予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス研究員の入試数学語り。

毒舌、下ネタ注意。※年々自信を失い、それに伴って毒もマイルドになってきています。

2019名大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/2/27に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:やや易

昨年比:同程度~微難化

 

1、積分総合(積分漸化式、三次元求積(未知角設定))、誘導「結果の利用」、目標解答時間30分。

テクニックB

記述量C

発想力AB

総合難易度B

 よくもまあ積分だけでここ迄綺麗に1問に纏めたもんです。

 (1)は良いでしょう。部分分数分解のヒントは不要な気もしますが、まあこう云う知っているか如何かだけの式変形は知らないでも良いって、名大の先生が言ってくれているんでしょう。

 (2)もお約束の積分漸化式です。当然、2乗を分離しtanの微分と見る、ですね。

 (3)は初め「独立小問か?」と思いましたが、ちゃんと(1)(2)の結果が使えます。切る軸は指定してくれていますが、誘導を使う為にも自分で角度θは設定しないといけません。計算が大分膨れますが、まあでも取れるでしょう。何年かは忘れましたが、東大に類題が在りました。

 

2、空間ベクトル、始点の変更、内積計算(直交⇔内積0、鈍角⇔内積負)、誘導「結果の利用」、座標設定、対称性、三角比(余弦定理、三平方)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 (1)そのままだと如何仕様も無いので、取り敢えず始点をAに統一しようとすれば自然に解けます。P上のベクトルは常にBB’やCC’と直交する事に注意です。

 (2)は鈍角の証明なのでまあ内積負でしょう。この方針が出た時点で(1)が誘導だと気付けます。

 (3)の初手だけ少し嫌で、取り敢えず座標設定ですが、対称性からAを原点、C’:(√21,0)、B’:(4cosθ,4sinθ)とでもしておきます。余弦定理からcosθが出て、三平方からsinθも出ます。更にB、Cのz座標を各々b, cとでもして内積やら二等辺やら考慮すれば後は勝手に解けます。自分は初め、「二等辺」を見逃していて「決定されねーじゃん!」ってなりました。つまり、(2)迄なら二等辺の条件は不要です。

 (1)(2)は取らないといけないですね。

 

3、小数部分、しらみ潰し、目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 小数部分に関する問題です。√n-[√n]とかを考えるのがセオリーだと思いますが、そんなお洒落をしている間にさっさとしらみ潰した方が良いと俺は判断しました。

 まあ少し弄れば、平方数の直ぐ後程条件を満たし易く、そこから離れる程条件をみたし難くなるのは直ぐ判ると思います(nが大きくなれば小数第2位以降も0になりそうで怖いけど)。一例を挙げると、25の直後の26は

 (5.01)^2≦26<5.1^2

で条件を満たし、実はこれが(1)の答です。直後の27は駄目で、よってそれ以降、6^2=36迄駄目です。まあこんな計算を高々10回するだけですよ。

 セオリー通りガウス記号を使うなら、類題は16東大5ですかね。名大の離散変数系統の問題は東大と近いです。取りたいですが、前2つよりやや発想寄りできついかも?

 

4、独自設定(置換群)、不等式の証明(和分出来ないΣ達、特別な不等式の利用(前問で示した不等式))、確率(該当パターン全調査、場合の数/場合の数)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 これは大学で習う置換群ってのが題材ですね。ここでの置換ってのはn個の文字を入れ替える事を表しています。群とは非常に粗く言えば、例えば複素数とその足し算みたいに、2つの要素から新しい要素を作るルールを備えた集合の事です。今回のn個の自然数の並び替えも、並び替えた後再び並び替えれば、結果的に新しい並び替えになっているので、これを2つの並べ替えから新しい並べ替えを作るルールだと定めれば、これで群になります。数字の並び替えをあみだくじに対応させれば「2つのあみだくじをくっつければ新しいあみだくじができる」と表現すれば、或いは解り易いかも知れません。

 (1)(2)は良いでしょう。まあ置換群に触れた経験が有れば処理は速くなるでしょうが、そんなの無くても十分簡単です。

 (3)の不等式の証明ですが、毛色が変わってグラフの面積比較、所謂「和分出来ないΣ」です。流れが大きく変わりますが、でもちゃんと不等式の解法選択をすれば何て事は無い。

 (4)だけ一寸面白くて、引き続き不等式の証明ですが、今度は(3)の結果を利用します。長さ(n+1)/2以上のサイクルなんぞ1つしか持てないってのさえ気付けば、後は確率を計算し足し合わせるだけです。只まあこれに気付くのが少し発想寄りでしょうか。理詰めに考えていれば自然に出てくる事ではありますが。

 (1)(2)(3)は絶対確保。(4)は解答を付けておきます。

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 最初にも書いた通り、易し目の路線が踏襲されていると思います。1,2(1)(2),4(1)~(3)で半分強位が最低ラインでしょうか。2(3),3,4(3)は少し頭を使いそうですが、ここからもう1問分位は取れれば十分だと思います。合格者平均は7割弱位でしょうか。

2019阪大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/3/3に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:8割ならやや易、満点なら難

昨年比:8割なら易化、満点なら難化

 

1、定積分込みの不等式の証明( (1)微積分学の基本定理、(2)グラフの単調性の利用&積分区間で定数化)、定積分込の極限(置換、挟撃(粗く評価し不等式の自作))、誘導「結果の利用」、目標解答時間25分。

テクニックBC

記述量B

発想力B

総合難易度BC

 昨年に引き続き、1番はザ・理系の微積の標準問題です。

 (1)は良いでしょう。微分して下さい。実質不等式の証明問題です。xが∫の下なんで符号は注意です。

 (2)は左の不等式が(1)から得たグラフの単調性利用で、右は区間内で定数評価(被積分函数の変数xをaにする)です。

 (3)がやや曲者で、(2)を利用した挟撃なのは良いでしょうが、その為に先ず(2)を使える様に強引に痴漢します。これでほぼ終りですが、下から押さえる不等式にくっついているごみの処理が地味にうざいです。

