考察してあげれば良いですが、そこに至る迄に色々と複素数の式処理をしないといけないし、これも中々難しいんじゃないかと思います。てか(3)は諸々の議論やその設定がかなり上手な気がします。誰が作ったんですかね?

 18の5や19の5に続く、本格的な複素数の式処理と論証の問題です。九大数学で満点を狙いたい人は、この辺の解法整理をきちんとやっておくべきでしょう。トップ層以外にとっては、捨てるか捨てないか、かなり微妙なラインの問題だと思います(出来れば間違い無くかなり差を付けられる)。ところで、独自設定をしてくる問題は15年以上前とかだとよく出ていたのですが、2006の5を最後に息を潜めていました。懐かしいですねえ。

(※)因みにf'なんて思わせ振りな記号が使われていますが、この表記はちゃんと(大学以降の)数学的に適切なもので、「代数的な微分」と呼ばれるものです(まあ今回は\mathbb{C}上だから普通に複素微分でもあるけど)。以上「俺数学知ってるぜ」アピールでした。

 

5:(1)コンビネーションの定義式、不等式の証明(粗く評価);(2)ディオファントス方程式(不等式の利用、素因数考察)、誘導「結果の利用」。目標解答時間20分。

テクニックB

記述量AB

発想力BC

総合難易度B

 これは上手で解ければ気持ちが良い問題です。

 (1)はコンビネーションの定義の理解が必要です。但し、今回は\frac{n!}{k!(n-k)!}の方ではなく、場合の数で普通に計算する時の{}_5\text{C}_3=\frac{5\cdot4\cdot3}{3\cdot2\cdot1}の方です。分数毎に粗く評価するんですが、若干発想力が必要とされていますかねえ。

 (2)は(1)を使うという意識が有れば、2\leq k\leq n-2とそれ以外で場合分けする事は出来るでしょう。2\leq k\leq n-2の場合ですが、ディオファントス方程式の問題なので登場している素因数pに注目するのは定石です。ここで(1)からn\lt pとなるため、コンビネーションの分母の因数を考察する事で、解が存在しない事が判ります(答案は背理法的に書くべきかな)。コンビネーションの因数考察はフェルマーの小定理の証明とかで触れていれば馴染みが有ると思いますが、無かったとしてもそんなに難しくない様な気もします(でも若干、発想量が必要かな?)。コンビネーションの因数考察といえば15年の東大5とかが連想されますが、あっちよりもずっと綺麗に作られていると思います。いや見事です。作ったの数論の先生かな?だとしたら知り合いだと思うのだけど(人脈自慢)。

 重くはないけど発想力がちょいちょい必要で、``横割り''の本とかでちゃんと勉強していない層は、完全にその日の頭の冴えの勝負になってしまいますね。まあでも、個人的には好きです。

 

 

  各問の難易度がB, B, BC, C, Bです。これは一昨年に匹敵する難易度だったんじゃないでしょうか?京大の5完よりは遥かに難しいですね(満点だと向こうに大物がいたんで判らん)。

 1は出来ないといけない。2は計算ミスや条件の見落としとかしそうだし、8割で十分でしょうか。3,4,5はどれも全滅し得る非常に危険な問題ですが、流石に1問弱は取らないと厳しいでしょう。5割ちょいで合格者平均くらいですかねえ?

※おお!確率が無え!東大のパクり?でも統計の先生達が口出さなかったの?

 あ、後、大学から借りているデジタルペーパーが共有がスキャンより遥かに簡単だったんで、俺の答案を貼っておきます。時間計りながら書いたやつです(京大もやるんだった。来年は大学に返して持ってないから多分出来ない💩)。結構、目一杯使いました。模範解答というには色々粗が在ると思いますが、まあ超トップ層*1の試験場での再現答案としては十分でしょう。是非参考にしてください(因みに俺は解き終わった時点で3の\piが抜けていたんで、満点ではないです💩):2021九大理系。.pdf - Google ドライブ


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*1:流石に今受験生やったら九大なら医学含め俺様がほぼ最強だろ(しかし、たまに数学科にいるまじのバケモノには多分高校生でも勝てん💩

2021京大理系。

 俺は最後の小問集合にやられました。

難易度:5完極めて易、満点やや難

昨年比:5完大幅易化、満点同程度

 

1:小問集合:

問1:空間ベクトル(空間内の平面に関して対称な点)。目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量AB

発想力A

総合難易度AB

問2:確率(「n回目で初めて」)。目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量AB

発想力A

総合難易度AB

 どっちもチャート式の★4つくらいのやつじゃないですか?