 (1)(2)は絶対確保ですが、(3)は微妙ですねえ。

 

2、3項間漸化式(解く)、複素数(ドモワブルと周期性)、確率((場合の数)/(場合の数)で処理、該当パターン全調査(ディオファントス方程式のしらみ潰しに帰着)or全数調査)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 よくもまあこれだけ沢山、1問に綺麗に纏めたもんです。但し、問題文では複素平面って言っていますが、複素平面の問題ではないですね。

 (1)ですが、その前に漸化式の処理です。まあ今回は解きましょう(解く必要が無く、しかも解く事に固執すると全滅する様な問題も在りますので、判断は慎重に)。そうすれば自然にドモワブルへと行き着きます。

 (2)は只のドモワブルと周期性の計算問題です。これ要らねーだろ。

 (3)は確率で、ドモワブルの周期から条件を絞り、周期に関するディオファントス方程式に帰着が普通でしょうが、所詮サイコロ2回なので全部調べても良いです。前者でいくなら類題は16九大後期1でしょうか。ドモワブルや三角の周期性からディオファントス方程式に帰着するのは1つのお約束だと思って良いかもです。

 沢山の知識を使いますが、悪戯に難易度が上昇しない様に上手く組み合わされています。その阪大の先生の優しさを汲んで、ちゃんと押さえて下さい。

 

3、存在領域(二次方程式の解の実数条件)、回転体(平凡だがうざい)、目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量BC

発想力A

総合難易度AB

 もう(s+t,st)ときたら条件反射で二次方程式の判別式に帰着です。ご丁寧にそれに気付かせる為の小問(1)も用意してくれています。求積も教科書の例題みたいなレベルですが、計算量だけ一寸大変ですね。

 これは取らないと。

 

4、互素の証明(背理法)、離散全称命題と一意性込の離散特称命題の融合(帰納法(特称は一意性と合わせ帰納法に組み込む、特称の処理は帰納法内で具体的に構成する)、帰納法を回す文字と帰納法アルゴリズム(二重帰納法、片文字全段仮定)、誘導「結果の利用」、帰納法アルゴリズムの復元、目標解答時間40分。

テクニックD

記述量C

発想力D

総合難易度D

 大学入試としてはかなりの難問ですが、個人的に糞みたいに大好きです。

 (1)は背理法なのは良いでしょうが、帰納法っぽく上の段へ登って行かなきゃいけません。既に受験生は苦手そう。

 (2)は分数p/qに関する主張を2つの自然数p, qに関する離散全称と見て、離散全称命題と離散特称命題の融合と見ます。全称+特称の詳しい解法選択は「入試数学の掌握」の2巻に投げるとして、今回は離散全称を帰納法で処理し、特称は帰納法中に投げます。但し、変数がp, qと2つ在るので、どちらで帰納法を回すかを考えなければなりませんが、結論から言うと今回は両方についての二重帰納法です。いきなり思い付く人もいるでしょうが、自分は初め1文字で回そうとして仮定が足りないと思った事から二重帰納法へと行き着きました。使う技術も、それを採用するに至る迄の思考力も、かなり高度なものが要求されます。帰納法を回す際の既約性の確認も地味に躓き所です。

 (3)は解こうとして初めて、一意性の証明も(2)の帰納法に組み込む必要が在ると気付きます。一意性込の特称と見るって事ですね。帰納法で考えている以外の分数から(p+1)/(q+1)が作られ得ないのは流石に明らかでしょうが、一言書いておいた方が良いかも知れません(解答には書いていないですすいません)。

 (4)も只のおまけの数値計算ではありません。新たな分数の構成が数学的帰納法アルゴリズムの中で示されているので、ここを詳しく見る必要が在ります。大学以降の数学で「○○が存在する」って定理を帰納法等で示した後、実際に○○を計算しようとしたら定理の証明から計算方法を復元しなければならない、と云う状況がしばしば起きるのですが、本問が要求しているのは正しくその作業です。

 高度な知識と思考力が大量に要求される、かなり難しい問題です。(1)以外は基本捨てだと思いますが、数論や代数を目指している数学科志望には是非解いてもらいたい!

※最初は更に全段仮定だと思っていて解答にもその名残が有りますが、そんな事は無かったです。

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5、空間図形の算数、目標解答時間20分。

テクニックA

記述量B

発想力A

総合難易度A

 如何解いても構わないです。こいつと4の完答が同じ得点率20%なのがまじで信じられません。

 

 

 1(1)(2),2,3,5の7割でボーダー、差が付くのは1(3),4(1)辺りでしょうか。最初にも書いた通り、8割迄なら明らかに去年より易しいです。4にも時間がたっぷり使えるので、案外完答者はいるかも知れません。4とか試験場で答案が作れたら、さぞかし気持ち良い事でしょう。微積の標準問題、確率、空間図形に整数の難問と、出題傾向は概ね例年通りだと思います。

 一寸自慢になりますが、俺は難問4が大好物で割と直ぐ解けたので、試験時間の半分ちょいで4迄解けました。5はもう下らな過ぎるので解答を作りませんでした。すまんこ。

2019東大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/2/26に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:やや難(東大だとしても)

昨年比:やや難化

 

1、積分計算(tan置換)、東大名物対脳筋用トラップ、目標解答時間10分。

テクニックA

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 まあtan置換なんですけど、見た目がごつくて試験場だと怖いでしょうし、何より何も考えずに初めからtan置換すると普通に計算出来るx^2がtan^2になってえらい目に遭います(遭いました)。でもこれは取らなきゃ駄目でしょう。