 問1はPからαに下ろした垂線の足を求めるだけです。射影ベクトルとか知っていればもっと楽ですが、大した差は生じないでしょう。

 問2はn-1回目赤以外の3/4が続き、n回目で赤玉の1/4になるやつです。n-1回目迄が2色だけとか1色だけでは駄目だから何かベン図みたいに考えなきゃいけないのもお約束ですね。

 

2:図形量の最大値最小値(数式化→微分)、数IIIの微分の教科書章末問題。目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 易問でしかないんですが、計算量がまあまあ嫌です。東大の雑魚みたいな感じっすね。最後はa:=t^2とでも置換でしょう。解いている最中は「相加相乗で楽出来そう♪」と思っていましたが、無理っぽいです。

 

3:級数計算、三角函数の周期性、数IIIの級数定期テスト問題。目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 \cos\frac{n\pi}{6}

1\mapsto\frac{\sqrt{3}}{2}\mapsto\frac{1}{2}\mapsto0\mapsto-\frac{1}{2}\mapsto-\frac{\sqrt{3}}{2}\mapsto-1\mapsto-\frac{\sqrt{3}}{2}\mapsto-\frac{1}{2}\mapsto0\mapsto\frac{1}{2}\mapsto\frac{\sqrt{3}}{2}\mapsto1\cdots

 と周期的に変化するんで、それに合わせて級数を分けて計算すれば良いでしょう。俺は公比-\left(\frac{1}{2}\right)^6の5個の級数に分けて計算しました。

 ほぼ同じ事ですが、先に

1+\frac{\sqrt{3}}{2}\frac{1}{2}+\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2}\right)^2-\frac{1}{2}\left(\frac{1}{2}\right)^4-\frac{\sqrt{3}}{2}\left(\frac{1}{2}\right)^5

を計算し、初項がこいつで公比-\left(\frac{1}{2}\right)^6級数だと思っても良いです。こっちの方が計算は気持ち楽だけど、試験場では直ぐに思い付かなかったらこんな工夫を考える方が時間の無駄でしょう。

 いやてか\cos\frac{n\pi}{3}\cos\frac{n\pi}{2}で良いだろ面倒臭えな。

(※)この問題、i\sum_{n=0}^\infty\left(\frac{1}{2}\right)^n\sin\left(\frac{n\pi}{6}\right)との和を考えてやると、ドモワブルから\sum_{n=0}^\infty\left(\frac{1}{2}(\cos\frac{n\pi}{6}+i\sin\frac{n\pi}{6})\right)^n ~(=:\alpha)となり、\frac{1}{2}(\cos\frac{n\pi}{6}+i\sin\frac{n\pi}{6})が絶対値1未満である事から、(複素数の)簡単な級数計算に帰着出来ますね(勿論、求める値は\alphaの実部です)。本問に限らず、\cosの問題で\sinとのペアを考える事は基本的なアイディアですね。同じ分野の超優秀な某先輩から指摘してもらいました。有り難うございます(てか見てくれているの嬉しいけど超怖え!笑)。

 

4:曲線の長さ、定積分計算(半角の公式)。目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量AB

発想力B

総合難易度AB

 問題だけ見るとこいつも数IIIの定期テスト問題ですが、積分計算がやや厄介です。京大は時々、積分の計算問題を出題しますが、これがそうって事ですかね?

 曲線の長さの定義通り計算すると、被積分函数\frac{1}{\sqrt{1+\cos x}}ってのが出てきて、分母のルート内を半角の公式で処理します。この半角の使い方は少しイレギュラーな気がします(いやパターンなんだっけ?覚えてない)。俺は少し悩んじゃいました。

 

5:軌跡;(1)円周角の逆;(2)数IIの軌跡。目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 (1)は円周角の逆より外心がAに依らないんですよね。でもこの聞き方のせいで、一瞬「ん?」ってなった受験生も多いのでは?円周角の逆は、軌跡の解法選択が身に付いていないと、一寸気付き難いと思います。