 この手のやつには毎年引っ掛かりますねえ…

 

2、図形量のMaxmin(数式化→微分)、パラメータの範囲注意、目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量BC

発想力AB

総合難易度AB

 まあ数Ⅲの定期試験問題ですが、ちょいちょい計算量が嫌です。文字を置いたら範囲には常に気を配りましょう。これも取らないと。

 

3、チンカスお絵描き大会、ベクトルとパラメータ、目標解答時間50分。

テクニックAB

記述量D

発想力BC

総合難易度C

 タイトルの通りまじ最悪です。こんなのちょろっとベクトルの処理がある以外は殆ど絵を丁寧に描くだけの問題です。しかも、大学以降の数学力と殆ど関係無い空間把握能力が高い人間が俄然有利です。まあそれを言ったら去年の6とかもそうですが、それにしても積分なり領域処理なりもうちょい数学らしい事も聞いて下さいよ。

 ったく、どんな受験生が欲しくてこんな問題を出すのでしょうか?美大化でも目指しているのでしょうか?

※「大学以降の数学力と殆ど関係無い」と言いましたが、これは流石に俺の主観な気がします。工学系で実際に物を扱う人とかなら必要なのかも知れないし、数学系でも低次元トポロジーとか結び目とかするなら多分必要な気がします。でもやっぱ、こう云う見た瞬間に解き方と、それを実行するのに時間が掛かる事が判ってしまう問題は、個人的に嫌いです。てかまともな東大受験生なら時間さえ有ればこれ解けない人いないだろうし、選抜試験としても如何なんすかねえ。

 まあでも解答書いちゃったんで載せてはおきます。

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4、実験→予想→証明、偶奇性、互いに素の証明(互除法)、誘導「方針の利用」「結果の利用」、平方数でない事の証明(剰余類&ディオファントス方程式に帰着)、目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量B

発想力BC

総合難易度BC

 これは整数について色々聞いている良い問題です。

 (1)は前半は京大型の「実験→予想→証明」の流れですが、後半の処理は一捻りされています。京大には見習って欲しいです、具体的には互いに素の証明で、思い付く限りは:

・共通因子を持つとして矛盾を導く;

・互除法を使って求める;

・直接求められちゃう、

辺りでしょうか。本問は互除法です。

 (2)は平方数でない事の証明ですが、先ずは(1)に倣い偶奇で場合分けをして考えます。背理法ですが、平方数であると仮定すると、(1)の考察から因子各々が平方数じゃなきゃいけないと判ります。平方数でない事を言うなら:

・剰余類;

・=p^2と置いてディオファントス方程式に帰着、

くらいしか思いつきませんが、本問は場合分けした事で両方とも使われます。mod nのnの候補は、問題文に現れている整数全て、それで駄目なら2,3,4,…と小さい方からしらみです。今回は問題文にいる5でmod 5でしたね。こっちの類題は14九大2とかでしょうか。一方の後者は、積=1の形になるのですが、これ俺は先にやった剰余類に引っ張られて見付けるのにかなり時間が掛かりました。類題である18九大4(2)と全く同じやらかしです。反省。

 簡単ではないですが(1)は取りたいですねえ。解答載せておきます。

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5、一意性込の連続特称命題(グラフで視覚化、範囲で場合分け、中間値)、明示されていない値の不等式の証明(図形量の比較と見る)、誘導「結果の利用」、極限(挟撃(不等式は図形量の比較と見て作成)、「今、自分が弄っている値は何か」、微分係数の定義)、目標解答時間40分。

テクニックCD

記述量C

発想力CD

総合難易度CD

 東大らしい、重厚な数Ⅲの微分の総合問題です。

 (1)は一意性込の解の特称命題です。色々とテクニックは在りますが、今回これが中間値なのは良いでしょう。問題は一意性の方です。解の範囲をグラフの形から絞って、その外側で解が無い事を別途、論証する必要があります。絵を描けば殆ど当たり前ではありますが、それでは許してはもらえないでしょう。範囲を分ける所は少し発想寄りかもです。

 (2)は明示されていない値(a_n)に関する不等式です。大きく:

・数式で表す;

・図形量の比較等と見て押し切る、

の2通りの処理がありますが、本問はまあ後者でしょう。解法選択、実際にそれを実行する事、両方とも難しくはないです。

 (3)がかなりの大物です。aの値はまあ片方は(2)を利用して挟撃だろうって事で、再び明示されていない不等式(の自作)の問題となりますが、これが中々立たない!自分は初め、ニュートン法(接線とx軸の交点に絡むやつ)的にするのかと思って立てようとしたのですが、如何工夫してもa_n-ゴミ<a_nみたいな、文字通りごみみたいな不等式しか立たない!これでかなり時間を潰して、頭を冷やして考え直して解答中の面積比較に辿り着きました。ここでも一応、(2)の結果を使っています。bは今自分が弄っている値(a_n)が何かを考えれば自然に出来る筈ですが、これも易しくはないでしょう。cは更に厳しく、ある程度自然に変形した後(√cos a_nを足し引きした後、分子の有理化)、最後は微分係数の定義に帰着です。

 (1)(2)は取りたいですが、これで半分は貰えるのでしょうか?