 (2)は普通に数IIの軌跡の問題ですが、同値性の記述には少し気を払ってくださいね。

 いや(2)の計算が全然合わなくてまあまあ苦戦しました。情け無い💩

 

6:小問集合(のくせに強い!):

問1:素数である事の証明(対偶取って合成数である事の証明に帰着)、京大名物「実験→予想」に偽装因数分解(積の形)。目標解答時間知らん!(方針を間違えなければ5分で解けるが俺は1時間以上溶かした💩)

テクニックB

記述量A

発想力BC

総合難易度B

問2:連続特称命題(接点Tの変種、平均値の定理)。目標解答時間40分。

テクニックCD

記述量B

発想力D

総合難易度CD

 「え?また小問集合?」って感じですが、今度はどちらも雑魚ではありません(特に問2)。

 問1ですが、「素数である」の定義は「1と自分以外に約数を持たない」という否定文であり、このままでは(特に示す方が)扱い難いので、対偶を考える事にしましょう。すると示すべきは「n合成数ならば3^n-2^n合成数」となります。ここで「京大で合成の証明ときたら、まあ実験して何か因数を持たないかの考察だろw」とすると、恐らく泥沼にはまります。n=4,6で実験してみると、不幸にもどっちも5の倍数になり、この方針でいけそうな気がしてしまいます。しかし、実際に5の倍数になるのはnが偶数合成数である場合だけであると判ります(2^n, 3^nをmod 5で考えると判る)。しかし、ここで中途半端に上手くいけそうな感じがしたせいで、俺はこの方針に執着してめっちゃ時間を使ってしまいました。実際には、n=pq ~(p, q\gt 1)とすれば、a:=2^q, b:=3^qとして

3^n-2^n=a^p-b^p=(a-b)(a^{p-1}+a^{p-2}b+\cdots+b^{p-1})

因数分解されるってだけです(p,q\gt1より上記素因数分解が可能)。糞まじやられた!勿論、因数分解の方針自体は最初に考えたのですが、

3^n-2^n=(\underbrace{3-2}_{=1})(3^{n-1}+\cdots+2^{n-1})

として「あ、駄目だ」ってなって直ぐに放棄してしまいました。これは解けた人はすんなりでしょうが、俺パターンの泥沼をやっちゃった人も結構いたんではないかと思います。まじ超意地悪問題!

 問2は接線の存在の証明問題です。先ずは接点(てかパラメータ)の存在に言い換えるべきでしょう。つまり、(t,f(t))での接線y-f(t)=f'(t)(x-t)で原点を通るものが存在すれば良いです。これは接線の式に(0,0)を代入し(て変形し)た式f(t)=tf'(t)(★)を満たすパラメータtの存在が言えれば良いです。例の有名な荻野先生の「接点T」の変種と言って良い問題だと思います。ここから条件を如何使うかを考えます。条件を書き換えると\frac{f(a)}{a}=f(1)=\frac{f(1)}{1}となり(※)、この条件を使う為に(★)を更に\frac{f(t)}{t}=f'(t)と書き替え、g(x):=\frac{f(x)}{x}とします。すると、条件はg(1)=g(a)となります。ここで、パラメータの存在証明なので、平均値の定理の利用は常に意識しておくべきって事で、g(x)平均値の定理(てかロルの定理ってか)を適用すると、g'(x)=\frac{xf'(x)-f(x)}{x^2}に対してg'(t)=0を満たす1\leq t\leq aが存在する筈です。これはつまりtf'(t)-f(t)=0って事なので、示したかった事が示されています。

(※)唐突にこの様な条件の書き換えを行いましたが、この発想を俺が如何思い付いたかについて書いておきます。グラフを扱う際には、「\frac{f(t)}{t}は原点と点(t,f(t))を通る直線の傾きと見る」という(恐らくそんなにメジャーではない)定石が在ります。本問は傾きの考察をする感Maxの問題なので、\frac{f(t)}{t}の議論をする為にこの変形を行いました。因みに、平均値の定理を使う感もMaxだったので、条件の式を\frac{f(a)-f(1)}{a-1}=f(1)なんて風に変形し、左辺に平均値の定理を使ってみたりもしたのですが、如何にも上手くいきません。でもこれを使ってもいけそうな気がしているので、判った人がいたら是非コメント下さい。因みに、問2は絵的には明らかです。と言うのも、条件\frac{f(a)}{a}=\frac{f(1)}{1}はつまり「原点と(1,f(1))を通る直線が、y=f(x)と(点(a,f(a))で)もう1度交わる」となります。この状況を絵にテキトーに描いてみて、原点を通る直線を傾きを色々動かせば、(平均値の定理的なノリで)丁度接する瞬間が在る筈だと判ります。ですがこれだと数学ではないので、多分点数は貰えないと思います。