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6、複素式処理総合(共役解、共役虚数の処理、real/imaginaryパートの比較、順虚数等のパラメータ表示)、解と係数(4次)、誘導「方針の利用」、同値性への気配り、複素平面の軌跡(実平面に帰着)、目標解答時間60分。

テクニックCD

記述量D

発想力CD

総合難易度CD

 これまた東大らしい極めて重厚な複素数の総合問題です。

 (1)は条件3から情報をどこ迄読み取れるかが鍵で、もう兎に角複素数の基本的な取り扱いを全部頭の中から引っ張り出してくる必要があります。キーになりそうな解と係数を(1)では結果的に一切使わない事や、問題文の聞き方と合わせ、この時点で既に易問ではない。

 (2)で漸く解と係数の出番ですが、そのまま使おうとしたらアウトで、条件3から更に情報を引き出す必要があります。因みに解答中でδでなくγを消したのは、rとややこしくて個人的にγが嫌いだからです(笑。これもお世辞にも易しくはない。

 (3)が一番苦しく、先ずは(2)で生じた場合分けを引き続き利用します(方針の利用)。(2)の連立4本のままではとても扱えませんが、丁寧に同値性を確認すると条件式がかなり減らせる事が分かります。答案中の下2式が消えた理由は、a, bは実数でありさえすればα, β, γ, δに合わせて適当に選べば良い事に由ります。但し、単に減るだけでなくここで条件3からデリケートな要求が生じたりと、扱いには細心の注意が必要です(解答では「式を弄ると」と一言で済ませていますが、かなり色々とチェックしました)。複素平面の軌跡は複素特有の処理か実平面に帰着かで大きく方針が分かれますが、本問は後者でしょう(答は双曲線ですが、それでも本問で前者は厳しい気がする)。場合分けが結果的に統一されるのは、個人的に意外でした。思わせ振りな(2)の結果が誘導になっていないのも、輪を掛けて(3)を難しくしている気がします。

 もの自体は複素数の取り扱いについて沢山勉強出来るとても良い問題なので解答は付けますが、まあ試験場では全滅でも仕方が無いでしょう。

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 いや今年は本当に厳しかったです。去年もちょいちょいやばかったですが、まさかの難化路線踏襲と云う。俺とかもう悲しくなって途中で時間計るの止めましたし、最初にも書きましたが、最後迄解き終わった時には試験時間の倍は経過していました。時間内だと多分5完分も取れていなかったと思います。本当、これじゃ学歴コンプの解消なんて出来ませんわ。解き終ってみれば無茶振りな難問は無いと気付きますが、兎に角セット全体で見た時の処理量と難易度がえげつないです。

 取り敢えず1,2,3(1),5(1)(2)で半分弱は押さえないといけないでしょうか。何とかもう1問分取って6割いけば万々歳じゃないですか?まあでも、無茶振りが無い分、確りと勉強したトップ校の受験戦士ならきっと満点が取れるのでしょうねえ。

 てか今年も確率無いですね。微積線型無の統計必修が本当に嫌なのでしょう。

2019九大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/2/26に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

 近年最悪の難易度であると思われます。

昨年比:難化

難易度:難

 

1、定積分(減衰曲線型置換)、Maxmin(2変数、予選決勝)、極限(平凡)、目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量BC

発想力B

総合難易度BC

 初っ端からかなり凶悪な面構えをした問題です。3つもの変数が絡んだ積分で、最大値だの極限だのと受験生を怖がらせる気満々です。

 取り敢えず問題文とにらめっこをし、積分計算をしない事には始まらないと認識する必要があります。この段階ではx,yは只の定数です。この時、所謂、減衰曲線型の置換積分が必要です。積分計算さえしてしまえば、後は2変数多項式の最大最小で、これは予選決勝法、極限はおまけだと判る筈です。

 東工大みたいな問題です。取れなくても仕方が無い。にしても、式処理オンリーの微積分とか、九大では何年振りでしょうか。

 

2、多項式(次数、係数比較)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 (1)は先ず思い浮かぶのは背理法ですが、背理法を回そうとすれば直接示す事が出来るって判ると思います。ですが多項式ってテーマ自体が珍しい上に易しくはないので、微妙なラインです。

 (2)は次数が絞れさえすれば係数を文字で置いて連立です。でもこう云う「多項式の決定だから幾つかの値で比較すれば良いでしょ」っての自体も、そこそこ高級な知識な気がします。

 これも九大では見慣れないテーマな上に、問題文がかなり怖い顔をしています。京大の中堅って感じです。「絶対取れ」ってレベルではない。

 

3、確率(該当パターン全調査)、複素数の絶対値、二次方程式複素数の分布、有名角、目標解答時間30分。

テクニックBC

記述量B

発想力BC

総合難易度BC

 設定自体はありがちですが、アレンジの仕方が中々に嫌らしいです。

 (1)は良いでしょう。実数係数なので判別式を見るだけです。

 (2)もましな方です。実解か純虚数解かで場合分けをし、後者は解の絶対値が1になるってのから候補を全て数え上げます。でもまあ、初手の場合分けは発想寄りかも知れません。

 (3)は中々に嫌らしいです。二次方程式の解の形から、解は実軸対象に分布している事を見抜き、更にサイコロの目は常に正である事から、解は実軸と成す角が150°と210°、又は120°と240°の直線上に存在しなければならないと判ります。後は有名角(30°やら60°やら)由来の線分比なんかを考えつつ、候補を絞るだけです。

 類題と言えば確率としては15年東北大の3、二次方程式複素数解の分布の問題としては18年の東工大の1が思い付きますが、これ等2つの合わせ技な上に場合分けやら有名角やらも噛んでいて、本問の方がずっと高度な気がします。でも他との兼ね合いから、(1)(2)は取りたい。

 

4、漸化式の応用(繰り返し図形)、級数計算、目標解答時間30分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 漸く見慣れた設定の問題が出てきてくれましたが、今度は計算量がかなり嫌です。OABは正三角形なので、頑張れば初等幾何的に楽が出来るのかも知れませんが、俺はもう愚直に座標を全部計算しました。他の問題の難易度的に、これを落とす訳にはいかないです。

 最近かと言われれば微妙ですが、繰り返し図形の極限は11年にも出ています。

 

5、複素数と論理の取り扱いに関する難問、複素平面の軌跡(同値変形の後実平面に帰着)、同値性、否定命題の利用、複素数が実数であるための条件、恒偽命題、目標解答時間120分(笑

テクニックD(D★?)

記述量D

発想力D

総合難易度D

 最初に解いた時には高校の範囲外の知識を使ってしまったので、改めて高校数学でちゃんと解きましたが、これはやばいです。

 条件が沢山在って変に論理の事で悩むのが嫌だったので、俺はもう全部集合と論理の言葉で書きました。

 (ア)の処理から、既に分母を通分する作業が在るので少しデリケートです。

 (イ)も分母を払う操作が在るので怖いですが、これもまあ後に比べればましです。

 問題なのは(ウ)の処理です。条件が「-1を通らない」と否定的なので、扱い難さが最悪です。こうやって何でも直ぐに否定から入ろうとするのがモテない理系の悪い所です。扱いにくい否定命題は、更に否定して肯定にしてやるのが、数学に臨む上での大きな哲学の1つです(と、うちの大学の数論専攻のハイパー頭良い先生が言っていました)。否定した後は、出てきた条件1つ1つを丁寧に見ながら適宜既知の条件を付け加えてやり、恒偽命題(文字通り恒に偽の命題です)を上手く作って同値性を保ちながら条件を減らしてやります。するとc=-1が現れ、これが答だと予想が付きますが、同時にうざったい変な形の命題も出てきてしまいます(解答3枚目上段{(1-c)/(1+c)}iに関するやつの事)。まあこれも恐らく恒偽命題として消えるのだろうと予想しながら考えれば、こいつが実数か否かを調べようとするのは割と自然だと思います。ここをクリア出来れば、後は教科書にも載っている数Ⅱの軌跡ですが、これも単におまけと言うにはちょいちょい抵抗のある処理量です。でももう俺はこれ以上解答を書きたくないです。許して下さい。一言、単に点が単位円周上に乗っているって事だけでなく、(-1,0)以外の点を取り切れているのかの議論もきちんとして下さい(これをちゃんと書いていない受験参考書が余りに多い!学部1年の全射を勉強し直して来い!)。

 うーん。a=1, c=-b, |b|=1迄は出せる筈ですが、これで果たして何点貰えるんでしょうね。前半と後半で半々、前半の内更にbの決定で半分位な気がするので、1/4位でしょうか。賢い子ならさらに必要性から絞って答だけなら出せそうな気もしますが、論理の方は果たしてどれだけ詰められるのでしょうか。

※3枚目最上段から(t=0)∧(c=1)が抜けています(tはcに伴い勝手に決まるので、実質c=1だけ)。それ以降、こいつの否定とかも抜けていますが、どうせ消える条件なので許して下さい。てか下書きには書いてあったんです信じて下さい。

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 一寸今回はやばいですね。難化傾向踏襲なんてレベルではないです。京大よりも解いていて遥かに嫌でしたし、ブログを始めて以降、九大を解くのに時間を目一杯使ったのも初めてです。作問委員の総入れ替えでもしたのでしょうか。「東工大の問題です。」と言われても信じてしまいそうな感じです。

 傾向も完全に変わってしまいました。微積は純式処理ですし、多項式とかどこの京大だよって感じですし、複素2題は新傾向にしても攻め過ぎです。去年の夏辺りにブログの記事にした“九大傾向分析”は、最早完全なるゴミクズファックと化してしまいました。やっぱ“傾向分析”なんて詰まらない小手先だけの事をするのは良くないですね。

 ボーダーの予想ですが、確保出来そうなのは3(1)(2)、4、5の前々半1/4の計2完弱分位です。1と2で1問分取り6割弱も有れば、普通の学部なら万々歳、医学科でも十分な気がします。

 にしても、今年受験する母校の高校生達相手に2年前「九大数学は傾向も難易度も超安定しているからちゃんと勉強すれば絶対に受かるよ!」とか言ってしまったのですが、俺は一体、如何責任を取れば良いのでしょうか。もう本当に生きていて申し訳無いと言う他無いのですが、如何しても死にたくはないので、命だけは勘弁して欲しいです。

2019京大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2019/2/25に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

 

難易度:易

昨年比:大幅易化

 

1(1)、三角比、必要性から絞る、目標解答時間10分。

テクニックAB

記述量A

発想力AB

総合難易度AB

 3乗の方が0でないと困る事から、候補が1つに定まります。「必要性から絞る」ってやつですね。最初は何も考えず頭の良さで解いてしまったので発想寄りな気がしましたけど、見直すと解答の流れとしては極自然でした。受験生の皆さんは3倍角の公式はちゃんと覚えておきましょう。

 2012以来の小問集合です。(2)諸共、恐らくオールオアナッシングの採点でしょう。40点って(笑

※解答を追加しました。最初の2θの議論は要らないです(汗

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1(2)、積分計算、目標解答時間10分。

テクニックA

記述量AB

発想力A

総合難易度A

 1つ目は部分積分、2つ目は部分分数分解です。出来なきゃ落ちんぽです。

 

2、実験、予想、偶奇性、目標解答時間10分。

テクニックA

記述量A

発想力A

総合難易度A

 このパターン、もう京大入試としては激易問でしょう。

 

3、軌跡、座標設定、パラメータ求積、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 取り敢えず座標設定でしょう。京大入試ではお約束です。縮尺は如何でも良いので、B=(0,0),C=(1,0),A=(a,b)(b>0, 0<a<1)って感じが良いと思います。軌跡の処理ですが、ここで鋭角条件が効いてPのx座標が単調増加になります。面積を求めるだけなら軌跡を正確に求める必要が無いってパターンですね。類題は2016の九大後期でしょうか。それこそ九大の練習くらいに丁度良い問題です(と思いましたが、今年は九大の方がやばいです)。