 いやまじ小問集合のくせにえげつないですって。特に問2はこれやって20点しか貰えないのは酷いですよ!一方で問1の因数分解は、京大では以前にも2010の理乙5でも出題されているんで、京大受験生は常識にしておいた方が良いと思います。

 

 

 さて、京大理系数学は2009年以降 「-2000して3の倍数になる年は難問による難化」というジンクスが続いていました。ですが今年は「難化」と言うには余りにも5完が容易です。ボーダーは普通の理系学部でも4完超えてるんじゃないですか?しかしながら、最後の小問集合の問2が普通にかなり難しいので、満点はそんなに多くないと思います。問1も俺はやられたし。

 出題分野について、何と半分以上が数IIIの微積絡みです。後は、確率漸化式が3年連続出てないですね。

 あーもー大問5終った時点で1時間半以上時間が残ってたのに、最後の小問集合に2時間近く持っていかれました。

 坂ダッシュしないといけないんで、九大は多分明日になります(雨天中止、でもやっぱ九大は明日)。

ブログの今後について。

 簡単に言えば、ちゃんと問題を解く大学を減らすと思います。

 元々このブログは、KATSUYAさんって人( 「東大数学9割のKATSUYA」)のブログを見て「俺もこんな風に色々と入試数学について語ったら(俺が)面白いだろうなあ」と思って始めたものです。始めたばっかの頃は(俺が知る限りは)KATSUYAさん以外にこういうのやってる人ってあんまいなかったんで、まあ珍しいって自覚も手伝って割とノリノリでやってました。でも最近は、俺より全然人気も(受験数学の)能力も有る人とかが動画取りながらリアルタイムで解くみたいな事も平気でやり出しちゃって、正直「これ(入試数学)俺がやる必要在る?」とか思う様になってきました。加えて、研究で「俺の数学」を好き勝手にやって俺の名前で論文になる方が、まあ全然楽しいんですよね。俺って兎に角、「俺」「俺だけ」「俺らしい」みたいなのが大好きなもんで。それと比べると、何か入試数学とか他にもやってる人沢山いるし、しかも難しいくせに解いても論文にならないし、その上、毎年解くのはこの時期だけだから、年々色々と忘れて解くの遅くなっていくし(普通に東大の問題解いてる時にf(x)/g(x)の微分の公式忘れて証明からやったりしています)、いやもう怠いっすわ。東大なんか結局時間内に解けたの16年と17年だけで、最近は全然、学歴コンプの解消にもならねえ。

 っつー事で、今後は時間計って真面目に提出するつもりの答案作って、みたいなのは、母校九大と学歴コンプの化身京大と、くらいにすると思います。他の大学も目を通してパパっと解くくらいはすると思いますけど、見た瞬間に解る問題とかは多分もう解かないし、「後は計算するだけ」ってなったら多分数値を出すってのもしないと思います。なので、難易度評価の特に「記述量」の部分は信憑性が結構落ちると思います(この旨は各記事の初めにもきちんと記述します)。

 まあでも、完全に止めるって事はしないです。6年続けてきた事ですし、てか「ちゃんと数学やってる人間で、入試数学関連の発信もしている人」ってなると、未だあんまいない気もするんで、その意味で価値は在ると思います(数学科の人間って事なら東大京大の学生とかも見ますけど、彼等って未だ研究はしてないですよね)。

 代わりと言っちゃああれですが、今後は(俺の)研究関連の記事とかをひょっとしたら書くかも知れません。いやまじ(クオリティは判らんけど)「自分の新しい数学的事実を見付けてそれを論文にする」ってだけなら、意外といけます。まあでも如何せん、(「金を貰う」という意味では)俺の研究は未だ誰からも評価された事が無いんで、何かしら金を貰える様になる迄は、こっちの記事もあんま沢山書いたりはしないかもです💩