※解答を追加しました。易しいですが良い問題です。

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4、確率(直接数える)、Σ計算、目標解答時間30分。

テクニックB

記述量BC

発想力B

総合難易度B

 何と京大のくせに非漸化式です!小問集合同様、2013以来です!やられました。しかしそれも漸化式を立てようとしていれば気付く事です。X_0=0ってルールのお蔭で処理が大分減りますが、それでもΣが2つ必要で計算が一寸大変です。

※解答を追加しました。

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5、図形量のMaxmin(幾何的考察、数式化、微分)、目標解答時間25分。

テクニックAB

記述量B

発想力AB

総合難易度AB

 底面とAの位置関係を絵で考察しないといけないの以外は、殆ど数Ⅲ学習直後の定期試験問題です。

 最初「正方形」を見逃していて「これはえらい難問だ!」と思いました。

 

6、ドモワブル、対数計算、三角比の周期性、目標解答時間15分。

テクニックA

記述量AB

発想力A

総合難易度A

 ドモワブルと対数計算をお勉強してきたか聞いているだけです。「最小の」とは言っていますが、これをMaxminの問題だと言うのは流石に抵抗が有ります。何でこれが35点なんでしょうか?

 てか何も考えずにlog_{10}2は0.301で計算しましたが、これ問題用紙の透けて見えている裏が常用対数表っぽいですね。

 

 

 一寸これは易し過ぎますね。合格者は全員5完分以上なんじゃないですか?これではトップ層が余りに報われません。あんま勉強していない奴でも満点取れちゃいそうなのがかなり嫌です。

2018北大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2018/3/2に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:難

昨年比:大幅難化

 

1、内積計算、図形量のMaxmin、目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 ベクトル学習直後の定期試験問題です。「今年もこんなのばっかかよ。」と思いきや…

 

2、複素平面の軌跡(順像法)、文字定数は分離せよ、Maxmin(微分)、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 (1)の軌跡は順像法的なやつです。実数になるってんだからrと置き、zをそれで表しrを動かします。実部と虚部を分けるやり方は、虚数の場合しか使えないので、ここで場合分けですね。今年の東北大の5の類題です。

 (2)はいかつい形をしていますが、取り敢えず文字定数分離です。実定数を分離したので、「右辺も実数になる事が必要。」みたいな議論をするのかと思ったのですが、(1)の結果を放り込んであげると、右辺も実数になってしまうので、結局、右辺の実函数としての範囲が求めるものになります。去年の3とかもそうですが、北大の問題って弄っている途中経過でシンプルになり過ぎて「ん?これで良いのか?」ってなる事が時々ある気がします。これもまあ順像法的っちゃあそうですね。

 テーマがテーマですので、解ければ有利になると思います。解答を載せておきますね。

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※まじすいません。(2)の解答中、θが整数πの場合の記述が抜けています。これだとk=0の場合が抜けていますね。いや下書きにはちゃんと書いてあったんです信じて下さい。

 

3、確率(全てのものを区別せよ、該当パターン全調査、余事象、条件付き)、誘導「結果の利用」、目標解答時間20分。

テクニックB

記述量AB

発想力B

総合難易度B

 “怖い意味での北大らしさ”が凝縮された、でもとても良い確率の標準問題です。

 (1)は(笑)です(笑

 (2)ですが、先ず確率での絶対原則は、数える際、「全てのものを区別せよ。」です。それに沿って(1)の結果から、和が9の倍数になるパターンを数え上げます。この様に該当するパターンのみを数え上げるタイプを自分は「該当パターン全調査」と勝手に呼んでいます。本問くらいなら未だましですが、数え漏れの危険性が高く、慎重に処理する必要があります。

 (3)は条件付きですが、丁寧に(場合の数)/(場合の数)を計算するだけです。奇数は1だけなので余事象を使うと良いでしょう。

 「全てのものを区別せよ。」や条件付き確率と云った北大らしいテーマで、更に余事象なんかも使える良い問題です。2016の3なんかが類題であると言って良いと思います。これも(2)(3)は解ければ差を付けられるレベルの問題です。

 ところで、何か2だけ特別視しているかの様な思わせ振りな問題文は一体何だったのでしょうか(笑

 

4、領域図示(不等式)、Maxmin(逆像法的?)、論理の「かつ」と集合の共通部分、目標解答時間35分。

テクニックBC

記述量B

発想力BC

総合難易度BC

 中々に高難度な問題です。

 (1)は良いでしょう。平凡な領域図示です。

 (2)が中々難しいです。問題文を論理で正確に言い換え、式にするのが先ず第一歩です。解答中の様な論理と集合の言葉は嫌いな人が多そうですが、寧ろ(自分の様に)数学が苦手な人程、この言葉遣いでかっちりと条件を数式化した方が、この分野の難しい問題はずっと見通しが良くなると思うので、こう云う問題を解ける様になりたかったら、是非練習する事をお勧めします。次に、論理を平面での領域の共通部分の有無に言い換え(ここが逆像法的?)、pの範囲を絞りますが、この時、pを含む直線についての定点通過考察も地味に躓き所だと思います。

 2問目に続きまた平面での存在範囲系の考察問題です。難しいテーマですし、(2)は医学科、数物トップ層向けでしょう。標準問題メインの北大の問題の中では、トップクラスの難しさだと思います。

 色々書きましたが、言葉で説明するのは難しいので、(2)だけ(最後若干略解出気味ですが)、解答を付けておきます。

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5、不等式の証明(凸性利用、微分、特別な不等式の利用)、誘導「結果の利用」、求積、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力B

総合難易度B

 理系らしい、そして北大らしい数Ⅲの微積の総合問題です。

 (1)は良いでしょう。お絵描きですが、厳密には凸性利用です。

 (2)の不等式の証明は、微分なのには迷わないでしょうが、その後の導函数の処理が問題です。

 0≦x≦π/

⇔0≦x^2≦(π/2)^2

⇔π^2/4≦π^2/2-x^2≦π^2/2

⇒1/√(π^2/2-x^2)≦2/π …☆

と、区間から導函数評価用の特別な不等式を先ず自分で作る必要があります。ここで漸く(1)の結果の不等式が利用出来る形になり、不等式評価2段階(自分で作った☆→(1)のやつ)を経て導函数の評価が完了し、示したい式も出ます。

 (3)は(2)からfとgの上下関係がはっきりしているので、普通に求積ですね。只、三角函数による置換積分が残っていますが。

 これも中々微妙な問題です。(1)と、後(3)も(2)を認めれば解けるので、一先ずこれが目標でしょうか。(2)の不等式の自作と、誘導の不等式の利用の2段構えは、処理量こそ押さえてくれていますが、やっている事は丸っきり東工大微積分みたいな内容なので、中々難しいと思います。理系なら、こう云う問題こそ完答したいのですが…

 

 

 あー今年は難しかったですね。自分が知っている限り(5,6年分位ですが)、過去最高難易度だったと思います。絶対取れるってのが1、3(1)、4(1)、5(1)(3)しか無いですが、これだと半分行かないでしょう。残りは上で「取れれば差を付けられる。」とか言ったやつばかりですが、ここから何とか、半分越える位迄は集めたいです。この難易度なら、5割でボーダー超えるんじゃないですか。

 例年、旧帝大では1番易しい北大ですが、5問セットの難易度が今年は難しい年の九大並です。しかも、北大は試験時間が九大より30分短いので、試験としての難易度は最早九大の比ではないです。

 試験内容の分析としては、綺麗過ぎて逆にびびらされたり(2番)、「全てのものを区別せよ。」をしっかり意識する必要があったり(3番)、例年、難し目の平面の存在系の問題が、しかも2問、しっかり出題され(2番、4番)、北大らしい微積分の総合問題がパワーアップして配置されている(5番)、と云う様に、“怖い意味での北大らしさ”がレベルマックスで襲いかかってきています。「標準問題をしっかり解ければ得点出来る。」と云う“優しい意味での北大らしさ”は今年は完全に無いですね。

 この3年、やや難→激易→難、と難易度がぶれぶれなので、一寸動向が読めないのですが、来年以降も今年の難易度でもやられてしまわない様に対策をする必要はあるでしょう。後、東北大もそうだったのですが、今年は平面の存在範囲系の問題が2題出ていますし、余裕が有ればこれの対策もしておくべきです。お勧めは、ぱら読みしただけなのですが、旺文社の「分野別標準問題精講 領域・軌跡」って本です。図形と方程式後半分野特有の、「一応答えは出たけど、如何も腑に落ちないなあ。」みたいな感じを、論理を使ってかっちり説明してくれている本って印象です。

2018東北大理系。

※本記事は、以前ヤフーブログ「予備校講師採用試験に2回落ちた九大チンカス院生の入試数学語り。」にて2018/3/2に掲載した同名の記事を、ヤフーブログサービス終了に伴い転載したものです。

 

難易度:標準

昨年比:昨年並

 

1、軌跡、通過領域、目標解答時間15分。

テクニックAB

記述量AB

発想力A

総合難易度AB

 一番簡単な通過領域です。逆像法で良いでしょう。貰いです。

 

2、確率(組合せ)、Σk、目標解答時間20分。

テクニックA

記述量AB

発想力AB

総合難易度AB

 組合せを数えて求める簡単な確率です。

 (1)は良いでしょう。p(n)はn-1回目迄全て1が必要十分です。

 (2)(3)は、直前迄n-1以下である組合せ(直前でkだとすると、(3)はkを2分する場合の数なので、k-1通り)と、2回目/3回目に何が出れば良いかを考えるだけです。確率計算でΣkを使いますね。(3)は和は2回目の時点で最低2だったり、n-1とnは出たらまずいのには一応、注意です。

 形や(1)でp(n)を計算させられた事から、破産の確率(有名問題)かと思ったのですが、そんな事はなかったです。これも貰いです。

 

3、ディオファントス方程式(mod)、二項展開、誘導「方針の利用」&実験→予想→証明 or 誘導「結果の利用」目標解答時間35分→20分。

テクニック→B

記述量BC→AB

発想力→B

総合難易度→B

 正確にはディオファントス方程式ではないですが、まあそう呼びます(笑

 (1)はまあ当たり前の超易問ですが、問題集に載っているわけではないですし、「出来なかった。」と言われたら、正直困ってしまいます。毒のある言い方ですが、こう云うのをその場で手を動かして示せない人は、数学と言うか理系と言うか頭を使うもの全てに向いていないと思います。向いていたらごめんなさい。

 (2)は普通に二項展開してmodの考察ですね。“後ろから2番目”に注目です。

 (3)が中々の大物です。まあ(1,1)は自明な解ですので、それ以外の場合ですが、(2)を方針の利用と捉え、同様にbの情報を引き出します。これで、

 9^l-8^m=1

の形に帰着し、(2,3)も得られます。これ以上は見付からなそうなので、存在しない事を証明します。再び(2)の方針の利用からl:偶数が分かりますが、これ以上同じ方針を取っても冪がどんどん大きくなるだけで八方塞なので、方針転換です。と言う事で、そもそも、

 9^l=8^m+1

の形になるのかを考えて実験してみると、lが偶数の時は,

 9^l=(10の倍数)+1

の形になり、8^mが因数5を持つ事となり矛盾です。実験し何かの倍数と予想する流れは、ここだけで今年の京大2と全く同じですが、長い議論の中で、それも自分でこの主張を考えて示さなければならないので、京大2よりも本問の方が遥かに難しいです。

 (1)(2)は絶対に取るべきです。流れは粗方書きましたが、非常に良い問題ですので、改めて解答を載せておきます。

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※何か(3)で大層な解答を書いていますが、どう考えても(2)の結果を利用し、

  (3^n+1)(3^n-1)

因数分解が模範解答ですね。河合塾の解答速報を見る迄、全く気付きませんでした(汗。普通こう解くでしょうし、極標準的な積の形にするディオファントス方程式の問題ですので、難易度は全面的に修正しておきます。「っしゃいける!」思って上記解答で突っ走ってしまいました。2冪を積の形で考察する問題は2015の大取でも出ていて、東北大、好きそうですね。

 

4、京大型三角函数総合、正弦定理、内接円、対称性(崩す)、不等式の証明&Maxmin(三角函数内積、独立2変数(1文字固定))、誘導「方針の利用」、目標解答時間50分。

テクニックCD

記述量D

発想力CD

総合難易度CD

 三角函数と平面図形を中心とした、重厚な大型問題です。αではなく2αとしてくれているところが、出題者の唯一の優しさでしょうか…

 (1)からいきなり激しいです。取り敢えず外接円内接円なので、外接円は正弦定理、内接円の方は面積を仲介する公式で対処します。非常に対称性の高い設定で、それに執着したくなりますが、対称性は、

(イ)保つ。

(ロ)崩す。

の2通りであり、本問は保とうとすると終ります。その後の式変形も三角函数の公式の取り扱いに相当に習熟していないと厳しいです。

 (2)は不等式とMaxminですが、引き続き対称性を崩し、三角函数の計算です。(3)含め、(1)が出来ていなくてもこれを利用すれば一応、どちらも解答は可能ですね。自分は(1)が途中で嫌になって、初め解いていた時は先にしました。

 (3)は(2)同様、不等式とMaxminです。これ単品だと相当に厳しいですが、(2)を方針の利用と捉え、途中の式変形を真似る事を意識しながら進めれば、何とか食らい付ける気もします。3番もそうですが、東北大の誘導は「方針の利用」が多い気がします。→確かに多いですが、3番は解説の赤字の補足の通りです。

 これは全小問、相当に厳しいですねえ。余りこの言い方はしたくはないのですが、医学科、数物トップ層以外は、捨てた方が良かったかも知れません。

 さて、テーマに有る“京大型”についてですが、これは一昔前に京大がやや難の問題として時々出していた、矢鱈と対称性が高くて三角函数の計算をさせられまくる三角形の問題(ex)2006後期4,2005文系後期3,2002-2)のまんま類題であるからです。この手の問題の対称性は原則、下の解答中同様、

 内角の総和=π

を利用して崩します(当然、崩さない場合もあるかもなので、固執は厳禁です)。ひょっとしたら、当時の受験生が東北大で出題する先生側になって、「最近、本家では見かけないし、なら俺がやったる!」とかなったのかも知れません。受験生にはいい迷惑です(笑

 興味を持たれた方、及び京大も視野に入れている受験生が若しいたら、詳しくは「入試数学の掌握」の3巻のTheme6-6をご覧下さい。しょっちゅう話題にしますが、別に回し者ではありません。まじで良い本なんです。

 これは解答を付けるべきでしょう。

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5、複素数平面の軌跡(順像法、楕円のパラメータ表示)、論理、三角函数、目標解答時間25分。

テクニックB

記述量B

発想力BC

総合難易度B

 (1)(2)とも極標準的な複素数平面のパラメータの問題ですが、聞き方が少し難しいかも知れません。順像法的な発想ですね。去年の4に続き、範囲や複素数の存在の考察に於いて、論理の理解が大切である事を確認させられる問題です(あちらの方が遥かに難しいですが)。

 (2)は三角函数の変形をしていくと、楕円のパラメータ表示になります。まあでも、気付かなかったとしても、パラメータ微分をしてグラフを描けば許してもらえる気がします。回しているのは初め、「面倒臭い事しやがって!」と思っていましたが、解答して納得ですね。回さないと斜めの楕円なので、今度こそ本当にパラメータ微分になってしまいます。それはそれで良い気もしますが。

 

6、求積(斜軸回転)、目標解答時間20分。

テクニックAB

記述量B

発想力A

総合難易度AB

 どの入試問題集にも載っている、極々平凡な斜軸回転体の求積です。好きな方法で解いて下さい。

 

 

 先ず取らねばならないのが1,2、3(1)(2)、6ですが、これでもう6割越えてそうですね。ボーダーもこの辺りでしょうか。3(1)、5(1)、6(1)の内、2つ位取れれば、ちょいちょい周りと差を付けられそうです。4はしゃあないっす。取れりゃそりゃあもう大いに差を付けられますよ。

 昨年の1,5に続き、今年も1,5が平面での存在について論理と合わせた理解を必要とする分野です。個人的には高校数学の中で、真に理解しようとすると最も難しい分野である気がするのですが、2年続いたので、今後も出題される可能性が高いと思います。ぱら読みしただけなのですが、旺文社の「分野別標準問題精講 領域・軌跡」って本が、この分野特化の本としてかなり強そうに見えました。図形と方程式後半分野特有の、「一応答えは出たけど、如何も腑に落ちないなあ。」みたいな感じを、論理を使ってかっちり説明してくれている本って印象です。自分も暇が有ればその内、読んでみたいですね。